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病院の紹介状は見てはいけない?開封したら無効になるのか

【医師が解説】病院の紹介状は、より専門的な検査や治療が必要な場合や、転居に伴い違う病院で継続治療が必要になった場合に、医師が作成する文書です。 紹介状の値段や開封可否、気になる内容、また宛名と違う病院に持参しても受診可能なのか等、紹介状をもらった際の注意点を解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

病院の「紹介状」の内容は?「診療情報提供書」に書かれていること

病院の紹介状のイメージ

病院で医師が作成した「紹介状」。開けたら無効になるのでしょうか?


紹介状の正式名称は、「診療情報提供書」。名前の通り、医療機関での診療に必要な情報を提供するための文書です。文書をみるだけで、紹介理由が相手の医療機関にわかるようになっています。主な紹介理由としては、精密検査や入院加療希望、また転居に伴う継続治療などが挙げられます。

紹介状には基本情報や医学的情報、紹介目的などが書かれています。基本情報とは、氏名や年齢、生年月日、性別、住所、電話番号の他、アレルギー歴や家族歴、個人歴、既往歴などの情報です。医学的情報としては、診断名(診断がついていない場合もあります)や主な症状、検査の実施状況や治療経過、投薬状況が中心に書かれています。検査については、実際の検査結果の資料や実際の写真、CD-Rが同封されていたり、別に用意されている場合もあります。

詳細な紹介状を作成する場合は、時間がかかることがありますので、転居などが判っていれば、早めにお願いしておくことをお勧めします。診察時間に紹介状をもらえない可能性もあります。

<目次>

病院の紹介状の費用・紹介状を利用するメリット

紹介状の利用には、いくつかのメリットがあります。たとえば、病院が変わるごとに基本的な情報を一から説明したり、何度も同じ検査を受けたりする手間を省くことができます。もちろん、すぐに治療という訳には行かず、適宜症状の問診や各種検査などが行われる場合もあります。また、定期検査を受けている場合には、検査の推移が治療する上で重要な情報になるため、引き続き、紹介状にその旨を書いてもらう必要があります。

続いて費用負担についてですが、紹介状にもやはり費用がかかってしまいます。紹介状は保険診療で2500円と決められているため、3割の自己負担であれば、750円になります。

ここで、紹介状なしで病院を受診した場合の費用負担について考えてみます。200床以上の一般病床を持つ病院に、診療所や他の病院からの文書による紹介なしで受診した場合、初診時には病院が決めた料金を支払う必要があります。患者に請求できる金額は、病院によって様々です。

また、平成28年4月からは、緊急でやむを得ない場合を除き、特定機能病院の指定を受けている病院や一般病床500床以上の地域医療支援病院、いわゆる大病院では、紹介状なしで初診を受ける場合、7000円以上の料金が必要になりました。つまり、紹介状なしに、200~500床の病院を紹介状なしで受診すると、病院によっては受診時の費用が予想以上に高くなる恐れがあり、500床以上の病院を受診した場合には、7000円以上の費用負担が課されるのです。

一方で、紹介状と区別すべきものとして「診断書」があります。医者から医者に向けて書く文書を紹介状と呼ぶのに対し、診断書は医者が医者以外の職種に向けて書く文書です。診断書と違い、紹介状には医療保険が適応されるため、診断書よりは安くなります。
 

病院の紹介状は見てもいいのか? 開封しても無効ではない?    

改ざん防止を目的に封をしているため、基本的に封を開けることはお勧めできません。開封することによって、内容の信頼性が下がってしまいます。また、紹介状に病院の宛先を記載し、切手を貼って郵送すると信書になるため、自分の情報が書かれているとはいえ、一般的には病院間の「宛名本人に開けてほしい」という意味の書類、親展という考え方になるのです。

どうしても内容が気になる場合は、医師に直接確認するのがよいでしょう。そもそも、紹介状は信頼関係の中で書いてもらうことが多いので、できればかかりつけ医で書いてもらい、信頼関係に準じて開封しないようにしましょう。時には、患者には説明しにくい部分が記載されているかもしれません。

