住宅購入の費用・税金/住宅購入時の消費税

消費税率引き上げの再延期で住宅の税金はどうなる?

2017年4月に予定されていた消費税率10%への引き上げが、2年半延期されることになりました。消費増税に伴い内容が変更されることになっていた住宅税制も影響を受けますが、何がどう変わるのか、その見通しを考えてみることにしましょう。

執筆者:平野 雅之


2017年4月に予定されていた消費税率10%への引き上げを2年半先送りして、2019年10月とすることが明らかになりました。関連法案は秋の臨時国会で審議されるため正式決定ではありませんが、これから数か月のうちに方針が覆されることはないでしょう。

そこで今回は、消費税率引き上げの再延期によって住宅税制がどのように変わるのか、その見通しを考えてみました。


住宅ローン控除は現行内容のまま2年半の期限延長か

利用者の多い住宅ローン控除制度は、現行の内容のまま適用期限が2年半延長され、2021年12月31日までとなる可能性が高いでしょう。

当初は2015年10月1日に予定されていた消費税率10%への引き上げが1年半先送りされたことに伴い、住宅ローン控除の適用期限も1年半延長された経緯があります。今回、再び2年半先送りされたことで、同様の措置がとられると考えるのが妥当です。

また、住宅ローン控除制度ではもともと消費税率が8%か10%かによる内容の変更は予定されていなかったため、現行どおり消費税の課税物件(主に不動産業者が販売する新築物件、注文住宅など)における最大控除額は400万円(認定住宅は100万円上乗せ)、中古住宅など非課税物件における最大控除額は200万円で維持されることになりそうです。

ただし、過去の住宅ローン控除制度のなかでも比較的大きな控除額の水準が長期間続くことになるため、一時的に規模が縮小されたり、適用要件が厳しくなったりすることも考えられないわけではありません。


すまい給付金制度も2年半の適用期限延長が濃厚

「税金」ではありませんが、住宅ローン控除制度の拡充に伴って2014年4月に導入された「すまい給付金制度」についても触れておきましょう。

すまい給付金は、主に住宅ローン控除制度の拡充による恩恵が及びにくい中低所得者向けに導入されたものですが、負担する消費税率が8%のときは給付基礎額が最大30万円、給付対象者の収入額の目安が510万円以下となっています。

それに対して、負担する消費税率が10%になったときは給付基礎額が最大50万円、給付対象者の収入額の目安が775万円に拡充されます。

給付額などの拡充のタイミングは消費税率引き上げの半年前(それ以降に契約した場合に、物件の引き渡し時期に応じて新税率が適用される)となるため、2016年10月1日から実施される予定でしたが、これは2019年4月1日となるでしょう。

また、すまい給付金制度も2019年6月30日の適用期限が2年半延長され、2021年12月31日まで(引き渡しを受けて入居が完了すること)となりそうです。


贈与税の非課税措置は変更もあり得る!?

直系尊属から住宅取得等資金贈与を受けた場合の非課税措置ですが、2016年の限度額は一般の住宅を取得する場合が700万円、良質な住宅を取得する場合が1,200万円となっています。

それに対して消費税率が10%のときは一般の住宅を取得する場合が2,500万円、良質な住宅を取得する場合が3,000万円と大幅に拡充され、消費税率引き上げの半年前の2016年10月1日から適用される予定でした。

しかし、消費税率の引き上げが2年半先送りされたことから、この拡充も当面は見送られます。親などから多額の贈与を受けて住宅を購入する計画の人は十分に注意しなければなりません。

単純に考えれば、現行の非課税限度額の適用が2年半延長され、消費税率10%による大幅な拡充も2年半延びて2019年4月からとなるのですが、その一方で2017年10月および2018年10月に段階的な制度縮小があらかじめ決定していました。

そのため、もともと縮小するはずのものをそのまま2年半延長することが妥当かどうかをめぐって議論が交わされることもありそうです。非課税限度額の設定や適用期限について、いったん白紙に戻したうえで根本的に見直される場合もあるでしょう。

いずれにしても、2017年以降に親などから贈与を受けて住宅を購入する予定の人は、これから2016年末にかけて、税制に関する動きを注意深く見守る必要がありそうです。


それ以外の住宅税制は?

住宅ローン控除以外にも、下記の措置についてはいずれも適用期限が2年半延長され、2021年12月31日までになると考えられます。ただし、控除額など内容の調整がされるかもしれません。

特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例
既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除
既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除(省エネ改修またはバリアフリー改修)
認定住宅の新築等をした場合の所得税額の特別控除(認定長期優良住宅、認定低炭素住宅)

その他の登録免許税不動産取得税固定資産税印紙税の軽減措置や、居住用財産の売却に伴う税制特例などについては、とくに消費税率引き上げと連動するわけでなく、通常の税制改正のなかで延長などの措置がとられていくでしょう。

それよりも、消費税率引き上げ前の駆け込み需要を見込んでいた住宅関連事業者のなかで体力のない会社は、これから経営が厳しくなるケースもありそうです。購入、建築、リフォームなどで契約する相手先が大丈夫なのか、当面はしっかりと見極めることが大切です。


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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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