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記事例:「なんで結婚しないの?」に答え続けるのにもう疲れました

セクシュアルマイノリティの子どもたちは今

この記事をご覧のみなさんの中には、ストレートで、お子さんをお持ちの方もいらっしゃるかと思います。もしお子さんが、同性を好きになる子(同性愛者)だったり、心と体の性別が一致しないトランスジェンダーだったりしたら(セクシュアルマイノリティは約8%の確率で生まれてきますから、十分ありえる話です)、学校でいじめられないだろうか、先生は守ってくれるだろうか、と心配になるのではないでしょうか。

私の話をすると、小学校の時に「おかま」とからかわれたり、先生から「もっと男らしくしろ」と怒鳴られたりしていました。中学の時に同級生の男の子を好きになり、こういう自分はおかしいのだろうかと悩み、図書館で見つけた本に「同性愛は異常」と書かれているのを見て絶望……。幸い、ひどくいじめられて不登校になったり自殺を考えたりということはなかったのですが、明るい未来はないということ、世の中が男の論理で回っていること、田舎にゲイの居場所がないことを思い知りました(80年代の話です)

今はもっと肯定的な情報が世の中にたくさんありますし(「君のままでいい.jp」というセクシュアルマイノリティの子どもたちへの応援メッセージが掲載されたサイトもあります)、インターネットにアクセスできれば、仲間がたくさんいる(決して独りじゃない)こともすぐわかります。当事者の自己肯定感は昔に比べて格段に高まっていると思います。

その一方で、学校での差別やいじめは依然としてシビアなものがあるということが最近、浮き彫りになってきています。

昨年の一橋大学ロースクールのゲイの学生の自殺のニュースもとてもショックでしたが、もっと若い、高校や中学、小学校の子どもたちも、過酷な状況に直面することがあるとわかりました。

若ければ若いほど、周囲の大人たちの理解なしにはやっていけないわけで、なかには孤立無援の状態に陥って、自殺を図る子どもまでいるのです。学校という環境から離れて久しく、時代が変わるとともに学校もよくなっているのだろうと安易に、楽観視していたのですが、改めて厳しい現状を知って、これは大変だと、どうしたらいいんだろうと考えさせられました。 

私は決して学校教育の専門家ではありませんので、その辺りについてうっかり門外漢な(素人的な)ことを書いてしまうかもしれませんが、当事者の視点で言えることを言っていきたいと思います。みなさんも一緒に考えていただければ幸いです。

 
 
 

セクシュアルマイノリティ差別の非道さを訴えた映画『彼らが本気で編むときは、』

映画『彼らが本気で編むときは、』

(C)2017「彼らが本気で編むときは、」製作委員会

先月のベルリン国際映画祭で、日本映画として初めてテディ賞(セクシュアルマイノリティの映画に贈られる賞)の審査員特別賞を受賞した『彼らが本気で編むときは、』が、現在公開されています。すでにご覧になった方もいらっしゃると思います。

<あらすじ>
11歳の小学生・トモ(柿原りんか)は、母親のヒロミ(ミムラ)と二人暮らし。だがある日突然ヒロミが家出(オトコができるとこうしてトモを放置していなくなってしまう)、独りきりになってしまったトモは、仕方なく叔父のマキオ(桐谷健太)の家に向かう。母の家出は初めてではなく、過去にも同じ経験をしていたトモだったが、以前と違うのは、今回マキオはリンコ(生田斗真)という恋人と一緒に暮らしていたことだった。リンコは性別適合手術を終えたMtFトランスジェンダー(理由あってまだ戸籍上の性別は変更していない)。最初は戸惑いを隠せなかったトモも、母が決して与えてくれなかった家庭の温もりに触れるうちに、リンコに対して次第に心を開き、安らぎや愛情を感じるようになっていくのだが……。

