アドバイス1:「貯めどき」をどれだけ継続できるか
事情はいろいろ複雑なようですが、内縁のご主人は、私自身、マネー相談を通じてよく遭遇するタイプの方です。貯蓄もなく、年金の保険料も納めていない。でも、働けば何とかなるというような、良く言えば楽観主義、悪く言えばその日暮しのような人。こういう人といっしょになった場合、元気なうちはいいのですが、働けなくなると一気に家計が苦境に陥ります。少なくとも、ペコさんの貯蓄額については、知ればアテにされる可能性が高い。言わない方が賢明でしょう。さて、相談者のペコさんが心配されている老後ですが、年金が年間84万円ということは月7万円ですから、それしか老後の収入がなければ間違いなく苦しい老後となります。そうなると、今ある貯蓄1800万円はまさに虎の子。これをどう大事に、より長く老後資金として保たせるかがとても大事になってきます。
その対策としてまず、ご夫人には元気なうちは何歳でも働いてもらうこと。実は、ペコさんの家計は状況的には「貯めどき」なのです。毎月6万円貯蓄できるわけですから年間にして72万円。これを少しでも長く、そしてできる限り貯蓄ペースを落とさず継続させたい。収入が途絶えた時点で、家計は「使いどき」に変わります。そして、「貯めどき」が長く続くほど「使いどき」は短くなります。結果、老後資金をより保たせることができるわけです。
アドバイス2:少ない資金で生活する術を身に付ける
もうひとつの対策は、少ない資金で生活できる術を身に付けること。実際、商店街で店を出されているような自営業の人は、本当に少額の年金で老後を過ごしています。生活費は夫婦2人でも月8万円で済むというケースも決してめずらしくありません。この中に家賃は入っていませんが、国民年金が夫婦合算で12万円くらいあれば、貯蓄までできてしまうのです。
しかも、決して無理をしていない。必死に節約しているわけでもない。それどころか、楽しく生活をしている。ここがとても重要なところ。老後の楽しみというと、好きなときにゴルフをしたり、海外旅行に行ったりというイメージがありますが、こういう人たちは違います。生き生きと自治会での活動をしている。地域の美化とか防犯対策とか、そういうことを地域の人と楽しんでやっているんです。
こういう例は、年金が少なく不安に思っている人にとって、参考となるひとつのモデルケースだと思います。どう楽しみを見出すかは個々に違って構いません。ともあれ、それを自分自身で見つけ出すことができれば、老後資金の不安は解消されていくはずです。
アドバイス3:内縁の夫との「今後」を決めておく
将来の家計負担を減らすため、住宅について考えておく必要があるでしょう。住宅コストが月5万5,000円。月7万円の年金生活にとっては、大きな負担です。となれば、解決策として住宅購入という選択肢もあります。購入するとすれば、200万~300万円程度の格安物件。とくに空き家が増えている地方では、探せば見つかるはず。交通も不便で、築年数は当然経ってはいますが、クルマもありますし、老後だけを過ごせればいいと割り切れば、そう気にすることはありません。何より、劇的に住宅コストが下がります。検討してみる価値はあるでしょう。物件はネットでも調べられますし、最近では各地方自治体が「空き家バンク」を立ち上げ、地元の空き家の情報提供を行っています。利用してもいいと思います。
ただし、いくつか老後対策を考えてみましたが、ご主人との関係をどうしていくのか。老後は資金的にそれに大きく左右されます。そう遠くない時期に決めておくべきでしょう。少なくとも現在の関係は、ペコさんにとって恵まれています。家計をやりくりし、家事もされているのでしょう。それでも30万円の生活費を渡され、結果的にそこから貯蓄もしている。ペコさんは働けない状態ですが、それでも、自分の貯蓄を取り崩すことはないわけです。
しかし、ご主人に収入がなくなった後も2人で生活していくのであれば、その立場は逆転します。ペコさんはご主人の食費もお小遣いも、自分の年金や貯蓄から負担することになるからです。
最後にペットについて。現在の愛犬はかなりの高齢ですから、今後も医療費はかかってきます。問題は、愛犬を失った後。新たに何かを飼うのなら、慎重に考えた方がいいからです。長寿のペットであれば、自分より長生きする可能性も。オウムの場合、50年近く生きる場合もあるのだとか。ペットで癒される部分は大きいと思いますが、そのあたりを逆算してペットも選んでいくべきでしょう。
教えてくれたのは……
藤川太さん
取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ
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