ルールはどのようにできるのか?

「法律とは何なのか?」を考えるために、まずは「ルールはどのようにできるのか?」ということから考えていきましょう。

誰でも縛られたことがあるルールに、学校の「校則」があります。校則は、法律とかけ離れているように思えますが、実は仕組みは法律と同じなのです。
みなさんが通っていた学校に「髪を染めてはいけない」という校則はありましたでしょうか。あった人となかった人がいるかと思います。この校則があるかないかの違いは、その学校で過去に「髪を染める学生が多かったか少なかったか」です。髪を染める学生が多ければ、風紀や秩序を維持するために「髪を染めてはいけない」という校則を作る必要があります。それに対して、そのような学生がほとんどいないのであれば、校則を作る必要はありません。


校則ができる仕組み

校則ができる仕組み



つまり、「髪を染めてはいけない」というルールは、髪を染める学生が多いという「具体的な事実」が最初にあり、できたものなのです。

また、髪の染め方も色々とあったでしょう。茶髪にする人もいれば、金髪にする人もいますし、アッシュにする人もいます。「茶髪にしてはいけない」という校則だと、「金髪ならいいんだよね?」という学生が現れますので、「髪を染めてはいけない」という抽象的な校則にするわけです。


法律も同じ仕組み

法律も、この校則と同じ仕組みでできています。

たとえば、2016年12月にストーカー規制法(正式名称は「ストーカー行為等の規制等に関する法律」)が改正され、拒まれたにもかかわらずSNS上での書き込みを行った場合もストーカー規制法の対象となりました。これまでは、電話、FAXの送信、電子メールの送信は対象でしたが、SNS上での書き込みはストーカー規制法の対象になっていませんでした。改正されたのは、2016年5月に東京の小金井市で、芸能活動をしていた女子大生が、Twitterで執拗な書き込みをされた上、ライブハウスの前で数十箇所を刺されるという痛ましい事件がきっかけです。この事件を記憶している方は、多いと思います。

このように、「具体的な事実」があり、規制する「抽象的な法律」ができます。法学においては、立法の基礎となるこのような事実を「立法事実」といいます。

また、このストーカー規制法も、Twitterの書き込みだけを規制するのではなく、「特定の個人がその入力する情報を電気通信を利用して第三者に閲覧させることに付随して、その第三者が当該個人に対し情報を伝達することができる機能が提供されるものの当該機能を利用する行為をすること」(改正ストーカー規制法2条2項2号)としています。法律の条文はわかりにくいですが、Twitterに限定されているわけではないため、Facebookやブログの書き込みなども対象となるということです。抽象的な法律にしているわけです。

法律の仕組み

法律の仕組み



事象を抽象化するのが学問

このように、具体的ないくつもの事実に対応できるよう、抽象化して作られるのが法律なのですが、ここで「学問とは何か?」という根本的な問題に戻って考えてみましょう。

学問とは、いくつもある事象に共通点がないかを考え、その共通点を見つける(抽象化する)ことであるといえます。科学は、まさにそうですね。偶然に起きているように見える自然現象に何か共通点がないかを探すのが科学です。

こう聞くと難しく聞こえるかもしれませんが、みなさんが学校で学んだことも同じです。
たとえば、小学校で三角形の面積を求める公式「底辺 × 高さ ÷ 2」を学びましたよね。この公式に当てはめれば、どのような三角形であっても、面積を求めることができます。つまり、いくつもある三角形の面積を求めることができる共通点(抽象化したもの)が、この公式なのです。

これが「学問」です。
大学教授が研究している難しい学問であっても、小学校で学ぶ三角形の面積であっても、していることは同じなのです。
つまり、何かを学習するとき、共通点を見つけようとしていなければ(抽象化しようとしていなければ)、それは勉強をしていることにはならないのです。法律の学習で、「単に過去問を繰り返し解いて、その問題と答えを記憶する」ということをする人が多いのですが、これは勉強ではありません。

常に共通点を見つけられないか(抽象化できないか)を考えることが、学問であり、法律の勉強です。