紹介しきれないし、もったいない
ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルドは、ニンテンドースイッチのロンチタイトルです
といっても、誤解しないで欲しいのですが、クリアできる気配がないといっても、クリアしようという意志がないといっても、遊んでいないわけではありません。むしろ、毎日毎日遊んでいます。プレイ時間は既に80時間を超えてしまっています。80時間もあれば、当然クリアしている人もいます。ただ、ガイドはハイラルの大地で駆けずり回ることが楽しすぎて、あっちにフラフラこっちにフラフラしているため、クリアできていないのです。
さて、ゼルダBoWのご紹介を書くにあたって、2つばかり、困ったことがあります。1つは、この作品があまりに雄大なスケールでありながら、細部に渡って作りこまれ、その面白さや様々な工夫について丁寧にご紹介していくとキリが無いと言うこと。もう1つは、ストーリー的なネタバレはもちろんしませんが、そうでなくても、ゼルダBoWはその冒険すべてが、発見と驚きに満ち溢れていて、それらを遊んでいない人に事細かに説明してしまうことが、もったいなく感じられることです。
できれば、記事なんて読まずに遊び始めるのが1番だと思います。何も知らない状態で、冒険を始め、そしてその1つ1つを発見していくことこそ、最高に楽しいゲーム体験となるでしょう。今、ちょっとでも「そうしようかな」と思った人、もうこの記事読まない方がいいですからね。ニンテンドースイッチが手に入ったらやろうと思う……という人も、すぐ閉じてください。本当にもったいないんですから。
しかし、面白い、楽しいといっても、もう少し具体的に知りたいという人もいるかもしれません。そこで、今回はグッと話を絞りまして、「釣り」に限って、ゼルダBoWの魅力をご紹介してみたいと思います。釣りだけでも、ゼルダBoWのすごさ、その片鱗は伝わるんじゃないかと思います。
ゼルダBoWに釣りはない
ちなみに、ニンテンドースイッチで遊べる、ということしか知らない人もたまにいますが、Wii Uでも発売されています
しかし、ゼルダBoWに釣りが無いということは、このゲーム全体に関わる大きな意味があります。というのも、ゼルダBoWは「ゼルダの当たり前を見直す」と宣言され、今までゼルダとはこういうものだと、当たり前にあった要素が徹底的に見直され、新しくなっているということが1つのポイントだからです。
ゼルダの伝説シリーズでは「ゼルダの伝説 時のオカリナ」などで釣りがミニゲームとして入っていて、それは非常に凝っていて面白いゲームでした。今回のゼルダBoWにも魚がたくさんいて、しかもそれは捕まえることができます。しかし、釣りはありません。
じゃあ、どうやって捕まえるのか。これが恐ろしくシンプルで、魚の近くにいってAボタンを押す。これだけなのです。Aボタンを押すと、モーションも、エフェクトも、演出等ほとんどなく「ペロン」という効果音と共に魚が手に入ります。
こんな簡素な仕組みでは、今回は魚を捕まえるのは単なる作業で面白くないのかな、と思うと、実は全く逆です。これまでのゼルダの釣りよりも、遥かにクリエイティブで、多様性のある遊びになっています。
ありとあらゆる手段を使い、魚の近くでAを押す
今回のゼルダはハイラルの大地で好き放題やれます
飛んでいって捕まえる、という方法もあります。今回、パラセールというアイテムがありまして、高いところから飛び降り、空を滑空することができます。小高い場所からジャンプして、パラセールを開いて水上を滑空、魚の上に着水、と同時にAボタンです。これなら逃げる暇を与えません。魚を殺してから捕まえる方法もあります。ゼルダおなじみの弓矢、これで泳いでる魚を狙ってバシュッとやれば、プカーッと魚が浮いてきます。一本釣りならぬ、一矢釣り。
まだまだありますよ。爆弾漁というのはいかがでしょうか。今回はリモコン爆弾という、ボタンを押したら爆発してくれる爆弾がありますから、魚が泳いでるところに爆弾を投げて、ドーン! これなら複数の魚がいるところで、いっぺんに捕まえることができます。まさに漁ですね。爆弾はぷかぷかと浮いているので、川上で投げて川下におりてきたところをドーン、という手もあります。
変わり種では、アイスメーカーというアイテムを使っても魚が獲れます。アイスメーカーは、水の上ならどこでも四角い氷の柱を作ることができるという不思議なアイテム。場所を指定すると、水の上からモリモリモリッと氷柱が湧き出てくるんですが、魚のいる場所でそれをやれば、泳いでいた魚が氷柱に乗せられて水からでてくる形になります。氷の上でビチビチッと跳ねているところに近づいて、Aボタンでゲットです。
自分がやりたいことは面白い
ゼルダに限らず、釣りってわりと、決められた操作をこなすゲームの印象です
そうすると、仮にとんでもなく面倒な方法で魚を獲っていても、それは面白いんです。だって、自分で考えて、自分でやろうと思ってやってるんですから、ゲーム側にやらされてるのとは訳が違うんです。上記の例でいうと、アイスメーカーで魚を獲るのは、位置調整なんかがやや面倒なんですが、アイスメーカーで魚を獲ること自体が面白くなってしまって自分でやっていることなんで、それはどんなに面倒でもいいんです。面倒なのが嫌なら、いくらでも他の方法だってあります。
