今年の宅建士試験は簡単だった?
ここ数年間、宅建士試験は難問化傾向にありました。しかし、今年の宅建士試験は予想に反して基本的な問題が多く、比較的やさしい問題が大半を占めました。また、昨年の試験では直近の改正点から3問分も出題されていましたが、今年は直近の改正点からの出題が1問もなく、逆に数年前の改正点から出題がありました。
今年の宅建士試験の受験者数は198,375人、そのうち免除対象者(登録講習を受講して5点免除されている人)は44,123人でした。
なお、宅建士試験の合格ラインは平成28年11月30日(水)9:30に一般財団法人不動産適正取引推進機構がホームページで公表します。
平成28年度宅地建物取引士資格試験の合格発表(不動産適正取引推進機構)
平成28年度宅地建物取引士試験の問題
権利関係(民法等)もやさしかった?
今年も権利関係からの出題は問1から14までの14問でした。問1が民法改正案からの出題となっており、これも毎年定番となりました。民法財産法の改正が近付き、新しい民法の知識が取引士に求められていることが伺えます。また、問9に判決文引用問題が出題され、これも定番となりました。判決文からその要件を正確に導き出し、実際の不動産取引実務で活用するための法的思考能力の有無を問われています。
さらに、判例からの出題は14問中6問であり、これも例年通りで、昔の宅建試験のように条文だけ暗記しておけば合格できた時代は完全に終わったといえるでしょう。
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法令上の制限・税法等は例年通りだった?
法令上の制限については、選択肢ごとにみると難しい問題がいくつかありました。ただ、この分野については、毎年2~3問程度難解なものがあるので、例年通りの出題といえると思います。私は、昨年の建築基準法の改正点である建築確認や老人ホーム等の容積率の緩和措置等が出題されると予想していたのですが、1問は防火関連の複合問題、もう1問は容積率や建ぺい率に関する複合問題が出題され、後者は難問でした。また、農地法も改正点は出題されず、農地法違反の取引が無効となるという基本的な知識が分かっていれば答えが出たやさしいものでした。税法についても、昨年のように改正点から出題されることはなく、印紙税と不動産取得税からの出題でした。両方とも過去に何度も出題されている内容からの出題でしたので、正答率は高くなると予想されます。
不動産評価については、不動産鑑定評価基準から出題されました。地域分析における同一需給圏の定義と取引事例比較法における事情補正からの2肢の問題は宅建受験用のテキストにはあまり掲載されておらず、難問だったと思われます。
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宅建業法等は簡単だった?
宅建業法については、昨年同様、重要事項説明の内容からの出題は難しい問題が出されましたが、それ以外は基本的な問題で構成されていました。出題形式も昨年度の問題は個数問題(正しいもの又は誤っているものの個数を選択させる問題)が8問ありましたが、今年度は5問に留まり、逆にわりと容易に解答を導き出せる形式である組み合わせ問題(正しいもの又は誤っているものの組み合わせとして正しいものを選択させる問題)が、昨年度は1問だったのが今年度は2問に増えていました。住宅瑕疵担保履行法は例年通りの問題でした。供託所等について売買契約が成立するまでに書面を交付して説明しなければならない点がわかれば答えがでる問題でした。ほぼ毎年この点は出題されているので正答率は高いと思われます。
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免除科目は難しかった?
問46から50までは、登録講習を受講していれば免除される科目です。この5問が難しいと、免除対象者の合格率が高くなります。今年の問題は住宅金融支援機構法からの問題が少し難しく正答率が下がりそうですが、それ以外は簡単でした。統計問題も地価公示の概要さえ覚えていればすぐに答えがでる問題でしたし、土地に関する問題も「土石流や土砂崩壊による堆積でできた地形は危険性が低く、住宅地として好適である。」という選択肢があり、不適当なものを選ばせる問題だったので、勉強していなくても解けるのではないかと思われる問題でした。建物に関する問題も珍しく過去問の焼き直し問題が出ており、「靭性」の意味がわかれば容易に答えを導きだせる問題でした。《あわせて読みたい記事》
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来年の宅建士試験に合格するためには?
民法については、地に足の着いた学習をすることが遠回りに見えて近道です。直前期になって頻出分野の判例を暗記する付け焼刃的な勉強では合格できません。なるべく早いうちから民法財産法の全体像を意識し、それぞれの制度趣旨を理解して、過去問を最低3回は解き、重要判例は要旨をしっかりと読んでおくことが重要です。借地借家法については、まずは条文の知識を正確に暗記することが重要ですが、過去問の大半が条文からの出題なので問題を解くことを通じて暗記して行きましょう。ただ、今年の問題もそうでしたが、借地借家法についても民法同様判例からの出題も増えています。直前期には最新判例も踏まえて判決文問題の対策をしておくべきです。
建物区分所有法については、ここ数年間、過去に出題が一度もない条文知識のものが出題されています。合格という観点からは深入り注意ですが、実務でとても重要な法律であることは周知の事実なので、マンション管理士や管理業務主任者という関連資格の勉強も兼ねるとストレスなく勉強できると思います。
法令上の制限・税法・不動産の評価については、これまで通り頻出分野をしっかりとノートにまとめて整理して暗記する必要があります。都市計画法と土地区画整理法は全体像を意識しないとさっぱりわからなくなる法律なので、過去問だけでなく講義等も利用して学ぶことをお勧めします。
宅建業法等については、とにかく基本的な知識を、過去問を繰り返し解くことで正確に暗記することが重要です。また、重要事項説明の内容についての出題は、法令上の制限についてのものである宅建業法35条1項2号からの出題が続いており、事前の対策が必要です。あまり直前期にまわさないことをお勧めします。
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