食と健康

卵アレルギーの発症を防ぐ正しい離乳食の進め方

【管理栄養士が解説】卵アレルギーの発症を防ぐために、卵のスタートは離乳食の最後にするべき、逆に早くすべきなど、様々な意見があるようです。卵は赤ちゃんの離乳食を進める中で最も気を使う食材のひとつかもしれません。日本小児アレルギー学会による「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」をご紹介します。

平井 千里

執筆者:平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養ガイド

卵アレルギーなどの、赤ちゃんのアレルギー反応を防ぐ離乳食の考え方

卵アレルギーの発症を防ぐ、正しい離乳食の進め方

卵は日本人の食卓に頻繁に登場する食品です。そのため、卵アレルギーは対応がたいへんです。子どものほうも食べられない食品が増えるので苦痛が生じます。できれば卵アレルギーは避けたいところです。


<目次>
離乳食をいつスタートするかは、多くの新米ママが頭を悩ませる問題のようです。生後4ヶ月くらいから早めに始めるのがよいと言われた時代もありましたが、最近の育児書等では離乳を急ぐ必要はないとされています。離乳食の中でも、アレルギー反応が心配な食材は食べさせるのに少し勇気がいるものかもしれません。

その代表的な食材の一つが、卵。「卵黄」は離乳食の開始時期から調理法に気をつければ食べさせてもよいとされていますが、それでは離乳後期まで約半数の人は食べさせていないようです。「卵」は離乳食を進める中でも、使用が遅い食材と言ってもよいかもしれません。

卵は日本人の食生活に欠かせない一般的な食材です。そのため離乳期にアレルギー反応を起こさないよう、いろいろな食材に慣れてから最後に食べさせようという配慮があるのでしょう。しかし、実際にこの方法はよいのでしょうか?
 

従来のアレルギーへの対応は「完全除去」指導が原則

従来のアレルギーへの対処法はとてもシンプルです。実際に「アレルギーがある」と判明した食品の対応は、「食べさせない」ことが基本。とにかく、アレルギーのある食品は完全除去することとされていました。

なぜなら、これまでのガイドラインは「アナフィラキシー」を起こす重症者の死亡事故を防ぐ目的で作られていたためです。病院で血液検査でのIgE抗体検査や皮膚パッチテストで「陽性」が出た場合、その食品を完全除去するように指導されてきました。

しかし一方で、アレルギーの専門医からは、このような完全除去の方法では「経口免疫寛容」が誘導されず、生活の質が大きく下がってしまうことを懸念する声も多く上がっていました。
 

アレルギーは「症状が出ない範囲」が重要!専門医に相談を

その理由として、実際のアレルギー患者は、牛乳、小麦、卵、その他、何らかの食品にアレルギーがあると言ってもいろいろな人がいます。

例えば一言で卵アレルギーといっても、少量でもダメな人から、卵黄1個なら食べられる人、全卵でも1/8個分程度とか1/2個程度なら大丈夫という人まで様々です。もし、全卵が1/8個分でも食べられるのであれば、マヨネーズやハンバーグなどの卵を含む食品も、量を加減すれば食べられる可能性があります。

仮に、全卵が1/8個分くらい食べられる人に対して「完全除去」をしてしまうと、本来なら少しは食べられるはずのマヨネーズやハンバーグなども、まったく食べられないことになります。除去していた食品に対する耐性を獲得した後も、心理的トラウマになり「きらい」「まずい」と親から食べるように促されても食べたがらないケースも多く、何とかして食べられるようにしたい親の焦りとの間に葛藤が生まれるなど心理的なトラブルも起こりやすいといった問題があるのも事実です。

こうしたトラブルを防ぐためにも、アレルギーの原因と考えられる食品を「症状が出ない範囲で」食べるにはどうしたらよいかを調べるため、「食物アレルギー診療ガイドライン2016」では、食物経口負荷試験として「アレルギーが疑われる食品を単回、または複数回に分けて摂取させて症状の有無を確認する検査」を行うこととされています。

ただし、「ギリギリのライン」を調べることになりますので、自己判断ではなく、必ずアレルギーの専門医を受診した上で、適切な手順で行うことが大切です。
 

日本小児アレルギー学会による提言……離乳期にすべき対策

とはいえ、卵はさまざまな食材に使われており、アレルギーが判明して「完全除去」を指示されると厄介な食材であることは間違いありません。

とくに、アトピー性皮膚炎に罹患した乳児は、卵の摂取が遅いほど卵アレルギーを発症するリスクが高まるという論文が発表されています。これを受けて、日本小児アレルギー学会から、「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」(PDFファイル)が出され、この中で「鶏卵アレルギー発症予防を目的として、医師の管理のもと、生後6ヶ月から鶏卵の微量摂取を開始することを推奨する」とされました。

日本小児アレルギー学会の提言は、卵アレルギーを怖がって、卵を食べさせるのを遅らせたことによって、かえって卵アレルギーを助長してしまっている可能性があるため、早めに卵を食べさせるようにしましょう、というのです。さらに同提言には「鶏卵の感作のみを理由とした安易な鶏卵除去を指導することは推奨されない」としています。

もちろん、「すでに鶏卵アレルギーの発症が疑われる乳児に安易に鶏卵摂取を促すことはきわめて危険」とも記されており、専門医の指導の下「食物アレルギー診療ガイドライン2016」に準拠した対応が大切であることが改めて記されています。
 

離乳食期に食物アレルギーが心配な場合の対処法

親自身に食物アレルギーがある、上の子どもに食物アレルギーがあるなど、食物アレルギーが心配な場合もあると思います。そのような場合は、自己判断で親や上の子どもと同じ食品を除去するのではなく、専門医の診察を受けることが第一です。

アレルギー専門外来が近くにない場合でも、皮膚科や小児科にアレルギーの専門医がいる場合があります。近くにアレルギーの病院がないと簡単にあきらめず、近くの皮膚科や小児科に連絡してみてください。

アレルギーがあったとしても、アレルギー専門医と協力し合い、可能な限り、子どもに食生活を楽しませてあげることができるよう配慮することが望ましいと思います。
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