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メルカリ問題―RMTがゲーム業界にとって困る理由

みなさんは、オンラインゲームのアカウントを誰かに売ったり、誰かに買ったりしたことはありますか? 実は、スマートフォン向けフリマアプリ「メルカリ」が、2016年7月から、ゲームアカウントの売買を解禁していたことが問題になっています。

田下 広夢

執筆者:田下 広夢

ゲーム業界ニュースガイド

急にゲームアカウントの取引をOKにしたフリマアプリ

メルカリの図

メルカリには現在も、ゲームアカウントの出品があります

みなさんは、オンラインゲームのアカウントを誰かに売ったり、誰かに買ったりしたことはありますか? 実は、スマートフォン向けフリマアプリ「メルカリ」が、2016年7月から、ゲームアカウントの売買を解禁していたことが問題になっています。

メルカリでは元々、利用規約の「第9条 商品の出品 2.出品禁止商品」にて「(15)物品ではないもの(情報、サービスの提供、会員権などの権利を含むがこれに限られないものとします)」として、ゲームアカウントの売買を禁止していました。というか、実は現在でも利用規約自体は変わっていません。しかし、2016年7月にアプリのガイド内にある「ルールとマナー」の「禁止されている出品物」において「・実体の無い商品(サービスや無形商品、ゲームのアイテム・アカウントなど)」とされていた部分を「・物品ではないもの(情報、サービスの提供等)」に変更することで、ゲームアカウントの売買を可能にした、としています。

7月に解禁というと、Nianticが運営する人気ゲームアプリの「ポケモンGO」のリリースに近く、ポケモンGOのアカウント売買需要を見込んだのではないか、とも考えられています。

さて、ゲームアカウントの売買なんですが、そもそも、今までダメだったの? なんで売買しちゃいけないの? と思う方もいらっしゃるかもしれません。そこら辺の事情についてお話してみたいと思います。

ゲーム側の規約で禁止されている

ポケモンGOの図

もちろんポケモンGOも、アカウントを誰かにあげたり、売ったりすることはできません。

なんでゲームのアカウントを売買が問題になるのか。これは簡単で、ゲームの利用規約で禁止されているからです。厳密には、禁止されているかどうかはそれぞれのゲームの利用規約を確認してみなければ分かりません。ですから、もしアカウントを売ろうとか、買おうと考えた時には、まずそのゲームの利用規約を確認してみてください。おそらくほとんどのゲームで、第三者にあげることも、貸すことも、禁止しているかと思います。

利用規約というのは、サービスなどを提供する側と利用する側でかわす約束ごとです。当たり前のことですが、その約束を一方的に破ることには問題があります。

もし、利用規約を破ってアカウントの売買をするとどうなるのか。現実的に起こり得ることとしては、アカウントの凍結、停止等が考えられます。つまり、お金を払って、人気キャラクターなどをたくさん抱えたアカウントを買ったのに、そのアカウントが利用規約によって停止されて使えなくなってしまった、というようなことが起こる可能性があるということです。また、何も知らずにアカウントを売って、売った先で結局使えなくなり、それがトラブルになるということもあり得るでしょう。いずれにせよ、買うのも、売るのも、全くオススメしません。

なぜ、ゲームメーカーは、こういったオンラインゲームのカウントやアイテムの売買を禁止しているのでしょうか?

RMTでゲームメーカーが負うリスク

パズドラの図

アカウントやアイテムが売買されることは、それだけでゲームにとって非常に大きなリスクになります

こういった、オンラインゲームなどアカウントやアイテムを、現実のお金で取引する行為をリアルマネートレード(以下RMT)と言います。RMTはオンラインゲームの運営に悪影響があるとして、多くのメーカーは強い姿勢で排除に努めています。

RMTがゲームに及ぼす悪影響はたくさんあるのですが、昨今のモバイル端末向けゲームアプリの状況を考えると、RMTがあることでゲームが賭博罪に抵触するリスクがある、ということが大きく挙げられるかもしれません。

2016年9月20日に内閣府消費者委員会が発表した「スマホゲームに関する消費者問題についての意見」に興味深い部分があります。ゲーム業界ニュースでも取り上げていますので、興味があれば読んでいただきたいのですが、ここでは賭博とRMTに関する一部分のみ、以下に引用します。

