EDは「Erectile Dysfunction」の略称で、日本語では勃起不全と訳されます。一種の性機能障害です。国際的には「満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られないか、または維持できない状態」と定められています。
EDは男性に特有の病気ですが、性行為が満足にできない状態をEDと呼ぶのであれば、その原因が女性の側にある場合、それをEDと呼べるのでしょうか。今回は女性の側から見た性機能障害について考えてみたいと思います。
 

字面どおりのEDは、女性にはない

答えを先に明かしてしまえば、女性のEDはあり得ません。冒頭で紹介したように、EDとは勃起不全という意味だからです。解剖学的に勃起という現象が起こらない以上、女性には初めから無縁の言葉といえます。

しかも、EDの定義は単に性行為ができるかできないかではなく「十分な勃起が得られないか、維持できない」ために、という但し書きが付きます。EDという字面が示すように、この言葉はそもそも男性の性機能のあり方を表しているので、女性には使えません。

ただし、EDという言葉にこだわらず、性交渉がうまくできないという広い意味で捉えるなら、その原因となる女性特有のさまざまな症状があります。豊かな性交渉は相手を思いやる気持ちから始まります。パートナーの性の悩みを一緒に考えることも愛を高める大切な心構えといえるでしょう。
 

性的関心や興奮障害によるFSDは約30%

男性の性機能障害の代表が勃起に関わるEDであるとするなら、女性のそれは女性性機能障害(FSD=Female Sexual Dysfunction)です。FSDは、

・性的関心/興奮障害
・オルガズム障害
・性器・骨盤痛/挿入障害
・物質・薬剤誘発性性機能障害
・その他の性機能障害
――などに分けられます。

かつては性嫌悪という項目がありましたが、近年はその他の性機能障害に含みます。

早くからこの分野の問題に取り組んでいる東邦大学医療センター大森病院リプロダクションセンターによると、2005年に報告された国際的な調査(対象40~80歳)では、

・性的関心/興奮障害=約30%
・オルガズム障害=約15%
・性行為に伴う疼痛=約15%
――と推定されています。
 

精神的なストレスや薬物が招くFSD

生活上のストレスや悩みなどによる性的関心の低下がFSDの大きな原因に

生活上のストレスや悩みなどによる性的関心の低下がFSDの大きな原因に

前項で触れた3つの障害にはそれぞれの特徴があります。

性的関心/興奮障害はセックスする意欲が低下、セックスしていても興奮できない状態です。生活上のストレスや精神的苦悩、世帯収入の減少などが関わっているといわれています。ホルモン異常や薬の使用も女性の性欲を抑える要因となります。閉経や女性ホルモンの減少による膣の萎縮も危険因子となります。

オルガズム障害は性的刺激を受けて興奮するのにオルガズムが得られない状態です。女性の生殖器の仕組みや正常な性的反応に対する誤解から起こる場合が最も多いとされています。性的な技術不足やパートナーとのコミュニケーション不足が関係しています。抗うつ薬などの使用や精神的ストレスが引き金となることもあります。

性行為に伴う疼痛は性器・骨盤痛/挿入障害によるもので、膣が濡れなかったり弾力性がなかったりして挿入時に痛みを覚える状態です。陰部前庭炎、子宮内膜症、尿道憩室などが関係しています。骨盤や膣の手術歴などから起こる場合もあります。挿入障害は心理的な問題や性への嫌悪が主な原因となり、膣が痙攣して挿入を妨げる状態です。
 

相手に対する思いやりが決め手に

相手を思いやる気持ちがもたらす効果はセックスの場合にも当てはまる

相手を思いやる気持ちがもたらす効果はセックスの場合にも当てはまる

人は人を喜ばせることで自分も喜びを感じる動物です。同じように、相手を思いやることは自らの幸せばかりでなく相手を幸せにすることにつながります。この関係性はセックスの場合にも当てはまります。

好ましいセックスをするためには「相手に対する性欲(ときめき、発情)」「相手に対する共感(尊敬、親しみ)」の両方、あるいはどちらか1つが必要です。

そのいずれもない女性が、義務感や申し訳なさからセックスに応じても自分に無理をしているため、結局興奮できず、逆に嫌悪感や痛みを募らせます。最悪の場合、セックスレスを招きます。

ED治療薬が治療の第一選択として普及している男性の性機能障害に比べて、女性の性機能障害治療はまだ一般的ではありません。

女性性機能障害の種類や症状によって一概にはいえませんが、実践的な性教育や性機能に影響を与える病気の治療、精神療法、カウンセリング、薬物使用など、選択肢はいくつもあります。FSDではないかと感じたら「性嫌悪自己評価票」を参考にするとよいでしょう。その上で専門の医療施設などを受診して、自分にあった治療方法を試みることをお勧めします。

【資料:東邦大学医療センター大森病院リプロダクションセンター】

>>女性が望む「より良い性生活」とは?
 
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