トモという女の子は、ちょっと直情的で、感情をダイレクトに表現するタイプです。最初は(他の同級生と同じように)LGBTへの偏見を持っていて、初めてリンコに会った時も「うわぁ……」という感じでした。でも、リンコがかわいいキャラ弁を作ってくれて感動したり、髪を結ってくれたり、実の母親よりもきめ細かく、温かな愛情を注いでくれるので、次第に心を開き、リンコさんは大切な家族だという思いを抱くようになります(ついには、リンコを差別する人に対して敢然と立ち向かうまでになります。ちょっとやり過ぎですが…)

トモが、シリアスな現実に直面して右往左往しながら、「幸せ」とは世間の”普通”に合わせることではなく、あたたかく迎えてくれる、愛情を注いでくれる、何があっても守ってくれる、そういう家族との暮らしなのだということを実存としてかみしめながら、LGBTへの見方や価値観を変化させていく過程が、この作品のど真ん中を貫く一本の太い柱になっています。

主人公のリンコは、すでに性別適合手術を終えているMtFトランスジェンダーですが、シスジェンダーとなんら変わらず、働き、恋をして、家族を作り、幸せな日常生活を送っています。中高生の頃に、学校で男子として過ごすことに苦痛を感じ、母親に助けてもらうという回想シーンもありますが、当たり前に幸せに暮らしているところからスタートしているのが素敵だなと思いました。

リンコを深く愛し、誰に何と言われようとリンコを守っていこうとするマキオの姿にも胸を打たれますし(こういう彼氏がいたらいいなあと思う人、多いはず)、彼女のお母さん(田中美佐子さん)が素晴らしく力強い味方だった、というところもよかったです。 

この映画では、問題アリなのはトランスジェンダーのリンコではなく、明らかに育児放棄ぎみの母親の方として描かれています。ともすると世間の人たちは(よく知りもせずに)トランスジェンダーであるというだけでリンコを母親の資格ナシと決めつけ、血のつながった生みの母親の方がマトモだと言ってしまいがちだけど、それって本当にそうなの? と問いかけるのです(『チョコレートドーナツ』と同様ですね)。日本ではまだ同性カップルが子どもを引き取って育てたりすることがなかなか認められない現状がありますが、こうした状況に風穴を開けるきっかけにもなりえます。

もっと言うと、セクシュアルマイノリティ(LGBT)が異常なのではなく、異常だと見なしたりロコツに差別したりする人たちこそが問題なのでは……と気づかせるような作品になっています。ホモフォビアやトランスフォビアという言葉は出てきませんが、その言葉の意味を説明する時に、これからは「『彼らが本気で編む時は、』を観てください。よくわかりますよ」と言えるのです。それだけでも、たいへん重要な、画期的な映画だと言えます。

これは、すでにネット上で広まっていますし、公式サイトで子役俳優の込江海翔くんが「僕も、恋心とは違うけれど、かっこいい男の人に憧れることはあるし」と書いていますので、ネタバレとまでは言えないと思うのですが、トモの同級生のカイくんは男の子が好きになる男の子です。そのせいで、同級生たちからいじめと言うほかない仕打ちを受け、孤立しています。リンコと違ってお母さんが無理解だったせいもあり、カイくんは……(どうなったかは書かないでおきます)。

このカイくんのサブストーリーは、周囲に味方になってくれる大人が誰もいないセクシュアルマイノリティの子どもたちがどんなつらい思いをするか、その生きづらさを伝えるエピソードになっています。


彼らが本気で編むときは、
2017年/日本/監督:荻上直子/生田斗真、桐谷健太、柿原りんか、ミムラ、小池栄子ほか/全国でロードショー公開中

 
 
 

アンケート調査で明らかになった差別・いじめの実態

今月初め、セクシュアルマイノリティ(LGBT)を対象にした調査で、半数以上が学校生活でいじめを経験し、うち7割近くが「先生はいじめの解決に役立たなかった」と思っていることが明らかになりました。学校現場に正しい知識や情報が広がらず、教師も対処しきれていない状況が浮き彫りとなったかたちです。

