陸地面積は全世界の0.3%、地震発生は全地震の2割
わが国の陸地面積は、全世界のわずか0.3%にすぎません。にもかかわらず、世界の地震のおよそ2割が日本列島近辺で発生しているわが国は、いうまでもなく世界有数の地震国です。過去においても、わが国は多くの地震被害に遭ってきました。昔は「天災である」とあきらめざるを得なかった地震被害ですが、1964年の新潟地震を契機に、1966年「地震保険に関する法律」が制定され、地震保険が誕生しました。保険会社だけでなく、政府も法律に基づいて保険金の支払義務を負う官民一体の制度となっており、ここは他の保険と地震保険の異なるところです。
ただ、国が保険金の支払い義務を負うとはいえ、地震災害は発生頻度や被害規模が想定しづらく、保険金の支払いがどのくらいになるのかも起きてみないとわかりません。そのために、契約にはいくつかの制限が設けられています。地震保険の契約は居住用建物・生活用家財に限られ、契約金額も火災保険金額の30%~50%の範囲内、かつ建物は5000万円、家財は1000万円が上限です(詳しくはこちらへ「地震保険に入るべき?」)。この点は、ご存知の方も多いでしょう。
1回の地震で11兆3000億円が支払われる保険金総額の上限
もうひとつの制限が、1回の地震で政府や保険会社が支払う保険金の総額に、上限額が設定されている点です。上限額は2017年10月現在、11兆3000億円となっており、この金額を超える地震保険金の請求があった場合には、支払うべき保険金総額に対する保険金総支払限度額の割合で、1件当たりの契約で支払われる地震保険金は削減される可能性があります。内閣府の予測によりますと、マグニチュード7.3の東京湾北部地震が発生した場合、経済被害の総額は112兆円とされています。上限額とはあくまでも地震保険金の総額であって、地震による経済被害の総額ではないのでお間違いなく。
なお、財務省によりますと、保険金総額の上限は、関東大震災級の巨大地震が発生しても保険金の支払に問題が起きないレベルとされています。過去を振り返ってみると、過去に支払われた地震保険金の総額で最大のものは、東日本大震災の約1兆3000億円で、次いで熊本地震が3753億円、阪神・淡路大震災は783億円となっており、設定された上限額を超える保険金支払いは現在までありません。よって、地震保険金の削減が行われたことも、過去にはありません。
責任準備金が足りなくても支払われる?
どのような巨大地震が発生しても保険金は支払われなければならないが・・
そもそも地震保険に関する法律では、契約者が支払う地震保険料のうち、契約上の必要経費(代理店手数料その他)を除いた額とその運用益のすべてを、責任準備金として積み立て続けることを、政府および保険会社に義務付けています。つまり、私たちの支払った保険料の大半は、将来の保険金の支払いに備えて、今もコツコツと積み立てられているわけです。
もし、責任準備金を超える支払いが生じる場合には、政府は補正予算を組むことで、保険会社は政府や銀行への借入れなどで資金調達をすることによって、地震保険金が支払われることになります。法律による定めがあるわけですから、上限額までは資金的な裏付けがあるものと考えていいでしょう。
地震保険はいまだ発展途上の制度。上手に利用して
保険金の支払上限額は、2014年4月にそれまでの6兆2000億円から7兆円にアップされ、さらに現在の11兆3000億円に至っています。地震保険が発足した時の支払い上限額を振り返りますと、わずか3000億円に過ぎませんでした。それが以降の契約の伸びとともに、徐々にアップされてきたのです。補償内容についても、地震保険の創設当時は全損のみの補償で、建物の加入保険金額も火災保険の30%まで、かつ90万円が限度でしたが、現在では50%までかつ5000万円までにアップされています。契約者が増えれば、さらなる補償充実も期待できるかもしれません。
地震保険も非常グッズ。補償内容をよく知り、上手に家計に取り入れよう
なお、支払った地震保険料は所得控除の対象になり所得税・住民税が軽減されます(「地震保険料控除」)。地震保険料控除は2006年度の税制改正により創設されたもので、税制から地震保険の加入を後押しするもの。JA共済や全労済の火災共済の地震保障部分も控除の対象です。
【関連リンク】
「地震保険に入るべき?」
「地震保険は安くなる?」
「わが国で発生する地震」(内閣府 防災情報のページ)
「首都直下地震等による東京の被害想定」(2012年4月18日公表)