民法が2017年(平成29年)5月26日に大改正された!

現在、わが国で使用されている民法の総則・物権・債権の3編は、1898年7月16日に施行されたものです。親族・相続の2編も同時に施行されましたが、1947年12月22日に全面改正され、1948年1月1日に施行されました。

施行された時期から想像に難くないですが、総則・物権・債権の3編はわが国に黒船が来航し、幕末の混乱を経て、不平等条約撤廃と近代国家への変貌する過程において制定されました。親族・相続の全面改正は第二次大戦後の占領下において行われています。

誤解をおそれず言えば、今回の改正によってできた民法は、外圧によらず、わが国が120年の間に培った判例法理と学説を編纂して作った初の民法といえます。

これほど重要な法律の改正なので、宅建試験においても、まだ施行されてもいないのに、改正案の段階で毎年出題されています。今後の不動産取引実務において重要な改正点が出題されているので、しっかりと対策して宅建試験に臨みたいところです。

以下、宅建試験に出題される可能性が高い点を中心に、改正民法を解説致します。
宅建試験対策・改正民法案

宅建試験に出題される改正民法問題(問1に出題されている条文の規定にあるかないかの問題)対策として、宅建試験に影響を及ぼす改正民法案の条文の解説をします。


意思無能力者の行為は無効

民法を含むいわゆる近代革命時にできた法律の多くは、意思主義という考え方を採用しています。

民法では「私的自治の原則」として基本原則の1つとされています。自らの自由な意思に基づいて契約等を行い、その有効な契約から生じる債務を引き受ける、という発想です。その前提として、そもそもその自由な意思を持つことができない人が行った表示は無効であり、その契約等から生じた債務を引き受けることもないわけです。

これまでの民法では、この考え方は当たり前のものとして、条文には書かれていませんでした。しかし、改正民法では条文に明記されることになります。

改正民法3条の2
法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

錯誤による意思表示は有効?

現行の民法では、錯誤による意思表示が要素の錯誤であって、錯誤した人に重大な過失がなかった場合には、無効を主張できると定めています(民法95条)。

改正民法では、錯誤による意思表示を有効としたうえで、表意者にその意思表示の取消権を与えました。これは、無効主張者を限定した判例法理を条文化したものです。

改正民法95条1項
意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

また、現行の民法には規定がなかった「動機の錯誤」についても条文に明記されました。

改正民法95条2項
前項第2号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
さらに、現行民法には規定されておらず、学説上も対立があった無効となった場合の第三者保護についても、条文に明記されました。

改正民法95条4項
第1項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

詐欺による意思表示の取消しは有過失の第三者に対抗できる?

現行の民法では、「詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない」と規定していました。つまり、文言上は、第三者は過失があっても保護されることになっていました。

改正民法では、第三者が保護されるためには「無過失」であることが要件となることが条文化されました。

改正民法96条2項3項
相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる(2項)。

前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない(3項)。

代理人が権限を濫用した場合は?

たとえば、特定の不動産を売却する権限を有する代理人が、その権限の範囲内で売却したがその代金を着服する目的であったような場合、これまでは民法93条(心裡留保の規定)を類推適用して、解決していました。

改正民法では、このような類推解釈をしなくても解決できるように、代理人の権限濫用の規定が新設されました。

改正民法107条
代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。
 

債権は知った時から5年間で消滅時効に?

時効については、今回の改正でかなり熱い議論がされたところでもあります。多くの点で大幅な変更がありました。宅建試験に出題される可能性のあるものだけを選んで紹介します。

これまでの民法では、債権は、権利を行使することができる時から、原則として10年で時効となり、債権または所有権以外の財産権は20年で時効となり消滅する、となっていました。また、職業別の短期消滅時効についても、前近代的な制度に由来するものであり、わかりにくいという批判が多かったことから廃止されました。

改正民法では、債権の種類ごとに1~3年、5年、10年と分かれていた時効期間は、原則として「主観的起算点から5年、客観的起算点から10年」に統一されました。
宅建試験に出題される改正民法(条文の有無)

民法改正により債権の消滅時効の期間が改正されます。


改正民法166条1項
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
改正民法166条2項
債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する。

 

生命・身体侵害の損害賠償請求権の消滅時効は?