この調査はライフネット生命保険の委託により、宝塚大看護学部の日高庸晴教授(社会疫学)が実施したもので、インターネットを通じて全国の10歳~94歳の性的少数者から回答を得ました。回答者の総数は約1万5000人に上り、性的少数者を対象としたアンケートとしては、これまでで最高規模となっています。

調査結果によると、「職場や学校で性的少数者について差別的発言を聞いたことがある」という人は72%に上りました。10代が77%、20代が75%、30代が70%、40代が69%、50代以上が64%で、若い世代ほど高い率になっていました。これについて日高氏は「若い世代ほど差別的発言に触れているのは、情報量の増加に伴い、偏見やからかいも増えているからではないか」とコメントしています。若い世代ほど差別に敏感だからではないか、という意見もネット上では見られました。

それから、回答者の58%が小中高校時代にいじめられた経験が「ある」と回答、21%が不登校を経験していました。いじめられた経験がある人に「先生はいじめの解決に役立ったか」と尋ねると、「そう思う」は13%で、67%が「そう思わない」と回答していました。

また、学校生活で同性愛について「一切習っていない」とした人は68%に上りました。「『異常』なものとして習った」人は5%、「否定的な情報を得た」とした人が17%、「肯定的な情報を得た」とした人が7%でした。

ほかにも、「自傷行為の経験がある」と回答した人が全体の10%、「気分の落ち込みや不眠などで心理カウンセリングや精神科などを利用した経験がある」と答えた人が32%に上り、生きづらさを抱える様子が窺えました。

日高氏は「いじめ被害者や不登校の児童生徒の中には、より高い割合で性的少数者がいるはず。学校現場は困難を抱えた子どもたちを守るべく行動してほしい」と語っています。

 
 
 

漫画で見るLGBT高校生のシビアな現状

国際NGO(人権団体)であるヒューマン・ライツ・ウォッチは2015年、日本の学校でのLGBT生徒へのいじめに関する調査を実施し(全国14都府県で、数十人のLGBTの子ども・生徒および最近学校を終了した若者たちから詳しく話を聞いたそうです)、2016年に『出る杭は打たれる:日本の学校におけるLGBT生徒へのいじめと排除』という報告書を刊行、インターネット上で公開したところ、全国の自治体の教育委員会やPTAの連合会などから「研修用の資料に使いたい」という申込みが殺到したそうです。

ゲイやレズビアン、トランスジェンダーの高校生が実際に体験したことを漫画で描いているのですが(作画は、ゲイの人気ブロガー・歌川たいじさんです)、いかにも日本的な「出る杭は打たれる」現実、先生がLGBTのことを理解せず、率先して差別に加担している現状が浮き彫りになっています。簡単にダイジェストで紹介します。


■ゲイはどうしていないことにされるのだろう
『出る杭は打たれる:日本の学校におけるLGBT生徒へのいじめと排除』

 

高校生のゲイの男の子のお話です。学校生活のいたるところでゲイを差別する発言を見聞きし、カミングアウトしたら変わるかもしれないと思い、お母さんに相談しますが、猛反対されました。それでも決意は固く、ある日、「I’M GAY」というTシャツを着て登校します。すると、学校の風紀を乱したとしてお母さんが呼び出されることに……。先生の「お前と話してるだけで俺までゲイだと言われる」という言葉にショックを受けます。そして彼は、激しいイジメを受け、着替えすらできず、ツイッターで罵詈雑言を浴びる毎日を送ります。先生は見て見ぬふりです。

■LGBTのことをなにも知らない先生たち
『出る杭は打たれる:日本の学校におけるLGBT生徒へのいじめと排除』

 

