扇風機の風を浴び続けて死ぬことってあるの?

扇風機

心地よい扇風機の風…。でも「あたりすぎると危険」というのは本当でしょうか?

心地よい扇風機の風……。でも、「夜寝るときにつけっぱなしにすると、知らないうちに体温が下がりすぎて低体温死する」「あたりすぎは体に悪い」という話もあるようです。

結論から言うと、日本では健康な人が扇風機の風を浴び続けても、体温が命を脅かすほど下がることはありません。

西洋医学とは哲学が異なりますが、東洋医学では体を冷やすことは悪いこととされています(悪いの意味は曖昧ですが……)。風を送って温度を下げる、冷ますという場合、実際に温度はどこまで下がるでしょうか? 気化熱を考えない場合、珈琲などの熱い飲み物は大体室温と同程度までは下がると考えられます。

できるだけ簡単な言い方をすると、ある温度と湿度で水蒸気が水になる温度を「露点温度」と呼びます。露点温度で身近なのは、雷雨時にガラスの内側に水滴が結露する現象です。気化熱を利用している場合、露点温度に達すると気化が止まるので、温度低下も止まります。扇風機を使っても、通常結露は起きていませんね。理論上は湿度計の湿球温度までが下がる温度だと考えられます。つまり、温度と湿度によりますが、扇風機を使えば室温よりも数℃低い温度まで、皮膚温を下げることが可能です。湿度が高い日本の夏、扇風機の風だけで体温がどんどん下がり続けて死亡するような現象は起きません。

都市伝説? 扇風機による突然死「FAN DEATH」の正体

また、体温と関係なく、扇風機にあたっている最中の突然死が気になっている人もいるようです。

一人暮らしの人が真夏の風呂上がりにビールや酎ハイを飲み、扇風機にあたっているときに突然死……。「亡くなった方の部屋では扇風機が動いたままだった」といった報道があると、扇風機使用中の突然死で、扇風機にも原因かのように思われてしまうかもしれません。

しかし、突然死の季節別・地域別の統計については結論を出すのが難しい面があります。全ての突然死に対して、必ずしも解剖が実施されるわけではなく、推定の部分が多いからです。夏という気候自体にも突然死のリスクは潜んでいます。例えば、夏の暑さはビールを美味しくしてくれますが、アルコールには利尿作用もあります。それでなくても脱水症をおこしやすい季節です。それによって脳梗塞が多いという傾向もあります。また、飲酒は脈拍数を増加させて不整脈を誘発することもわかっています。入浴が血圧は変動を与えるのも確かです。

そのため、「夏の風呂上り、飲酒中に扇風機にあたりながら突然死」というのは、医学的に考えると扇風機のせいというよりも、実際には上記のような他の原因の方が考えられると思います。脱水症は自覚がないこともあるので、予防法として「過信は禁物! 熱中症を招く「かくれ脱水」とは?」「熱中症・脱水症を防ぐ医学的な梅干の効用」もあわせてご覧ください。

寝るときの扇風機つけっぱなしは、腹痛・下痢の原因にも…

東洋医学的な用語で「寝冷え」という言葉があります。実は西洋医学では「寝冷え」という病気や症状はないのですが、消化器系の症状については西洋医学的解釈が可能です。眠ると体全体での熱産生が落ちます。血流の分布も変わり、皮膚への血流が増加します。つまり体全体として冷えやすい状態となります。冷えやすい状態で血流が変化すると、消化器系の血流も変化します。生理的な変化ですが血流の変化は、腹痛や下痢などを起こす機能性胃腸症に近い状態を引き起こす可能性があります。同様に、冷たい食べ物、かき氷などを食べても機能性胃腸症に似た状態が起きる可能性があります。

その意味では、夜寝るときに扇風機をつけっぱなしにして体全体を冷やし続けるのは、胃腸の健康のためには注意が必要かもしれません。

それでは次に、健康的な扇風機の使い方のコツをご紹介します。

扇風機の風で室内に快適な空気の流れを作る

夏の外気は、体温よりも高いことがあります。直射日光に曝されたアスファルトやコンクリートの上では、体温よりも高い空気が滞留しているかもしれません。汗の気化には湿度も関係しますが、体温よりも空気の温度が高いと、せっかくの気化熱を割り引いても、ひどい熱気として感じることになります。

