寺・神社/東海・甲信越・北陸の寺・神社

ウィークエンドパスで行く長野県の神社仏閣(2ページ目)

長野県は、夏は避暑地、冬はスキーで人気のリゾート地ですが、実は、神社仏閣をはじめとする歴史的な文化財が多いエリアでもあります。今回は、JRのウィークエンドパスを使って、信州の鎌倉と呼ばれる別所温泉、善光寺の宿坊体験、安曇野と信濃大町の神社仏閣を訪ねました。

吉田 さらさ

執筆者:吉田 さらさ

寺・神社ガイド

旅レポート2日目:まずは善光寺でお朝事に参列

善光寺本堂では、毎朝、「お朝事」と呼ばれるお勤めが行われます。開始時間は、夜明け時間に合わせて刻一刻と変化し、日が長い6月後半から夏場は、5時半から始まります。お朝事は宿坊ごとに集まって出かけます。宿坊は、昔から、お寺と参拝者の取次ぎをする役目を持っていたからです。宿坊を出発するのは5時15分ごろ。まずは境内に整列して、ご住職などの僧侶がお出ましになるのを待ちます。善光寺には、男女二人のご住職がおられ、集まった参拝者の頭を手に持ったお数珠で撫でてくださいます。「お数珠頂戴」と呼ばれる善光寺ならではの風習です。
お朝事の前の「お数珠頂戴」は

お朝事の前の「お数珠頂戴」

続いて本堂内で読経が行われます。善光寺は特定の宗派に属しませんが、天台宗と浄土宗の2つの宗派の僧侶によって護持されており、それぞれの宗派が順にお勤めを行うため、少し長めで1時間ほどかかります。その後、これもまた善光寺名物であるお戒壇めぐりをします。

お戒壇めぐりとは、ご本尊が安置されている場所の床下に設けられた回廊を巡り、中程に懸かる極楽の錠前に触れ、真上のご本尊とご縁を結ぶものです。これは、経験した方ならご存知と思いますが、すごく怖いです。何せ、その地下回廊は、ホンモノの真っ暗闇ですから。しかし、これをすると極楽往生できると言われているので、ぜひ一度やってみてください。

その後、宿坊に帰ってこれまた美味しい朝ごはんをいただきます。善光寺は参道にもお店がたくさんあって、時間に余裕があるならお土産ハンティングをしたいところなのですが、今回は、安曇野でサイクリングをする予定なので、急ぎチェックアウトし、長野駅に向かいました。

信濃大町は見所多し

篠ノ井線で松本駅に行き、大糸線に乗り換えて信濃大町駅へ。大糸線は、安曇野の田園地帯を走る素敵なローカル線で、地元の高校生などの利用も多い路線です。窓の外には、まだ雪が残る北アルプスの峰々がくっきり見え、まるで絵のような美しさに息を飲みます。ああ、これぞ信州!
大糸線の車窓からの風景。撮影は6月上旬。まだ雪が残っています

大糸線の車窓からの風景。撮影は6月上旬。まだ雪が残っています

信濃大町は昔の街道沿いの古い町です

信濃大町は昔の街道沿いの古い町です

本日最初の目的地は信濃大町。立山や黒部ダムに出かける観光の基地として有名ですが、実は、この町そのものも歴史が古く、見所がたくさんあります。駅前でレンタサイクルを借りて、探索に出かけましょう。実は今回が初めての訪問ですが、道に迷う心配はありません。駅でマップもくださるし、ほとんどの見所は、駅前から続く商店街沿い及びその周辺にありますから。

見所その1
若一王子神社(にゃくいちおうじじんじゃ)

商店街が終わる少し先にある信濃大町一の神社。もともとは神仏混淆だったため、境内には、お寺のような三重塔もあります。毎年7月28、29日には盛大な夏祭りが開催され、全国でも数少ない子どもの流鏑馬や舞台(山車)の曳き揃えなどで賑わいます。

見所その2
弾誓寺(たんせいじ)

八頭身のスタイルがよい観音様。手のポーズが珍しい

八頭身のスタイルがよい観音様。手のポーズが珍しい

今回の旅でもっとも印象的だったのが、この寺の観音様との出会いです。駅員さんに「いいお寺ですよ」と教えられて行ってみたものの、本堂も、観音様が祀られている観音堂にも人影はなく、鍵もしまっている模様。諦めきれずうろうろしていたところ、工事関係の方々が境内で一服していらっしゃるのに遭遇しました。わけを話すと、ご近所の知り合いの方に声をかけてくれ、鍵の管理をしているという男性を発見!「わざわざ東京から来たんだから、観音堂を開けてあげてよ」と頼み込んでくださり、めでたく観音様とのご対面が叶いました。

これがもう、他ではちょっとお目にかかれないほど美しく、かつ、珍しいポーズの聖観音像(頭がひとつ、手が2本の観音様の基本形)でした。作られたのは平安時代中期。協力してくださった工事関係の方々も「近所に住んでいるのに、ここにこんな素晴らしい観音様がいらしたとは知らなかった」と、驚かれていました。
仏像マニアの楽しみは、地方の寺でこんな美しい仏像を見つけること

仏像マニアの楽しみは、地方の寺でこんな美しい仏像を見つけること

「こんな貴重な仏像ですもの、写真なんか撮っちゃいけませんよね」と、鍵を管理している方に言うと、あっさり「いいですよ」と。さらに、「でも、まさか、インターネット上の記事になんか載せたらいけませんよね」とお訪ねすると、「何も隠しているわけではありませんから、どうぞ、どうぞ」とご快諾いただきました。というわけで、写真を公開します。地元の関係者の方々、そして観音様。本当にありがとう。皆様も、手を合わせながら、美しいお姿を拝んでくださいませ。