レズビアンの高校生のお話です。ふだんからネットで同性愛についての悪口を見ていて、自分のセクシュアリティのことは誰にも言えないと思っていました。授業で先生が「同性愛者は不自然で、道徳的にも喜ばしくない」と言っているのを聞いて、ショックを受け、自分は欠陥品だと言われた気がして、その場で泣きだしてしまいました。保健室に行き、養護の先生に相談すると、「私は同性愛のことは知らないから、私に教えてくれない?」と言われました。その後、全国高校生スピーチコンテストに、同性愛者の人権というテーマで出場します。先生には「この学校が悪く言われる可能性もあるから、テーマを変えなさい」と言われます。が、ちょうど渋谷区の条例がニュースになったこともあり、しぶしぶOKに。全国大会に出場して好成績を収め、文化祭でもスピーチしました。でも、先生たちが理解を深めたとは思えません。

■少数者は多数者に合わせなくてはいけないのか?
FtMトランスジェンダーの高校生のお話です。彼は中学の時、「キモいから女子トイレを使うな」と詰め寄られ、うつになり、不登校になった経験があります。高校に進学しますが、体操着での登校が認められておらず、女子の制服を着るのが本当に苦痛で、吐き気をもよおしたりします。せめてリボンを外したい、男子トイレを使いたいと先生にお願いしましたが、断られます。保健室の先生に相談すると、精神科を受診するようにと言われました。精神科に行くと、性同一性障がいについての理解がなく、悩みに応えてくれる人を探すことすらハードルなのか…と。結局、父親に相談しますが、「医療費が自分で払えるようになってから行け」と言われ、どうすることもできませんでした。

■先生の中の同性愛者嫌悪
高校でゲイだとカミングアウトしている生徒のお話。校内新聞の記者をしている人からインタビューを受け、いじめられていたこと、自分を否定して生きて行くことのつらさ、カムアウトしてからはもっといじめられるようになったことなどを語りました。しかし、いざ自分の記事が載っているはずの校内新聞を見たら、記事がありません。先生が「気持ち悪い」と言って直前で掲載を差し止めたんだそうです。

ほかにも、教師から、同性愛やトランスジェンダーであることをオープンにして学校生活を送ることは「自己中心的」だとか「学校生活がうまくいかなくなる」などと注意された生徒もいたそうです。「今後いじめられたくないのなら、もう少し社会の性別規範に合わせなさい」と言われた生徒もいました。教員自身がLGBTを差別する冗談や悪口を言っているのだから同性愛に対するいじめを報告するなんてできない、という声もあったそうです。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査は、LGBTの子どもが教員にいじめを打ち明けた際、個々の教員によって対応にかなりのばらつきがある実態を浮かび上がらせました。現状、性的指向および性自認に関する包括的な教員研修は義務づけられていないため、LGBTの児童・生徒へのいじめがあった時に先生がどう対処するかは、個々の先生がLGBTをどう見ているかに全面的に左右されてしまっているのです。「日本の学校現場ではLGBTを差別する憎悪に満ちた表現がほぼ至るところに存在しており、LGBTの生徒は押し黙り、自らを呪い、ときには自傷行為にすら及んでいます」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは文部科学省の担当者と会談し、性的指向および性自認に関する教員研修を実施するよう訴えましたが、担当者はいじめに対して「総合的」なアプローチを取っていると繰り返し、「LGBTなどの弱い立場のグループのニーズに対応することとすれば、そうした子どもたちを特別扱いすることになってしまう」とも示唆したそうです。

 
 
 

なぜ学校で差別やいじめが横行するのか

世の中はLGBTに寛容になった、今はLGBTブームだ、などと言われたりします。確かに企業がLGBTフレンドリーな施策を行うようになり、渋谷区や世田谷区、那覇市、札幌市などの自治体で同性パートナーシップ証明制度が導入されたというニュースが流れたり、ひと昔前に比べると、もはや隔世の感があります。しかし、学校では相変わらずセクシュアルマイノリティの子どもたちへの偏見や差別が蔓延し、いじめがなくならず、先生もいじめの解決に役立たず、同性愛を否定するような情報が授業で伝えられることもあります。いったいなぜなのでしょうか?