現行民法では、生命・身体の侵害については、医療過誤や労働上の安全配慮義務違反等のように、債務不履行と不法行為の両方が問題となることがあり、どちらで主張するかで時効期間が異なる不都合が生じていました。
改正民法では、いずれによる場合も、時効期間に変わりがないように変更されました。

改正民法167条
人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第1項第2号の規定の適用については、同号中「10年間」とあるのは、「20年間」とする。

改正民法724条の2
人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第1号の規定の適用については、同号中「3年間」とあるのは、「5年間」とする 。

それぞれ準用があり、わかりにくいので表でまとめました。
宅建試験に出題される改正民法(条文の有無)

生命・身体の損害賠償請求権の消滅時効についての改正民法まとめ


法定利率は原則3パーセントに?

現行民法では、法定利率は5パーセントとなっていました。法定利率とは、利率が契約で定められていない場合や、利息が法律の規定によって発生する場合に適用される利率のことをいいます。

市場金利が低金利で推移する現状や、フランスやドイツ等で変動金利制が採用されていること踏まえ、改正民法では、法定利率を5パーセントから3パーセントに引き下げた上で、変動金利制を導入しました。

改正民法404条
利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による(1項)。

法定利率は、年3パーセントとする(2項)。

前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年を1期とし、1期ごとに、次項の規定により変動するものとする(3項)。
 

引き渡しが遅れている途中で建物が地震で倒壊したら?

現行民法では、債務者の履行遅滞中に、その履行が当事者双方の責めによらずに不能となった場合の解決方法が定められていませんでした。ただ、判例・学説上、このような場合も債務不履行として扱っていました。
改正民法では、上記の実務的な運用が条文化されました。

改正民法416条の2
債務者がその債務について遅滞の責任を負っている間に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなす(1項)。

債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす(2項)。

特別損害の要件が規範的な評価に?

現行民法では、特別損害の損害賠償責任の発生要件である予見可能性について、「事情を予見し、又は予見することができたとき」と定めています(民法416条2項)。

改正民法では、本人の予見可能性だけでなく、予見すべきであったか否かという規範的な基準に改めました。

改正民法416条2項
特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。
 

履行請求・免除・時効完成は他の連帯債務者に影響を与えない?

現行民法では、連帯債務について、履行請求・更改・相殺・免除・混同・時効完成を絶対的効力事由としています。絶対的効力というのは、一人の債務者との間に生じた効果が他の債務者にも及ぶものとされています。

改正民法では、上記のうち、履行請求・免除・時効完成が相対的効力事由となりました。実務上、夫婦で住宅を購入する場合の住宅ローン等において、連帯債務は活用されており、宅建試験に出題が予想されます。

ただ、現行民法にはあった民法434条・437条・439条が削除されるという改正なので、現行民法にないものとしては出題できません。


保証人に対する情報提供が義務付けられた?

現行民法では、保証人に対する情報提供に関して規定がありませんでした。

改正民法では、主債務者が、事業のために負担する債務について個人保証を委託するときに、保証人となろうとする者に対して一定の情報を提供する義務を負うことになりました。

改正民法465条の10
主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証又は主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証の委託をするときは、委託を受ける者に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない。
一 財産及び収支の状況
二 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
三 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容
 

瑕疵担保責任に減額請求や追完請求も?