ものは違いますが、受験の際に願書と一緒に提出する調査票を、書かれているのは自分の情報だからと開封したりはしませんよね。それと同じように扱うのがよいでしょう。
 

病院の紹介状の開封は法律違反? 信書開封罪になるのか

「病院の紹介状を開封すると法律違反になる」という話を、聞いたことがある方もいるかもしれません。これは、個人の秘密を保護するために刑法第133条で定められている「信書開封罪」のことでしょう。

刑法第133条では、「正当な理由がないのに、封をしてある信書を開けた者は、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。」と定められています。信書とは、特定の差出人から特定の受取人に宛てられた文書を指し、開封した時点で信書開封罪が成立します。しかし、親告罪ですので、法益が損なわれる被害者からの告訴がなければ起訴されません。

病院からの紹介状も信書と考えられ、中には患者の個人情報が書かれています。もし医療機関以外が開封して、患者が告訴すれば、信書開封罪になる可能性が高いと思われます。法益は紹介状に書かれている被害者のプライバシーですので、開封されることによる被害者は患者と考えられます。そのため、患者自身が開封した場合、信書開封罪で自分を告訴することはまずないでしょう。

では、書いた医師、宛先の医師が告訴することはあるのでしょうか?

これについては、書いた医師および宛先の医師の法益が損なわれる場合は告訴することが可能となります。しかし、患者自身が開封をしたとしても、医師の法益が損なわれる内容がないと一般的に考えられますので、告訴は難しいと考えられ、仮に告訴したとしても、起訴されない可能性が高いと思われます。つまり、告訴したからと言って、起訴されるわけではありません。起訴されなければ、裁判になりません。

※これは、行政書士資格保持者としての法律の一般的な考え方ですので、個々の案件については弁護士などに相談されることをお勧めします。

ただし、信書開封罪にならないからと言って、開封してしまうと、紹介状の信頼性が損なわれますので、患者自身の今後の治療に影響することになります。医師との信頼関係が開封により損なわれてしまいますので、決して開封しないようにしましょう。
 

紹介状の宛名と別の病院に持参して受診することは可能?

宛先と違う病院に紹介状を持っていくことは、基本的にはお勧めしません。もしも転院する病院が決まっていないのであれば、宛先をあえて記載しない紹介状を書くことも可能です。もし、宛先と違う病院に行く可能性がある場合は、宛先を入れない紹介状を書いてもらった方が無難です。

宛先と違う病院に紹介状を持って行っても、診察はしてもらえます。しかしその病院に該当する専門医がいなかったり、紹介状を無効と判断されたりすることもあります。また、宛先が異なるために、受け入れ先の病院がその受診理由を尋ねることがあるかもしれません。医療機関によっては紹介状なしの扱いになる可能性もあり、その場合は、500床以上の病院では7000円以上の初診時の費用がかかります。

紹介状自体も費用がかかりますので、できれば、宛先となる病院の決定はしっかりと医師と相談した上で書いてもらうのが良いでしょう。

転居の場合は、医師同士が知り合いで、この先生ならお願いできるということで紹介されることもあるので、可能な限り、宛名の医療機関を受診しましょう。遠方であったりしたり、専門外であった場合は、さらに近隣で良い医療機関を紹介してもらえる可能性があります。
 

初診の病院を紹介状希望だけで受診するのは避ける

病院の紹介状 紹介所は医師との信頼関係のうえで書かれるもの

紹介状は信頼関係の中で書かれた方がいいです


初診の病院を紹介状希望だけで受診する方もいるようですが、基本的にはお勧めしません。全く情報のない状態でも、その病院で診察し、必要であれば紹介状を書いてもらうことは可能かと思います。しかし、大病院を受診したいために、今まで診察したこともない医師に紹介状を書いてもらうための受診は、どうでしょうか? あまりお勧めできることではないことは自明かと思います。

紹介状の目的は、あくまでも「適切な情報提供」です。初診の病院の医師ではなく、信頼関係のある、かかりつけの医師に書いてもらうのが一番です。紹介先の病院との関係もスムーズになります。そういった意味でも、かかりつけの医師と信頼関係を築いておくことは、大切なことなのです。

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