ヒューマン・ライツ・ウォッチが指摘するように、性的指向および性自認に関する包括的な教員研修が義務づけられていないため、先生がもともとセクシュアルマイノリティへの理解を欠いている人だった場合、そのまま偏見や差別が垂れ流しにされてしまうということもあるのでしょう。ほかにも、教科書の記述に問題があるという声も上がっています。

小中学校の保健の教科書を見ると、現状、性的少数者についての記述が一切なく、「思春期になると、だれもが、遅かれ早かれ異性に惹かれる」というような誤った(同性愛を無いものとした)記述がずっとそのままになっています。これが差別の根本原因になっているのではないかと指摘されています。

クラスに必ず1人いる子のこと、知ってますか?~セクシュアル・マイノリティの子どもたちを傷つける教科書の訂正を求めます~

「クラスに必ず1人いる子のこと、知ってますか?~セクシュアル・マイノリティの子どもたちを傷つける教科書の訂正を求めます~」というキャンペーン

「教科書にLGBTをネットワーク」共同代表の室井舞花さんは、先日開催された「レインボー国会」で、

「13歳の時に初めて、女の子に恋をしました。その時、教科書に『誰もが異性に興味を持つ、関心を持つ』と書いてあるのを見て、自分は間違っているんだと印象づけられ、ショックを受けました。それから十数年経っていますが、教科書にはまだ同じ内容が書かれています。そして、自尊心を傷つけられ、自分が間違っていると思う子どもたちが今も教室の中にいます。それに堪えられないと思って、キャンペーンを立ち上げています」

と語っています。

昨年3月、新しい(今年度から使用される)高校の教科書のうち、家庭科や倫理の教科書で性や家族をめぐる記述が増え、性的マイノリティや多様な家族については地理歴史や公民、家庭の3教科の教科書計31点に記述があり、うち家庭の4点がLGBTを取り上げるというニュースがありました。

しかし、LGBTの子どもたちへの差別やいじめがより深刻なのは小中学校です。高校の教科書だけでなく「義務教育の教科書にもLGBTを載せよう」ということで、学習指導要領の改訂のタイミングにあたる昨年、上記の室井さんがキャンペーンを立ち上げ、LGBTについて記載してほしいという多くの声が文部科学省に寄せられました。にもかかわらず、先月発表された改訂案では、相変わらずセクシュアルマイノリティの子どもが教室にいることを想定した記述は一切なかったそうです……悲しいことです(ちなみに、この件についてのパブリックコメントが15日まで募集されています)

 
 
 

一歩前進!「いじめ防止等のための基本方針」改定

ヒューマン・ライツ・ウォッチは文部科学省に対して「いじめ防止基本指針にLGBTの生徒に固有のニーズと傷つきやすさが明記されれば、教職員は適切な研修を受講し、リソースを利用し、情報に接することになり、子どもたちの人生を変えることになるなずです」と訴えていました。

「いじめ防止基本指針」とは何でしょうか。2013年、いじめ防止対策推進法※が制定され、国はいじめの防止等(いじめの防止,いじめの早期発見およびいじめへの対処)に向けた対策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針として「いじめ防止等のための基本方針」を策定しました。

※いじめ防止対策推進法:2011年10月、大津市の中2男子がいじめを苦に自殺したのをきっかけに、防止対策を徹底するために与野党の議員立法で制定された法律。2013年に成立、施行。国と学校に、いじめ防止対策基本方針の策定を義務付けた。心身や財産への重大な被害や、長期欠席を余儀なくされたりした場合を「重大事態」と定義。学校には文部科学省や自治体への報告が義務付けられており、調査組織を設置して被害者側に適切な情報提供をしなければならない。

