プチ出家と精神療法の関係は?
実際の「出家」とはいかなくても、週末に写経や座禅などの修行を体験することは可能です。精神療法にも通じる、出家(修行)の効果とは?(画像はイメージ)
週末、いわゆる世俗から離れて、お寺や神社で写経や座禅を組むといった「プチ出家」が広がりを見せています。僧侶の修行について知る良い体験になるだけでなく、ストレス解消にも効くようです。
今回は心の健康を維持するために役立つ基礎知識として、こうしたプチ出家の心身に対する効能と、精神療法と対比できるポイントについて、詳しく解説したいと思います。
「認知行動療法」としてのプチ出家
精神疾患の治療手段において、大きな柱となるのが精神療法です。精神療法が治療のターゲットとする内容は、治療薬をもって脳内の機能を正していく薬物療法とはかなり異なる面があります。具体的には、精神症状を増悪させているネガティブな思考内容や心理的問題に対処することに重点が置かれます。また、病気の症状が深刻で元の日常にすんなり戻ることが難しい状況であれば、必要なサポートをすることも精神療法の一環です。
精神療法にはいくつかのタイプがありますが、「認知行動療法」はそのうちの代表的なもので、うつ病、摂食障害などさまざまな疾患の症状を緩和させるために行なわれています。
認知行動療法が治療原理とする基本的な考え方は、「頭の中をめぐる思考の内容こそが、当人の気持ちのありかた、外に現わす行動を決めるカギ」ということです。
具体的には、抑うつ症状が深刻化する際、本人の頭のなかは、将来を悲観するようなネガティブな思考が流れています。本人が「その流れが抑うつ症状を増悪させていることをはっきり理解し、それにストップをかけるすべを身につける」ことが抑うつ症状に対する認知行動療法の治療ターゲットになります。
それがプチ出家とどう関連するかといえば、たとえば、集中して写経をしていれば、その間は頭の中をネガティブな思考が流れる暇がなくなり、ストップがかかることになります。もし写経に集中せず、ネガティブなことを考えれば、心の乱れが文字に現れ、指導する僧からお灸を据えられることでしょう。そうした意味でプチ出家は認知行動療法のポイントを抑えているといえるでしょう。
「グループ療法」としてのプチ出家
精神療法には「グループ療法」と呼ばれるものもあります。認知行動療法のように専門家と患者さんとの1対1の関係ではなく、1人あるいは複数の専門家が数人から数十人のグループを率いて行ないます。グループ療法では各グループごとに目的があり、たとえば、あるグループは「病気に対する理解を深めること」、あるグループは「対人状況での問題などを克服すること」、そしてあるグループは「何らかの作業を行なうこと」に重点を置きます。
プチ出家にはグループ療法としての一面もあるでしょう。写経や座禅、お経を唱和することは、通常、グループですることです。実際、一人でするより、周りの人と一緒に同じ事をするときの方がより真剣になるでしょう。心身の修養のためのメニューを周りの人と一緒にこなしていくことは、一種のグループ療法といえる面もあるのです。
睡眠・食事・運動の基本ストレス対策もばっちり
ストレス解消法は人それぞれですが、ストレス対処の基本といえば、「睡眠時間の確保」「栄養のバランスの取れた食事」、そして「定期的な運動習慣」です。プチ出家では、野菜を中心とした精進料理を食べることになります。そうした健康的なメニューは日常の献立を考える際にも参考になることでしょう。また、朝早く起きて夜は早めに床につき、修行の合間には豊かな自然の中を散策します。このように、プチ出家はストレス対策の基本がしっかり抑えられているのです。
新しい知見や問題点を知る機会にも
プチ出家で新しい自分に出会えるかも
場合によっては、プチ出家から意外な自分の問題に気付くこともあるでしょう。その一つが依存症。プチ出家中は喫煙や飲酒が禁じられていることが多いので、それが手元に無い時にかなり不安が強まるようであれば、それは依存症の入口かもしれません。自分ではコントロールできていると思っていたそれらの習慣が、実はそうでなかったことがわかれば、そちらの問題にも早めに手を打つことができるでしょう。
ストレス対策の基本を押さえた方法で、心身ともに健康的な状態をキープしていきましょう。