一方で、室内であれば温度のコントロールはしやすいです。よほど日当たりのよい密閉された空間でない限り、夏場でも室内の温度は体温よりは低いことが多いでしょう。しかし、体温より温度が低くても、空気の流れのない場所では、自分自身の皮膚が周囲の空気を温めてしまうことになります。

温まってしまう空気と周りの空気を簡単に入れ替えられるのが扇風機です。風を作って送ることで体が体温よりも冷たい空気と接することができ、快適な環境を作ることができます。

扇風機2台使い&換気扇活用で、効率よく体感温度を下げる

建物の構造によっては窓を開けられないこともありますが、外気温が室温よりも涼しい場合、外の空気を上手に取り入れない手はありません。室温や外気温が 40℃を超えるような場合は別ですが、「外気温<室温<体温」が成り立つ場合、2台の扇風機を使うことで、より効率よく室内を涼しくすることも可能です。

まず、室内の熱気を外に出すために、一台の扇風機を窓を開けて外向きに使います。扇風機は羽の後ろの空気を吸い込んで前方に送り出す構造です。別の窓を開けておいて空気の通り道を作ります。さらにもう一台の扇風機で、体に風を送ります。ヒートアイランドが起きているような地域では難しいですが、涼しい外気を取り入れつつ、体温を下げることができます。自宅のようにキッチンがある室内なら、換気扇を使って熱気を外に出しながら扇風機を使うと、蒸気の扇風機の 2台使いと同様の効果を得ることが可能です。

併用がポイント! エアコンと扇風機の上手な使い方

涼しさでけでは冷えませんね!

涼しさだけでは冷えませんね!

エアコンを使って室内犬や猫を飼っている方は御存知のはずですが、ペットは冷気が集まる涼しい場所に陣取るはずです。エアコンからの冷気は冷やしたい空間に届くとは限りません。溜まった冷気を拡散させるのに扇風機は役に立ちます。エアコンの吹き出しから遠い場所に冷気を送ることも可能です。熱帯夜の場合、エアコンと扇風機を併用すれば、温度設定を数℃上げることができるので、節電効果も期待できます。

都心ではヒートアイランド現象があるので団扇と浴衣による夕涼みは死語となって夜もエアコンが必要な状態です。一般家庭にエアコンが普及してそれほど経っていません。自然の風でありませんが扇風機を使って風による気化熱で体温を冷やす方が日本の自然の状態に近いという考えも成り立ちます。

扇風機の効果的な使い方については以上です。

最後に、補足的になりますが扇風機に関するトリビアと、哺乳類が体温を下げる仕組みについても解説します。少し専門的ですが、興味のある方はご覧下さい。

扇風機を発明した人は誰?

機械の場合、設計を考えた人と製品を完成させた人、普及に貢献した人が登場します。技術力が伴わないと完成品はできず、価値に相当した価格の製品ができないと普及しないからです。

扇風機に関しては19世紀後半にトーマス・エジソンが発明したという説が有力です。

哺乳類は空冷式?水冷式?

そもそも「空冷式」「水冷式」とは、本来は機械に関して使う用語ですが、哺乳類の場合はどちらに当てはまるでしょうか?

ヒトは恒温動物で、血液温度を一定に保っています。発汗して汗が蒸発する時に、必要な気化熱相当分、その部位の皮膚温度が下がります。このため、当てはめるならば空冷式と考えてよいでしょう。

身近な哺乳類である犬は、汗腺が未発達なので体温を下げたい時は舌を出しています。一方で馬は汗腺が発達してるので、競馬中継などで走り終わった馬を見ると毛から湯気がたっているように見えます。扇風機の話から逸れますが、水冷式に近いのがイルカや鯨などの海獣系の血管系(特に雄の生殖器系)を冷やす機構です。皮膚に近い部分に血液を送って冷してから、生殖器の周囲に戻す血管系があるためです。
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