“記憶術”とは何か?

トランプ

記憶術は原始の記憶を活用する

「でも、トランプのカードの並びをあっと言う間に覚えたり、円周率を何十万ケタも記憶したり、特殊な記憶“術”はあるんでしょう? それを教えてください!」
という人がいるかもしれません。

確かに「記憶術」というテクニックはあります。実際、非常に強力です。

ただし、これに過大な期待を持つのは禁物です。なぜなら、あなたが記憶したいであろう、抽象的な大量の知識を記憶するのには向いていないのです。

これは、われわれ人間がまだ抽象的な大量の知識を扱う前、日々の食料を得たり、天敵から身を守ったりするために必死だった時代に鍛えられた記憶を活用する方法だからです。

その記憶とは「具体的なイメージ」「場所・空間」です。「記憶術」と言われるものは、ほぼ例外なくこの二つの要素を活用しているのです。

たとえば、教科書やテキストに書かれている抽象的な知識と、あなたが実際に見たり、触れたりできる具体的なモノとどちらが記憶しやすいかというと、後者ですね。具体的なモノのほうが五感と結びつくため記憶しやすくなります。歴史的に考えても、具体的なモノとの付き合いに比べて、われわれの抽象的な知識との付き合いは浅く、慣れていないのです。

「記憶術」はわれわれが具体的なモノを記憶しやすい特性を活かして、トランプの数字やマークといった抽象的な記号を具体的なイメージに変換して記憶していきます。ただ、これによって扱う情報量は増えざるをえません。

52枚のトランプのカードはもちろん、円周率の何十万ケタといっても、われわれが試験で記憶する必要がある知識に比べれば、もともと圧倒的に少ない情報量ですから、「具体的イメージに変換」しても支障はありません。しかし……なわけです。

もう一つ、記憶術は覚えたい情報を場所に結びつけることで記憶していきます。たとえば、トランプのカードの1枚めの数字・マークを具体的なイメージに変換し、それを家の玄関に結びつけ、同じように2枚めは玄関から出た門に結びつけるといった具合です。

これは、われわれ人間はサバイバルするために、エサがある場所、危険な動物がいる場所を記憶することが求められたため、場所に関する記憶力は発達しており、それを活用しているのです。記憶しやすい「場所」に覚えたいモノを結びつけることで、素早く記憶することが可能になるのです。

ただ、場所の記憶がすぐれているといっても、われわれが記憶したい抽象的な知識すべてをいちいち場所に結びつけるのは本末転倒で非効率になります。

記憶術は万能ではなく、このような限界があるのです。これを踏まえたうえで、勉強の柱となる目次項目に絞って覚えたり、なかなか覚えられないものに限ったりして、ピンポイントで活用することが重要です。

最高の「記憶術」とは?

では、われわれが仕事や試験で求められる抽象的で大量の知識はどう記憶すればいいのでしょうか?

基本は最初にもお伝えした記憶の本質である「結びつき」です。

よく、「丸暗記」はダメだと言われます。これは、とにかく「入れる」「詰め込む」ことしかしないで、結びつきを無視するため記憶できないのです。

大事なことは「結びつき」をつくること。

そして、この結びつきの「型」には大きくわけて2つあります。一つは「物語」。時系列に原因と結果、因果関係で結びついている形です。

そしてもう一つは「階層(ピラミッド)構造」。空間的に上から下にだんだんと広がり、下から上にだんだんとまとまる形で、抽象と具体、目的と手段といった関係で結びついている形です。教科書やテキストなど、知識を整理した本の目次を思い浮かべてもらえるとわかるといいでしょう。

人間が一度に処理できる情報には限りがありますが、だんだんと細かく枝分かれしていく階層構造により、その限界を乗り越え、大量の知識に対して無理なく結びつきを作ることが可能になるのです。

ですから、記憶しなければならない情報・知識に対して、焦って頭の中に入れよう、詰め込もうとするのではなく、時系列や因果関係で整理したり、階層構造に整理したりして、結びつきをとにかく作っていきましょう。

これは「理解」につながっていきます。あなたが「わかった!」というときの体験を振り返ってもらうと、そこには何かと何かが結びついたことがあるでしょう。

実は記憶と同じように理解も「結びつき」であり、最高の「記憶術」とは「理解」することなのです。

いかがでしょう?

これが記憶と記憶術の全貌であり、世の中の記憶術はここからの派生にすぎません。まずはこの記事に書かれたことをしっかり理解・記憶しておけば、もう記憶術に迷うことはなくなります。

くり返し読んで、あなたの記憶に結びつけてください!


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