不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

平成28年度「住宅ストック循環支援事業」のポイント

平成28年度第2次補正予算による「住宅ストック循環支援事業」が始まります。主に既存住宅を対象とし、最大で65万円の補助金が交付される今回の制度がどのようなものなのか、主なポイントを確認しておくようにしましょう。

執筆者:平野 雅之


リフォーム工事中の住宅

既存住宅の活用がこれからの大きな課題になっている

平成28年度第2次補正予算が10月11日に成立し、住宅関連では新たに「住宅ストック循環支援事業」がスタートすることになりました。これは一定の既存住宅(中古住宅)購入、エコリフォーム、エコ住宅への建替えに対して補助をするもので、予算は250億円が計上されています。

補助金の交付申請期限は平成29年6月30日まで(予算額に達した場合は前倒しして締め切られる場合あり)となっており、実質的に半年あまりの措置ですが、ちょうどこれからのタイミングで住宅の購入やリフォームを検討している人はうまく活用するようにしましょう。

ただし、既存住宅の購入では年齢要件などもありますから、制度のポイントを理解したうえで、不動産業者やリフォーム事業者などに適用の可否をしっかりと確認することが欠かせません。


「住宅ストック循環支援事業」による制度は3つ

新たに始まる「住宅ストック循環支援事業」では、自ら居住する住宅について次の3つの制度が用意されています。

1.住宅のエコリフォーム
2.良質な既存住宅の購入(買取再販、個人間売買)
3.エコ住宅への建替え

このうち「良質な既存住宅の購入」は若い世代の住宅購入を支援することが目的となっており、補正予算が成立した平成28年10月11日時点で40歳未満の購入者が対象となります。他の2つの制度において年齢制限はありません。

なお、補助金の交付申請手続きはそれぞれの事業者が国(事務局)に対して行ない、補助金は事業者へ交付された後に住宅の所有者・購入者などへ全額が還元される仕組みとなっています。実際に補助金を手にするまで、少し期間がかかる場合もあるでしょう。

制度の詳しい内容については、住宅ストック循環支援事業事務局のホームページ(平成28年11月1日開設予定)をご参照ください。


住宅のエコリフォームにおける補助限度額は30万円

以前に実施された「住宅エコポイント」制度に似た内容となっており、一定の断熱改修や設備エコ改修、それと併せて実施するバリアフリー改修や耐震改修、リフォーム瑕疵保険への加入などに対して、1戸あたり30万円(耐震改修をする場合は45万円)を限度に補助がされます。

ただし、エコリフォームの対象工事や内容、部位に応じて補助額の単価が定められており、実際にかかった工事費用に対する補助率ではありません。詳しい内容や補助金額についてはリフォーム事業者に確認してください。

対象となるのは「自ら居住する住宅におけるエコリフォーム」ですが、平成28年10月11日以降に「自ら居住する住宅」として既存住宅(中古住宅)を購入し、エコリフォームをする場合も含まれます。

なお、補助金を受けるためには、あらかじめこの制度に対する事業者登録をしたリフォーム事業者に工事を発注(事業者登録後に工事着手)することが必要です。この事業者登録は平成28年11月1日に受付がスタートし、平成29年3月31日に締め切られることになっています。

また、平成29年6月30日までに補助金の交付申請(リフォーム工事請負契約締結後)をしたうえで、遅くとも平成29年12月31日までに工事が完了し、事業者から完了報告がされるものでなければなりません。

さらに、エコリフォーム工事後の住宅が耐震性を有していなければなりませんが、耐震改修工事をしない場合は、建築確認の日付が昭和56年6月1日以降であること、または建物の表示登記が昭和58年4月1日以降であること、あるいは建築士が確認して証明することなどが求められます。


良質な既存住宅の購入における補助限度額は50万円

上記のとおり「平成28年10月11日時点で40歳未満の人」(住民票で確認します)が、一定のインスペクションを実施したうえで既存住宅売買瑕疵保険が付保される既存住宅(中古住宅)を購入する場合に、1戸あたり50万円(耐震改修をする場合は65万円)を限度に補助がされます。

ただし、補助額はインスペクション費用に対して1戸あたり5万円であり、それ以外の部分はエコリフォームの内容に応じて加算されるため、もともとリフォームが不要な築浅の既存住宅を購入する場合には、大きな補助金額にはなりません。

宅地建物取引業者が売主となる既存住宅(買取再販物件)を購入するときは、あらかじめ売主業者が実施したエコリフォームの内容に応じた補助額となり、この場合でもインスペクションの実施と瑕疵保険への加入が要件となります。

また、個人が売主となる既存住宅を購入するときには、インスペクション事業者が事業者登録をしたうえで、既存住宅売買瑕疵保険の加入者となることのできるインスペクション事業者(検査事業者)であることが求められます。詳しくは仲介業者に確認してください。

宅地建物取引業者が売主となる既存住宅(買取再販物件)の場合には、売主業者が事業者登録をしたうえで、その対象物件について「事業登録」(平成28年12月12日~平成29年3月31日)をしていることが要件です。

買取再販物件のすべてが対象となるわけではありませんから、事前にしっかりと確認するようにしましょう。

さらに、どちらの場合でも遅くとも平成29年6月30日までに売買契約を締結したうえで、同日までに事業者から補助金交付申請を行ない、遅くとも平成29年12月31日までに引き渡しを受けるとともに事業者から完了報告を済ませなければなりません。


エコ住宅への建替えにおける補助限度額は50万円

「耐震性を有しない住宅」を除却したうえでエコ住宅を建築する場合に、1戸あたり50万円を限度に補助がされます。補助額は建替え後の住宅における性能レベルに応じて30万円、40万円、50万円のいずれかです。

旧建物については、建築確認が昭和56年5月31日以前、または表示登記が昭和58年3月31日以前のときには、補正予算成立日の1年前にあたる平成27年10月12日以降に除却した場合も対象になります。

それ以外の旧建物は、平成28年11月1日以降に建築士が「耐震性のないこと」を確認したうえで除却するものでなければなりません。

ただし、平成23年以降の災害により市町村長から「全壊」の罹災証明書が交付されるなど一定の場合(個人が注文住宅を建てるとき)には滅失、解体の時期を問わないことになっています。

宅地建物取引業者による分譲住宅と個人による注文住宅のどちらも対象になりますが、分譲住宅の場合は宅地建物取引業者、注文住宅の場合は建設業者が事業者登録をした後に建築工事に着手するものでなければなりません。

また、分譲住宅の場合には事業者登録とは別に、その住宅についての「事業登録」(平成28年12月12日~平成29年3月31日)も必要です。

分譲住宅の場合は物件の「事業登録」がされてから平成29年6月30日までに売買契約、注文住宅の場合は「事業者登録」がされてから平成29年6月30日までに工事請負契約を締結したうえで、遅くとも平成29年12月31日までに引き渡しを受けるとともに事業者から完了報告を済ませなければなりません。

なお、旧建物の解体工事に関する請負契約については、 建替え後が分譲住宅の場合は平成29年3月31日まで、注文住宅の場合は平成29年6月30日までの期限が設けられています。

補正予算にもとづく制度であること、予算額が比較的少ないことなどから、スケジュールはかなりタイトな印象も否めません。補助金を受けるために妥協をして、不十分な打ち合わせのままに契約をすることは避けるべきですが、活用できるものはよく確認しておくようにしましょう。


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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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