現行民法では、売主が移転した物や権利が備えるべき性質を備えていない場合(瑕疵がある場合)、買主は売主に対して民法に定めのある一定の担保責任を負います。

改正民法では、売主が契約に基づき契約の内容に適合する物を引き渡す義務を負うことを前提に、債務不履行責任の一環として引き渡した目的物に関する担保責任を負うと整理しています。

まず、瑕疵という表現が契約不適合という表現に変わりました。

目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しない場合(契約不適合)に置き換えられました。数量も含まれたことから、現行法にある数量指示売買の担保責任は契約不適合に含まれることになります。また、目的物の契約不適合を知らないことに関する買主の無過失要件(現行民法の「隠れたる」の解釈)は不要となりました。

次に、追完請求と代金減額請求を認め、これに加えて債務不履行に基づく解除損害賠償請求が可能であるとされました。

追完請求というのは修補・代物請求・不足分引渡請求をいいます。追完請求と代金減額請求については、目的物の契約不適合に関する売主の帰責事由の有無にかかわらず行使が可能とされます。それに対して、解除と損害賠償請求については一般の債務不履行の要件に従います。ということは、契約不適合に関する売主の帰責事由が要件となります。

ただし、目的物の契約不適合に関して売主でなく買主に帰責事由がある場合は、追完請求・代金減額請求は認められません。解除・損害賠償請求についても同じです。
宅建試験に出題される改正民法(条文の有無)

売主の瑕疵担保責任に関する規定が改正民法では大幅に変更となりました。


さらに、目的物の種類又は品質に関する契約不適合がある場合、買主は、契約不適合を理由とする権利を行使するためには目的物の契約不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知する必要があります。現行民法のように、期間制限内に権利行使まで行う必要はなく、契約不適合の事実を通知するのみでよくなりました。

改正民法562条
引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる(1項)。

前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない(2項)。

改正民法566条
売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。

オーナーが不動産を売却する場合の手続が変わりました

現行民法では、賃貸不動産が譲渡された場合の賃貸人たる地位の移転について、賃借人が譲受人に賃借権を対抗できるときは、「特段の事情」がない限り、賃貸人たる地位は譲渡人から譲受人に当然に移転し、賃借人が譲受人に賃貸借を対抗できないときでも、譲渡人である賃貸人と譲受人との合意により、賃借人の承諾なく賃貸人の地位を譲受人に移転することができます。また、譲受人が賃貸人たる地位を賃借人に対抗するためには、その不動産の所有権移転登記を得ておく必要があります(判例)。

改正民法では、賃借人が不動産譲受人に賃貸借を対抗できる場合は、賃貸人たる地位は、当然に譲受人に移転することが明記されます。また、賃借人が賃貸借を対抗できない場合に、譲渡人と譲受人の合意により賃借人の承諾なく賃貸人の地位を移転できる点や、譲受人が賃貸人たる地位の移転を賃借人に対抗するには賃貸不動産の所有権の移転を要する点についても明記されます。

上記のルールにかかわらず、譲渡人と譲受人との間で、賃貸人たる地位を譲渡人に留保し、その不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する合意をしたときは、賃貸人の地位が譲渡人に留保されます。その結果、譲受人→譲渡人→賃借人という三者による転貸借関係が成立することになります。


改正民法605条の2
前条、借地借家法(平成三年法律第九十号)第十条又は第三十一条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する(1項)。

前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する (2項)。

第一項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない(3項)。

第一項又は第二項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、第六百八条の規定による費用の償還に係る債務及び第六百二十二条の二第一項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する(4項)。
 
 

宅建試験と民法改正

上記に説明した以外にも多くの改正点があります。実際に改正された後はもちろん試験問題のすべてが改正された民法で出題されます。しかし、改正までの約2年間は、おそらくこれまで通り、問1に条文に定めがあるか否かを問う形式で改正案が出題されると予想されます。

ここ5年間の過去問の傾向では、改正民法566条の瑕疵担保責任の改正について、2012年と2013年に連続で出題されていますが、それ以外は重複せずに出題されています。したがって、この記事での出題予想は、あえて過去に出題されていないところで、不動産取引法務においてこれまで問題となっていた分野についての改正点をピックアップしました。

ぜひ、宅建試験対策として、ご活用くださいませ。

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