魚釣りのミニゲームというのは、ゼルダシリーズに限らず、ゲームの要求する操作が多く、そこから逸脱すると失敗する、という類のものが多い遊びです。魚が食いついたらボタンを押して、とか、魚の動きにあわせてスティックを倒して、とか。もちろんそういう遊びも、面白いものではあります。しかし、ゼルダBoWで魚を捕まえていると、そういう遊びとは別の創造的な面白さがあると同時に、全くストレスが無いということに気がつきます。ゼルダBoWで釣りが無くなっていることは「当たり前」を見直して、その成果がありありとみられる、その象徴的な事例にも感じられます。
空中から魚の群れを一網打尽
Joy-Conにはジャイロセンサーが搭載されていて、弓の照準はかなり直観的に操作することができます
例えば、こんな場面があります。滝の上からパラセールで川沿いに滑空していたところ、眼下に魚の群れを発見。しめたと思い、瞬間的に、どの方法で捕まえるか判断します。
一旦陸地に降りてからゆっくり考える方法もありますが…ここはスタイリッシュに、空中で弓を構えます。空中で弓を構えるとリンクの集中力が増し、スローモーションになります、これがかっこいいんです。ここ1番の時の為にとっておいた「雷の矢」をつがえ、Joy-Conのジャイロセンサーで魚群のど真ん中に照準をあわせると、矢の先端に閃光が集まります。放たれた矢は水面に触れると同時にまばゆい光を放ちます。
そう、水は電気を通しますよね、着水した雷の矢は広範囲に放電、魚たちがぷかーっと浮かび一網打尽に。そこにリンク自身もばしゃーんと飛び込みます。周りに魚がいる状態でAボタンを連打していくと次々魚が手に入ります。この時の「ペロペロペロペロン」と連続して鳴る効果音が心地よく響きます。ああ嬉しい、ああ楽しい。
遊びの密度
ただ敵を倒すにしても、やり方はいくらでも考えられます(イラスト 橋本モチチ)
さてみなさん、ここまでお話させていただいたところで「そうか、今回のゼルダは漁業ゲーになったんだな」と思っているかもしれませんが、ゼルダBoWは決して漁業のゲームではございません。そして、魚だけじゃなく、一事が万事こんな調子なのです。
フィールドにあるキノコや木の実、動物や鳥や魚たち、そこらへんに生えている木や、転がっている岩や石っころ、放置された木箱に樽に宝箱。山に丘、川に海、古びた遺跡に、にぎやかな村や道を行く旅人、宴会を開いたり砦を見張るモンスター達。見渡す限りそこら中にあるものが、みんな、創造力をかきたて、遊びに繋がっていきます。しかも、ダンジョン以外は、村も含めて本当に一切ロードが無くシームレスにつながり、そしてリンクは序盤のチュートリアルを終えると、いきなり世界の果てまで行こうと思えば行けてしまうのです。
あの遥か遠くにある山に登ってみたいな、という素朴な気持ちを抱いたら、プレイヤーがまずすることは走り出すことなのです。そしたら、途中に強いモンスターがいるかもしれません、標高が高くなれば寒くて体力がどんどん減るかもしれません、断崖絶壁を登らなければいけないかもしれません。雨が降るかもしれませんし、雷が落ちるかもしれません。しかしそれらの全ては遊びになっていて、解答は1つではなく、プレイヤーの創意工夫で乗り越えられるのです。
今回のゼルダも過去作にあったように馬に乗ることができます。広大なマップを馬で駆けるのは実に気持ちが良いのですが、ガイドは実は馬をほとんど使っていません。これはみんながそうというわけではなく、ガイドの性格によるところも大きいのですが、マップ上に気になるものがありすぎて、毎回毎回馬を降りてはあっちをウロウロ、こっちをウロウロしているので、もうそれなら最初から徒歩でいいや、となってしまったのです。
オープンワールドのゲームでは、膨大なクエストで広大な世界を歩かせる、という手法が少なからずあります。ゼルダBoWにもクエストはありますが、その数は、この種の他のゲームと比較した場合、あまり多くは無いように思います。また逆に、目的が無くてプレイヤーが自分で遊び方を考えなければ楽しめない、というタイプのゲームでもありません。そのどちらでもなく、引きずり込まれるように遊びまわってしまうのです。なんでしょう、いつの間にか足をとられている感じ。このゲーム沼みたい。
最初は目的地に行く途中に、気になるものがあって、道草みたいな感じでウロウロしているんですが、そのうち、ウロウロするだけで面白いことが起こることに気がつくと、今度はマップを見て、あそこにまだ行っていない面白そうな地形があるな、と出かけて行ってしまうようになります。こうなるともう、世界を救う旅をする勇者というよりは、ただのバックパッカーです。
遊びの密度がメチャクチャに濃く、あっちが気になる、これを試したいという遊び方を、果てしなく広大な大地でやっているんです。広大なのに密度が濃かったらどうなるのかというと、80時間経ってもクリアする気配すらない、となるわけです。
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