「ED(勃起不全)の診察に行くと、パンツを脱がされる」「ED治療薬を飲んだら立ちっぱなしになる」など、EDの治療をめぐって巷で囁かれる噂は今も昔も変わりません。どちらも都市伝説に類する話ですが、EDかもしれないという不安を抱える人にとっては深刻な問題でしょう。どちらも、よくよく考えれば不自然なことですが、当事者にとっては一大事。似て非なる都市伝説に「マスターベーションができるからEDではない」という思い込みがあります。しかし、両者には何の関係もありません。マスターベーションができてもEDであることは珍しくありません。むしろ、できるからといって自己正当化するのは禁物です。

EDの定義はセックスで射精できないこと

EDかどうかは「セックスで射精できないこと」が国際的な判断基準になっている

EDかどうかは「セックスで射精できないこと」が国際的な判断基準になっている

米国の権威ある医学系研究機関NIH(National Institutes of Health=アメリカ国立衛生研究所)はEDを「満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られないか、または維持できない状態」と定めています。

日本でも、日本性機能学会がこの考え方に沿った定義を『ED診療ガイドライン』に明記しています。ここで重要なのは、定義の中に「性行為」という言葉が入っていることです。つまり「セックスで射精できないことがEDである」と定義しているのです。

一般にEDというと、肝心な時に勃起しない、あるいは性交のさなかに中折れしてしまうことを思い描く人が多いと思います。そのために射精に至らないことをEDと考える人もいるはずです。確かに、それらは紛れもなくEDの症状の1つです。

EDは単に立つ、立たないでは決まらない

また、EDを「ペニスをどんなに刺激しても、うんともすんともいわない状態」、すなわちまったく立たないことと捉える人もいるでしょう。このような完全に勃起できなくなった状態は重度のEDといえます。

大多数は軽度から中等度のEDと考えられています。例えば、たまに勃起しないことがあるとか、勃起できるかどうか不安になるなど、勃起に満足感が得られない場合もEDとみなされます。体調次第で立ったり立たなかったりすることはたいていの男性が経験しているはずです。

少し古いですが、1998年に日本で行われた調査によると「勃起せず性交不可能」の重度EDは260万人、「たまに勃起、性交中勃起は維持できる」中等度EDは870万人でした。つまり、日本人男性の4人に1人がEDであると考えられます。この比率は現在も大きく変わっていないでしょう。

相手を思い遣る気持ちを大切に

性交による満足感を共有するパートナーのためにこそED治療薬を使う意味がある

性交による満足感を共有するパートナーのためにこそED治療薬を使う意味がある

しかし、NIHの定義で明らかなようにEDの診断は単に立つ、立たないではなく、満足な性交ができるかどうかで決まります。

ですから「パートナーとの性交がうまくいかなくても、マスターベーションでは勃起もするし、射精もできるのでEDではない」という理屈は成り立ちません。残念ながら、それは自己正当化ともいうべき一種の思い込みです。

極論すれば、マスターベーションによる性的満足だけで事足りるのであればED治療薬の出番はありません。しかし、性交による満足感を得るためにはパートナーが必要です。大切なのは相手を思い遣る気持ちです。ですから、パートナーのためにED治療薬を使う意味があるのです。

おかしいなと感じたら病院で相談を

『ED診療ガイドライン』は「満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られないか、または維持できない状態」が少なくとも「3カ月持続すること」が診断の条件とも紹介しています。

根治的前立腺全摘術などの手術や外傷などによるEDの場合には3カ月以前に診断できます。無論、3カ月は1つの目安ですから「おかしいな」と感じたら、ED治療薬を処方している病院やED啓発サイトで検索したクリニックで相談するとよいでしょう。

実際、ガイドのクリニックの患者さんの多くが「中折れするようになってきた」「持続力が落ちてきた」という自覚や「パートナーのため」「気持ちよくセックスをしたい」という願望をきっかけに訪れています。

マスターベーションができることだけを拠り所とするのではなく、現実を受け入れて前向きな対処をするのも一種のダンディズムではないでしょうか。

>>マスターベーションができればEDは心配ない?

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