実際に電子くじが賭博罪に該当するか否かについては、上記「財産上の利益」該当性に加え、「一時の娯楽に供する物」該当性等も含め、事案ごとに判断されるものである。電子くじで得られたアイテム等を換金するシステムを事業者が提供しているような場合や利用者が換金を目的としてゲームを利用する場合は、「財産上の利益」に該当する可能性があり、ひいては賭博罪に該当する可能性が高くなると考えられる。
【関連サイト】
スマホゲームに関する消費者問題についての意見(内閣府公式サイト PDF資料)

【関連記事】
内閣府はスマホゲームの問題をどう見ているか?(AllAboutゲーム業界ニュース)

つまり、RMTがあって、これを目的としてゲームが利用されると、賭博罪に該当する可能性が高くなるということです。これ以外にも、現金が絡むことによって、ゲームへの不正アクセスが増えたり、希少なアイテムを独占しようとする業者が現れたり、それによってゲームサーバーにトラブルが発生したり、ゲーム内のバランスが崩れたりと、オンラインゲームの運営にはリスクが非常に大きく、ほとんどのゲームで利用規約によって禁止されています。

あんしん・あんぜんなお取引ができるはずでは

トラブルに巻き込まれた図

せっかく買ったのに使えない…なんてトラブルに巻き込まれることのないように(イラスト 橋本モチチ)

さて、ゲームメーカーにとって非常にリスクの高いRMTなんですが、これが違法行為なのかというお話もしておく必要があるかと思います。実は、RMTが違法行為なのかというのはとても難しいんですね。というのも、RMT自体を取り締まる法律というのは存在しないんです。

例えば、RMTが目的でゲームのサーバーに不正なアクセスをすれば当然違法行為となります。しかし、それはRMTそのものを取り締まっているわけではないですよね。メルカリは仲介をしているだけで、ゲームに対して直接何かをしているわけではありません。ゲームメーカーにとって非常に困った存在ですが、違法行為をしていると言えるかというと、これは相当に難しいと思います。

では、ゲームメーカーにとっては困った存在だけど、違法ではないからメルカリのやっていることに問題はないのでしょうか? ガイドはそうは考えません。RMTはほとんどのオンラインゲームで利用規約によって禁止されているわけで、利用規約を破って取引をすることにはユーザーにリスクがあります。利用規約を破って取引すれば、アカウント停止などの処置が起きる可能性があります。金銭のやり取りをした後に、商品が使い物にならなくなるリスクがあるとすれば、それはトラブルの原因になります。

メルカリも、この点について全く認識していないということはないでしょう。だからこそ、元々はメルカリ自身の利用規約によって売買を禁止していたのです。それなのに、ポケモンGOのリリースに近いタイミングで、わざわざ解禁しているわけです。ほとんどのオンラインゲームでRMTを禁止していることを考えれば、出品者はみんなゲームの利用規約に違反し、購入者は違反アカウントを買わされることになります。

トラブルに見舞われて1番困るのは誰でしょうか。意図的に利用規約を破っている悪質なユーザーは、ゲームメーカーが頑張って特定して、アカウント停止などの処分をすればそれでいいのかもしれません。しかし、そういった悪質なユーザーから、詳しい利用規約やRMTがどんな影響を持っているかなどを知らずに買ってしまった人は、どうすればいいのでしょうか? せっかくかったアカウントが凍結されてしまったら? 売っているのは違反アカウントばかりなのです。

メルカリの公式サイトを見てみると、そこには「メルカリは、かんたんに売り買いができて、あんしん・あんぜんなお取引ができるフリマアプリです。」と書かれています。本当にそうでしょうか? ガイドは、メルカリは安心して取引できるサイトだとは思いません。ユーザーを守る姿勢が見られないからです。ぜひメルカリには、もう一度この件について考えなおしていただいて、安心、そして安全な取引の為、ユーザーに誠実な対応をして欲しいと願います。

また、ユーザーのみなさんには、メルカリに限らず、オンラインゲームのアカウントや、アイテムを、売ったり、買ったりしようと思ったら、まずはそのゲームの利用規約を確認することを強くオススメします。ほとんどのゲームで禁止されている行為であり、その結果トラブルを招く可能性があるということを、認識していただきたい次第です。

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