そして今般、この基本方針が改定されることになり、「震災いじめ」の防止などとともに、セクシュアルマイノリティ(LGBT)の子どもたちに対するいじめを防止するために教職員の理解を促進するよう改定案に明記されました。2月7日、いじめ防止対策協議会は、この改定案を大筋で了承しました。基本方針に添付する学校でのいじめ対応の要点をまとめた「ポイント」(別添資料)の中で、東日本大震災で被災した児童生徒に対するいじめの未然防止・早期発見に取り組むことなどとともに、「性同一性障害や性的指向・性自認について、教職員への正しい理解の促進や、学校として必要な対応について周知する」と明記されました。改定案は3月中に決定される見通しです。ヒューマン・ライツ・ウォッチの提言が実を結んだのです。

これ以前にも、文部科学省は2015年、全国の教育委員会等に向けて「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」を示し、トランスジェンダーの生徒に対する場面ごとの支援例を複数示すとともに「性的指向」に言及しました。そして、2016年発行の手引き「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について(教職員向け)」でLGBTの権利に関する進んだ見解を示すとともに、LGBTの生徒を守るための対応を勧告しました。しかしこれは、拘束力のない「指導・助言」に留まっていました。

今回の改訂案で教職員研修が必要だと明記されたことに対し、ヒューマン・ライツ・ウォッチはこれを歓迎するパブリックコメントで「教員の間にはLGBTに固有のいじめに対応する十分な準備がない実態も私どもの調査で明らかになりました。よって、個々の教員やそれぞれの学校が性的指向や性自認を理由とするいじめからの保護を求める生徒を支援しようとしても、不十分な対応に留まる可能性があります。教員たちのLGBTにまつわる問題の理解が十分でなく、LGBTの子どもならではの傷つきやすさを心得ていない場合が多いからです。いじめ防止基本方針においてそうしたLGBT生徒のニーズと傷つきやすさを明記することとあわせて、教職員に対して適切な研修、リソース、情報へのアクセスを認めれば、こうした状況は変わると考えます」と述べています。

教科書が正されないのはたいへん残念ですが、こうして学校の先生の無理解や偏見を正していくような研修が実施されていけば、ずいぶん変わるだろう、少なくとも先生が率先してセクシュアルマイノリティの子どもたちを差別するような事態は減っていくだろうと期待されます。

 
 
 

セクシュアルマイノリティの子を持つ親御さんへ

今回は、学校での対応に的を絞って、お伝えしました。でも、本当は学校だけの問題ではないですよね。

だいぶ前から、教育現場で性的指向や性自認(セクシュアルマイノリティ)についてきちんと教えるべきだとする意見も上がっていたのですが、決まって「子どもに同性愛のことを教えるなんてとんでもない」「子どもが同性愛に染まったらどうするのか」などといった声が保護者から上がってきて、おじゃんになる……ということが繰り返されてきたと思います。『彼らが本気で編むときは、』の小池栄子さんもそういうタイプの親御さんの役でした(ゲイカップルがいたら子どもの目をふさいで「見ちゃダメ」とか言いそう……)

もしかしたらこの記事をご覧の方の中にも、こういう意見に同調してしまう方もいらっしゃるかもしれません。やっぱり未成年のうちは同性愛のことに触れさせない方がよいのでは……。おそらくそういうふうに感じてしまう意識の根っこには、同性愛を(「そっちの趣味に走る」的な)性的な逸脱・倒錯として捉える誤解というか偏見(言い換えると「同性愛嫌悪(ホモフォビア)」)があるのだと思います(もっと言うと「セックス嫌悪」と絡み合っているのかな、と思います。未成年にはセックスのことなんて教えるべきではないという「純潔教育」は望まない妊娠や性感染症の増加につながることが明らかになっています)。ちょっと前までは、それが世間の人たちの大方の見方だった気がします。性的少数者とかLGBTという言い方で認知され、支援や権利擁護が必要なんだということが浸透しはじめてきたのは本当に最近のことです。

