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夫婦共働きで収入アップを阻む「4つの壁」

「夫婦共働きで収入をアップさせよう!」と簡単に言うけれども、現実はそんなに甘くはない。夫婦共働きで収入アップを阻む4つの壁とは何か?その壁を乗り越える方法は?

平野 泰嗣

執筆者:平野 泰嗣

ふたりで学ぶマネー術ガイド

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第1の壁:「収入調整の壁」

夫婦共働きで収入アップを阻む4つの壁とは何か?

夫婦共働きで収入アップを阻む4つの壁とは何か?

夫婦共働きで収入アップを阻む1つ目の壁は、「収入調整の壁」です。所得税の配偶者控除の適用の可否が決まる「年収103万円の壁」、社会保険の被扶養者になれる範囲の「年収130万円の壁」です。この壁を超えると、税金が増えたり、年金や健康保険などの社会保険料を自分で払わなくてはならなくなったりして、世帯年収が減るということで、「壁を超えないようにしよう」という意識が自然に働くのです。

現在、女性活躍推進という旗印のもと、「年収103万円の壁」の原因になっている配偶者控除の見直し(廃止)が検討され、「年収103万円の壁」を取り外す動きが出ています。
配偶者控除見直しで、夫婦の働き方どう変わる?

また、社会保険料の適用についても見直しが行われ、平成28年10月から、従業員501名以上の企業で働くパートタイム労働者について、一定の要件を満たす年収106万円(月8.8万円)の人も社会保険に加入するように改正され、新たに「年収106万円の壁」が生まれました。
130万円から106万円の壁に、パート手取りはどうなる?

第2の壁:「時間の壁」

夫婦共働きで収入アップを阻む2つ目の壁は、「時間の壁」です。「年収103万円の壁」を超えるために必要な労働時間を時給900円として(平成28年の全国の最低賃金の加重平均は823円)計算すると、年間1144時間、月間95.3時間になります。1日4時間のパートをするとした場合、月間23日働く必要があり、土日を除いて毎日働くことになります。

平成23年社会生活基本調査より、妻の生活時間(一週全体)を見ると、1日のうち、家事・育児に取られる時間が多く、就労時間が確保できないというのが現実です。特に就学前の小さな子どもがいる家庭の場合、その傾向が強く表れます。

「平成23年社会生活基本調査undefined生活時間に関する結果(要約)」より転載

「平成23年社会生活基本調査 生活時間に関する結果(要約)」より転載

※用語の説明
○1次活動:睡眠・食事など生理的に必要な活動
○2次活動:仕事・家事など社会生活を営む上で義務的な性格の強い活動
○3次活動:1次活動・2次活動以外で各人が自由に使える時間における活動

第3の壁:「キャリアの壁」

夫婦共働きで収入アップを阻む3つ目の壁は、「キャリアの壁」です。年収を考えると、一般的には、正社員、契約社員、派遣社員、パート社員の順に高くなります。契約社員や正社員の場合、フルタイムが基本なので、「時間の壁」をクリアすることが前提となる上に、即戦力であることが期待されます。一度、出産退職してから、子育てが落ち着くまで10年近くブランクがあると、キャリアが中断・低下してしまい、即戦力として働くことは難しいですし、実際に本人としても自身が持てずに敬遠してしまうこともあるでしょう。

パートと派遣社員も時給ベースで1.5倍くらいの差がありますが、派遣社員として登録する場合、過去に正社員であったなどの就労経験のある人が優先されます。学校卒業後、家事手伝いやフリーターを経験して結婚した場合、派遣労働者として登録することも「キャリアの壁」によって阻まれてしまうことも多いのです。

第4の壁:「夫婦の価値観の壁」&「世間の目の壁」

夫婦共働きで収入アップを阻む4つ目の壁は、「夫婦の価値観の壁」&「世間の目の壁」です。よく、昭和の時代の価値観として、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という考え方がありました。その価値観について、「平成26年度 女性の活躍推進に関する世論調査」で見ると、男性は、肯定派46.5%で否定派46.5%、女性は、賛成派43.2%で否定派51.6%となっています。

妻が、「家計を支えるために働きたい」と言っても、夫は、「僕が働いているんだから、君は、家事や子育てをしっかりやってほしい」と反対したり、逆に、夫の方から、「家計のことを考えると、君も働いてくれないか」(男性として、なかなか言えないかもしれませんが……)と言うと、妻の方が、「きちんと子育てをしたいし、家のことで手一杯だから働くのは無理」と言って反対されることもあります。

また、年代的にも意識差が大きく、60代、70歳以上になると、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」に対する肯定派の割合が増える傾向にあります。そうすると、親や親戚などから、共働きを続けていると、「子育てや家事をちゃんとしているの?」、「旦那さんの給料だけじゃ、やっていけないの?」というような、あまり言われなくないことを言ってくる人もいます。

「平成26年度 女性の活躍推進に関する世論調査」(内閣府)より、ガイド平野がグラフ作成

「平成26年度 女性の活躍推進に関する世論調査」(内閣府)より、ガイド平野がグラフ作成


4つの壁を夫婦で乗り越えるには?

■夫婦間でライフプランを描き、家計・家事・育児の運営方法について方針を決める
実際のFP相談の場面でも、妻の働き方に関する相談は多いです。マイホームの購入に合わせて、ライフプランを作る中で、子どもが生まれて、小学校に入る頃までは、育児に専念して、小学校に入る頃から、パートか派遣で家計を支える方法と、育児休職を取って、正社員を続けた場合の将来の家計はどのように変わるのか、比較してほしいというものです。

金額の面で見ると、育児休職を取って、正社員を続けた方が圧倒的に有利なことは言うまでもありません。けれども、正社員どうしの共働きを続けるには、家事・育児・親戚づきあい、その他、相当な努力が必要になります。もちろん、正社員・パート社員の共働きの場合も、片働きの場合も、それらのことを夫婦協働体制で行うことは言うまでもありません。

いずれにせよ、夫婦間で長い目で見たライフプランを描き、その上で家計をどうするのかという「お金の視点」、そして、目標とした家計を維持するために必要なことは何か、環境づくり、体制づくり、役割分担などの具体的に実行するための「アクションプランの視点」で、夫婦間で意識を共有することが重要です。

そうすれば、収入調整となる年収の壁の問題もあまり大きな問題ではないことに気づくはずです。「時間の壁」は、夫婦でどう役割分担するのか、時間を創出する方法はないか?(家電や外部サービスなどのフル活用)「キャリアの壁」は、キャリアを維持するために協力できることはないか、資格取得など資金面や時間の確保で協力できないかなど。

ライフプランをベースにアクションプランに落とし込んでいく段階で、夫婦間で「一緒に壁を乗り越えよう」という気持ちが芽生えるので、夫婦間の価値観の壁も自然に乗り越えられるでしょう。

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