乳児期の基本的信頼が不足? 愛着障害とは

赤ちゃんの世話をする夫婦

子育て中の方であれば、「愛着障害」という言葉に聞き覚えがあるかもしれません

愛着障害とは、乳児期の発達課題である「基本的信頼」、親と子のつながりが十分に形成されず、その後の成長過程における対人関係に問題が現れてしまうことです。

愛着障害のルーツは乳児期にあり、基本的に小児期の問題だといわれていますが、実は大人になってもまだ愛着障害の症状に悩まされている方も少なくありません。愛着障害の原因や心理状況について詳しく解説します。

愛着障害の原因は生後3歳以前の環境

愛着障害(Attachment Disorder)は、心理学の愛着理論をもとに提唱された疾患概念です。物心が付く前の生後半年頃から3歳頃までの時期に、自分を養育する親あるいはそれに類ずる人から十分構ってもらえなかったり、あるいはネグレクトを受けていたりという事実があった場合には、愛着障害が疑われます。

有名な発達心理学者、エリク・H・エリクソン(1902~1994)が唱えた心理社会的発達理論において、乳児期の主要な発達課題は「基本的信頼(basic trust)」の獲得にあるとされています。

この頃の子供には「自分を守ってくれる特別な人」の存在が不可欠。まだ非力な存在である乳児は生きるために、親あるいはそれに類ずる存在が必要なのです。自分を世話する相手を無条件に信頼する基本的信頼がその後の人間関係の基礎になるとされています。

この存在がいない場合、子供の心理発達には何らかの問題が生じてしまうかもしれません。そして、その経験は時として大人になってから上手に振る舞えないなど、何らかの後遺症として現れてきます。

他人との距離感がうまく掴めない「愛着障害」の症状

愛着障害は、乳児期に養育者から受けたネグレクトなどが原因で起こります。そのため、例えば小学生の時期に家庭で何か辛い出来事があり、その後の行動や感情面に何か問題が現れたとしても、通常は愛着障害とはみなされません。

愛着障害の症状として挙げられる問題は、「人との接し方がよく分からなくなってしまう」ということ。他人に心を開くことができないケースもあれば、一方で、相手が全く知らない人でも警戒心を持つことなく、まるで身近な人であるかのように接したり、見知らぬ人によくついていくといった問題が目立つ場合もあります。こうした愛着障害の問題には、子供がかかる小児科医や学校の先生方が最初に気付くことが多いようです。

重度な愛着障害…「反応性愛着障害」とは

愛着障害という言葉自体は、実は正式な疾患名ではありません。しかし、米国精神医学会が発行する国際的な診断マニュアル(DSM)は、その問題がかなり深刻化した「反応性愛着障害(Reactive attachment disorder)を、小児期の精神疾患の一つとして挙げています。

その診断基準には、診断する際の前提条件として、養育者から顕著なネグレクトを受けていた、あるいは養育者が次から次へ変わっていくなど、深刻な養育環境が条件として記載されています。

反応性愛着障害では、親からのネグレクトなどが原因で、栄養状態や衛生面に深刻な問題が現われることも少なくありません。同年代の子供と比べて、発育不良が目立つ場合もあり、心身の良好な発育を取り戻すためには迅速かつ適切な対処が必要になります。

大人になっても愛着障害の症状が続くケースと対処法

愛着障害は、反応性愛着障害のように明らかに精神科的な対処が必要なケースばかりではなく、乳児期に親あるいはそれに類ずる特別な存在がいなかったことで起こり得るさまざまな問題のことをいいます。簡単に言えば、他人に対して心を閉ざしてしまう、あるいは反対に心を開きすぎてしまうといった両極端のどちらかへ向かいやすくなることです。

こうした心理傾向は小児期だけでなく、思春期を迎えた頃、そして大人になった後も続いている可能性があります。愛着障害が生み出す問題心理に対処していくためには、まず原因を自分で自覚することは大切です。たとえば、自分は必要以上に特別な誰かを求めてしまう……と感じることはありませんか?

自分の心のうちに、親あるいはそれに類ずる特別な存在がいない、あるいは子供の頃いなかった気がするという方は、現在の対人状況に何か悪い方向で関わっていないかを考えてみましょう。過去を変えることはできませんが、過去が生み出す問題に対処していくことは可能です。

愛着障害の治療には、精神科的な治療法である「認知行動療法」も効果的です。自分でできる認知行動療法としては、「落ち込んだ時に試したい「認知行動療法」の考え方」なども、ぜひご一読ください。いずれにしても、人間関係に関する悩みから解放されないという方は、一度精神科を受診されてみるのも良いかもしれません。
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