親御さんがセクシュアルマイノリティをどう見るかというのは本当に人によって温度差や濃淡があり、パレードに来ておにぎりを作ってくれるようなお母さんたちもいた一方で(札幌のお話。泣かされました)、全く理解がなく、ゲイだとわかったら勘当するような親御さんもいました(私の友人にも家を追い出された人がいました)。カミングアウトの話になると、うちの親は無理だな……とか、運がよければ受け入れてもらえるかもしれないけど……といった声がよく聞かれましたが、やはり個人の力では限界があって(親子の縁を切られる怖さと隣り合わせなのです)、社会が変わらないとどうにもならないと思っていました。

今回、やっと学校教育がよくなると思えるような制度ができたわけですが、もし親御さんが無理解なままだと、お子さんの生きづらさはあまり変わらないと思います。ですから、この記事をご覧になっているお子さんをお持ちの方はぜひ、セクシュアルマイノリティについての理解を深め(アライとなり)、いざというときにお子さんを守ってあげてほしいと願うものです。

繰り返しになりますが、ご家族や親戚の方、友人の方なども誘ってぜひ、『彼らが本気で編むときは、』をご覧になってみてください。

 
 

 

今月のトピック

この1月から2月の間にいろんなニュースがありました。ダイジェストでお知らせします。

レインボー都市うらそえ宣言

浦添市役所に掲げられたレインボーフラッグ

1月4日、沖縄県浦添市が「レインボー都市うらそえ宣言」を行い、市役所にレインボーフラッグを掲げました。lLGBT支援宣言は大阪市淀川区が初めて行い、以降、沖縄県那覇市、兵庫県宝塚市、和歌山県橋本市、岐阜県関市と続いてきました。沖縄県では2例目となります。

1月1日付で、資生堂が同性パートナーも配偶者として処遇するよう就業規則を改定しました。勤時の別居手当の取得や、慶弔見舞金、介護・育児制度の利用が可能になります。介護・育児休暇は契約社員も取得できるそうです。同性カップルを結婚に相当する関係と認めるのは、化粧品大手では初めてのことです。

2016年12月1日、国家公務員の人事や処遇などを取り扱う人事院が人事院規則10−10(セクシュアルハラスメントの防止等)の運用についての一部改正について発出し、国家公務員におけるセクシュアルハラスメントに「性的指向若しくは性自認に関する偏見に基づく言動」が含まれることが明らかになりました。また、同規則第6条に基づく指針を改正し「性的指向や性自認をからかいやいじめの対象とすること」が例示されたこと等も確認されました。

アニメ「タッチ」の上杉達也役などで知られる大御所声優の(先日の声優総選挙でも野沢雅子さんらとともにスタジオ出演していた)三ツ矢雄二さんが、1月12日深夜に放送されたバラエティ番組「じっくり聞いタロウ~スター近況(秘)報告」(テレビ東京系)でゲイであることをカミングアウトしました。

1月27日、福島県の男女共同参画の基本計画の改定案の中に、性的少数者(LGBT)を尊重し、相談窓口の設置や理解を促す学校教育の実施など具体的な施策を盛り込む素案が審議会に示され、了承されました。県は審議会の答申を受け、3月末までに改定を実施します。都道府県の基本計画でLGBTに触れた例はあるものの、具体的な施策を示すのは福島県が初めてです。

2月初め、MtFトランスジェンダーで性同一性障害の診断を受け、性別適合手術も終えていながら戸籍上の性別変更が認められずにいる京都市の会社経営者が、加入する国民健康保険組合に対して女性の通称名で保険証を交付することを求め、受け入れられていたことがニュースになりました。公的な身分証明書にもなる保険証で通名の使用が認められたのは初めてのことだそうです。

2月9日、東京都・世田谷区が、同性カップルも区営住宅に入居できるよう条例に明記する方向で調整を進めていることが明らかになりました。

大手住宅情報サイト「SUUMO」を運営するリクルート住まいカンパニーが、夏頃をめどに、同性カップルも入居できる物件を検索できるサービスを導入するそうです。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。