「ごはんですよ」が生み出す意外なストレス

夕食の準備といえば、一汁三菜などを基本とするおかず、ごはん、味噌汁や副菜をすべて作って食卓に並べること。一通りの準備が整ったところで「ごはんですよ」と家族を呼ぶというイメージを思い浮かべる人が多いのでは?
ごはんですよ

ごはんと味噌汁はあとからよそうにしても、主菜や小鉢を揃えるところまでが「食事の準備」。こう考えると、準備も仕上げのタイミングも実はかなりエネルギーを使うものです

この方法だと、味噌汁もおかずも熱いタイミングを合わせる必要もあり、せっかく食べ頃を合わせて声をかけたにもかかわらず、子供がなかなか食卓につかないストレスも。準備に時間をかけたのに、自分が席につく間も無く、家族が10分で食べ終わって食卓を離れてしまう虚しさなどを、ガイドも子育て中は何度も経験しました。

バランスよくたくさん食べさせたい。家族とのおいしい団欒の時間を持ちたいと思っても、毎日の食事の準備の繰り返しの中では、負担やストレスを感じる場面も多いように思います。


「アペリティフ」に学ぶゆっくり時間

そこで思い切っての発想転換。夕食をコース式にしてみませんか?コース料理と聞くと、前菜からデザートまできっちりと作って配膳すると考えてしまいますが、ここでお伝えするのは、まったく違う考え方です。

ヨーロッパには「アペリティフ」という習慣があり、食事の前に簡単な軽いおつまみを出して、食前酒を楽しむ時間があります。
アペリティフ

少しの食べ物とお気に入りの飲み物で、食事の前の時間をゆったり過ごす。「アペリティフ」にはいくつもの理にかなう効果があります


軽い飲食で胃の動きをよくする効果もありますが、空腹で食事に向き合ったときの「ドカ食い」を防ぐ副次効果や、食事の前にワンクッションを置くことで、仕事や学校モードになっている頭を切り替えるという効果も大きいのだとか。

ヨーロッパでの食事の準備は、こうしたアペリティフから始まるゆっくりとした時間が流れていることが多いもの。自然と家族のおしゃべりにも花が咲きます。これ、日本で言えば仕事帰りに軽く寄る「居酒屋」文化に近いのかも! 

アペリティフは何もお酒にこだわる必要はありません。飲み物は麦茶やお水でオッケー。要は調理と胃袋の準備期間と考えれば、食事作りへの気負いがグンとラクになってきます。そして、子どもの偏食防止にもなるほか、ダイエット糖質制限をしている人にも、コース料理方式はいいことづくめなんです!


苦手なものから出せば好き嫌いも軽減

方法はとても簡単。ある程度の下ごしらえが完了したら、全部の完成を待たず、ひとつ料理ができたら食卓につきます。

最初の料理は、できればサラダや温野菜、お浸しなど野菜の簡単な料理がオススメ。好みの飲み物を選び、ゆっくりおしゃべりをしながら、メインの料理ができるのを待ちましょう。
好き嫌い

好物のメイン料理と一緒だと、どうしても敬遠されがちなお野菜も、一番お腹の空いている時に最初に出てくると、案外おいしく食べられてしまうものです


子どもの食わず嫌いに悩んでいるなら、最初の料理は普段あまり食べたがらないものから出してみましょう。食卓にすべて並んでいる状態だと好きなものから食べてしまいますが、空腹時に1品だけ出ると、意外とよく食べるもの。ガイドもこの方法で、普段食べない料理を子どもが食べるようになりました。


コース料理=作りながら食べるという発想転換

空腹が満たされずに不満を言う場合は、積極的に調理の準備に関わってもらいましょう。食材に触れる、調理の匂いと触れ合うことは、空腹を和らげる効果があります。ものすごくお腹が空いていたのに、調理している間に空腹が薄れていく経験、誰でもしたことがあるのでは?
メイン料理

メインも付け合せも、それぞれが食べられるだけ自分で。出来上がりを待つ楽しさだけでなく、盛り付けの手間も省けます


保温鍋や圧力鍋を利用した煮込み料理、オーブン料理などを仕込んでから食卓につけば、みんなで料理の完成を待てます。そろそろできたかな?などのおしゃべりも食卓を賑やかにするいいスパイスに。できあがったのがわかれば、鍋のまま、オーブンの天板のまま豪快に食卓へ。盛り付けは家族にお願いしてオッケー。

「できるのを待つ」というイベント性があれば、こんなスタイルでも十分楽しくいただけます。

食卓についたら動き回らずにしっかり最後まで食べること、としつけられることの多い私たちですが、作りながら、配膳しながら食事の時間を過ごすのも悪いものではありません。「食べるだけ」だった夕食の時間が、ゆるラクの団欒時間に変わっていくはずです。


ダイエットや糖質制限にも効果

ダイエットや糖質制限をしている人にも、できたものを少しづつ食べて、最後にごはんをいただく方法は、効果的です。

フランスでの生活でよく目にしたのが、食べながら出すもの、作るものを決めるというスタイル。最初にたくさんのメニューを作りすぎてしまうと、食べ過ぎや食べ残しにつながります。みんなの食欲や食べっぷりに合わせて、「まだ食べたければトマトがあるけど、出す?」「頂き物の生ハムがあるけど、食べる?」など、意見を聞きながら食卓に出す風景です。
ある日の風景

ある日のフランスでの夕食の風景。一度にテーブルの上に出るものは少なくシンプルです。必要なら付け足していく。無駄も出ません。


最初の準備はなるべく少なめに。必要に合わせて簡単なものを追加していくスタイルは、とても合理的。席を立って準備をしにいくのは、その都度違う人でよいのです。

ごはんと味噌汁は、最後に、必要な人が必要なだけ。このスタイルは糖質制限をしている人だけでなく、よいことがいろいろあります。

通常、ごはんとセットでおかずを作ると、ごはんで味を緩和させながら食べる前提となり、味付けが濃くなりがちです。味覚が濃い味になり、塩分の取りすぎにもつながりますが、まず野菜→おかずでしっかり食べるスタイルに変えると、自然と味付けも薄味になって健康的なのです。


プチデザート効果も見逃せません

食後にお菓子を食べることに罪悪感を感じる人、子供にはそのぶん食事をしっかりとって欲しいと考える人も多いと思いますが、食後に小さなデザートを用意する習慣には、さまざまな効果があります。
プチデザート

ダイエットの敵! になりがちな食後のお菓子ですが、逆に食べ過ぎを防いで満足感を高める効果があることも


まず食事の終わりのコントロール効果。デザートが出るので食卓を片付けましょう、という合図になります。片付けはもちろん、家族みんなで。

また、最後に少量の糖分を摂取することで、メインディッシュの食べ過ぎを防ぐ効果もあります。お腹も気持ちもいっぱいになるまでごはんやおかずを食べるより、腹八分目でやめて、最後に果物や小さなお菓子で締めるほうが、カロリー摂取が少なくて済む場合もあるのです。大きなケーキを用意しなくても、チョコレート1つでも十分満足できるものです。

全部できてから「ごはんですよ」方式ではなく、前菜からはじめて、メインを作りながら食卓につき、できたものから食べて、デザートのために食卓を片付け、最後は果物や小さな甘いもので締める、ゆるいフルコース式。忙しい暮らしの中の、ちょっとしたゆるゆるラクラクな時間を運んでくれるように思います。

気負いすぎないごはんの時間。楽しみたいものですね。


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