その一言が「セカンドハラスメント」になることも…
パワハラやいじめの相談を受けた時、どのような言葉、態度で接していますか?
このように、ハラスメントの被害を受けた人が相談したり援助を求めることで二次的な被害を受けることを「セカンドハラスメント」と呼びます。
セカンドハラスメントになりうるのは、例えば以下のような言葉です。
- 「上司と2人で食事に? どうして事前にちゃんと断らなかったの?」
- 「彼のことはよく知っているけど、そんなことをする人ではないよ」
- 「仕事(人間関係)ってそういうもの。それくらい我慢できないと」
- 「そうされたのは、あなた自身に原因があるからじゃない?」
- 「私も同じ経験をしたけど、自分で何とかしたよ。あなたもやってみては?」
相談された時、このような言葉がつい口をついていませんか? もちろん、悪気なく言った言葉なのかもしれません。しかし、こうした言葉を受けた側は、自責感が高まったり、「相談したらよけいに傷ついた……」という思いが残ってしまうことがあります。(なお、こうした言及が必要で、有効なケースもあります。また、セカンドハラスメントにあたるかどうかは個々のケースや発話者の態度によって異なるため、上記の言葉のいずれもが、必ずしもセカンドハラスメントにあたるとは限りません)。
放置、拒絶、流布が「セカンドハラスメント」になることも
またハラスメントの相談を受けることで、相談された側が戸惑ってしまうこともあるでしょう。具体的に何とかしてあげたいという時間や調整に追われ、対応が遅れてしまうこともあるかもしれません。そうした時の行動が、場合によっては相談者を深く傷つけてしまうことがあります。たとえば「対応を検討しておきます」と言っておきながら、他の業務に追われて相談されたことを結果的に放置してしまったり、「少し面倒だな……」という気持ちが出てしまい、無意識のうちに拒絶的、高圧的な態度を示したり、相談された話題をうっかり周囲に広めてしまったり……。
こうした行動をされたことによって、相談をした人は「話すべきではなかったのだろうか?」「どうせこの会社(学校)は何もしてくれない」「もう誰も信用できない」といった気持ちを抱え、絶望的な気持ちになってしまうことがあります。
このように、何気ない行動が「セカンドハラスメント」として受け止められると、最悪の場合には訴訟や相談者の自殺などへとつながってしまうこともあるのです。
ハラスメント相談の対処法……「二重の不安」への対処を
「二重の不安」を抱えて相談に来る人の気持ちを理解しよう
つまり、困り事を抱えて相談してくる人は、相談の場で言われた言葉、された行動を過敏、深刻に受け止めやすい状態になっています。通常の環境(職場や教室など)で同僚や仲間から言われたこと、されたことなら受け流すことができるかもしれません。しかし、相談に対応してくれた相手に同じことをされると、非常に深く傷つき、苦しくなってしまうことがあるのです。
疑問はそっと脇に置き、最初はとにかく「傾聴」する
相談を受ける人は、相談者にはこうした心理が働きやすくなることをよく理解し、相手の気持ちや立場を考えながら話を聴く必要があります。相談内容や感情を雑に扱われ、拒絶的な対応をされてしまうと、元々持っていた「二重の不安」がとても強くなってしまいます。すると、場合によっては「セカンドハラスメント」だと捉えられてしまうことがあります。だからこそ、相談を受ける側は丁寧な「傾聴」の態度で接することが必要なのです。傾聴しながら、「本当にそんなことが起こったのだろうか……」「なぜその時点で○○しなかったのだろう?」といった疑念が湧いてくることがあるかもしれません。その気持ちの発生を止めることはできませんが、「自分の枠組み」から発した感情や思考はそっと脇に置きましょう。そして、まずは相手の話を相手の立場に立って十分に傾聴しましょう。
話をしっかり聴くと、それだけで相手の気持ちを楽にすることができます。ハラスメントの相談に対応する際には、心に抱えた“重荷”をいったん下してもらうことが必要なのです。問題解決については、その先のプロセスで考えることです。その具体的な解決方法については相談者と一緒に答えを見つけたり、所属する組織のガイドラインに従って考えていくとよいでしょう。