■弾誓寺
住所:長野県大町市大町九日町4188
電話:0261-22-7531
(いつもこううまく行くとは限りませんので、拝観の際は、事前連絡をおすすめします)

見所その3
古い町並み

商店街の左右には、古い町並みが少しだけ残っています。なまこ壁の倉などがあり、なかなかいい感じですよ。

見所その4
男清水、女清水

大通りをはさんで、女清水と男清水があります

大通りをはさんで、女清水と男清水があります

信濃大町では、この商店街をはさんで西側は男清水を、東側は女清水を水道水として使っています。標高3000m近いアルプスの上白沢(黒部ダム入り口の川の上流)の湧水(男清水)と標高900mの里山居谷里の湧水(女清水)です。商店街にある「わちがい」というお店の近くに、道路をはさんで男清水と女清水を汲める場所があり、近所の店などでペットボトルも無料で提供されているので、誰でも自由に汲めます。2つの水を合わせた水は縁結びの水、夫婦円満の水と呼ばれているため、婚活中の方のためのパワースポットとしても人気があるようです。

「わちがい」で「おざんざ」をいただく
「おざんざ」は、信濃大町名物の麺で、わちがいでは乾麺のお土産も買えます

「おざんざ」は、信濃大町名物の麺で、わちがいでは乾麺のお土産も買えます

さて、そろそろランチの時間となりました。その男清水のすぐ脇にある「わちがい」は、100年以上も前に建てられた古い豪邸を改築した店で、素晴らしく雰囲気のよいお部屋で、昼ごはんをいただけます。おすすめは、「おざんざ」と呼ばれる信濃大町独特の、細いうどんのような麺です。なんとまあ、納豆のねばねばする酵素をつなぎに使っているそうですが、納豆臭はほとんどなく、つるつるいただけてとてもお上品です。

信濃大町では、ランチにもうひとつ「黒部ダムカレー」という選択肢もあります。これは、ご飯をダム本体、カレーをダムの水に見立てたご当地カレーで、大町市内や、信濃大町温泉郷、黒部ダム周辺の店などで食べられます。わちがいには黒部ダムカレーはありませんが、店内見学だけでも受け付けてくれますので、カレーを選択する方も、ぜひ、建物内部をご覧ください。

わちがい
住所:長野県大町市上仲町4084
電話:0261-23-7363
営業時間:
(11月~4月)10:00~18:30(L.O)
(5月~10月)10:00~19:30(L.O)
定休日:火曜日、第4月曜日
値段の目安:おざんざ980円など

信濃のお伊勢さん、二科神明宮(にしなしんめいぐう)

仁科神明宮の本殿。確かに伊勢神宮と同じ形です

仁科神明宮の本殿。確かに伊勢神宮と同じ形です

さて、こちらの二科神明宮も今回はじめて訪れる場所です。社殿の本殿、中門、釣屋は、堂々の国宝です。こんな山奥の小さな神社がなぜ国宝か? その理由は、こちらの建物が、かの伊勢神宮と同じ、伝統的な神明造だからです。

仁科神明宮では、鳥居も、「神明鳥居」と言って、伊勢神宮の鳥居と同じ形をしています

仁科神明宮では、鳥居も、「神明鳥居」と言って、伊勢神宮の鳥居と同じ形をしています

神社の建物にはいろいろな種類がありますが、その中でも神明造は、もっとも古い形で、日本の神社というものの基本形です。しかし、伊勢神宮の建物は国宝ではありません。なぜかというと、伊勢神宮には、式年遷宮と言って、20年ごとに建物を建て替える決まりがあるからです。

これは、1300年間も続いているお伊勢さんの基本で、仁科神明宮も、昔は20年ごとにきっちり建て替えていたのです。が、この神社を支えていた仁科氏という豪族が滅びたため、1636年を最後に遷宮はされなくなり、修復だけするようになりました。そのため、こちらの建物が、現存する最古の神明造ということになります。

伊勢神宮とくらべれば小さいと言えども、さすが国宝。深い森を背後にした建物は、実に神々しく風格があります。お伊勢さんでは、塀の外からのお参りになるため、本殿の様子を直接見ることはできませんが、こちらではかなり近くから見ることもできて、たいへんありがたいです。

■仁科神明宮
住所:長野県大町市社宮本1159
電話:0261-62-9168
拝観時間:9:00~17:00

仁科神明宮のご神木。根がひとつ、幹が三つに分かれた三本杉です

仁科神明宮のご神木。根がひとつ、幹が3つに分かれた三本杉です

※交通機関について
ここは信濃大町駅から6キロほど離れたところにあります。バス便もありますが、本数がきわめて少ないです。元気な方なら、そのままレンタサイクルで行くこともできるでしょうが、今回は、道に不案内なのと、時間に余裕がないため、信濃大町駅からタクシーで行き、少し待ってもらって、最寄りの安曇沓掛駅まで行き、そこから大糸線に乗るという方法を選びました。

ちなみに安曇沓掛駅までは徒歩30分ほどですが、この駅は無人駅で、駅前にタクシーもありませんので、お値段は少しかかりますが、この方法がベストと思われます。タクシー代は4500円程度でした。4人いれば、1人当たり1000円ちょっと。お1人で行かれる場合は、信濃大町駅から二科神明宮までタクシー(2500円程度)で行き、安曇沓掛駅までは歩くという方法で、いくらか節約できます。

2日目後半は安曇野へ>>
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