この記事は2009年度(平成21年度)税制改正案に関する2008年(平成20年)11月時点での考察です。その後の決定内容については≪2009年の住宅ローン控除制度はこうなった!≫をご参照ください。



国民の住宅取得支援を目的として長年運用されてきた住宅ローン控除制度。いったんは平成16年末までで打ち切られる予定だったものが、平成20年、つまり今年まで延長され、その代わりに減税規模が年々縮小されてきました。最大控除額は平成16年の500万円から3分の1以下に減り、今年は160万円となっています。

制度の廃止を視野に段階的な規模の縮小が行なわれたものであり、今年の春先あたりまでは「このまま年内いっぱいで打ち切りか」という見方も少なくなかったようです。

ところが、その後の長引く住宅不況を背景に、夏頃からは住宅ローン控除制度の延長が政策の重要課題として位置づけられるようになり、さらに世界経済の悪化、景気後退の急速な深刻化の流れを受け、10月23日に麻生首相が住宅ローン控除の「過去最高額までの引き上げ」を指示しました。

そして現在は「延長するのかどうか」といった話ではなく、「拡充規模やその要件をどうするのか」といった部分が争点になっています。

最大控除額は600万円?

家計
住宅ローン控除制度の延長・拡充は助かるが…
麻生首相の指示が出された当初は選挙対策のアドバルーンとの見方もされ、11月に解散・総選挙が行なわれればどうなるか分からないという観測もありましたが、解散の先送りが確定的となったことで、住宅ローン控除の延長・拡充も確実に行なわれる公算が強くなったといえるでしょう。

一方、住宅ローン控除制度の規模がこれまでで最も大きかったのは、平成11年1月1日から平成13年6月30日までに入居した人を対象とした「最大控除額587万5千円(控除期間15年)」というもの。これを上回る「過去最高額」ということで、来年以降(短い年数の時限措置となる可能性大)の最大控除額は600万円が有力視されています。

また新聞報道などによれば、控除期間は10年、控除率は住宅ローン年末残高の1%前後とする案がいまのところ強いようです。

しかし、これまでの制度と比べたときに大きく異なる部分を忘れるわけにはいきません。それは平成19年度に実施された所得税から住民税への税源移譲です。定率減税の廃止と同じタイミングで行なわれたために分かりにくいケースも多いのですが、たいていの人は所得税が大きく減っています。つまり、住宅ローン控除の対象となる所得税自体が、昨年からは少なくなっているのです。

たとえば年間の所得税額が12万円(今後10年間は同じと仮定)の人は、控除期間が10年としたときに戻る所得税は120万円が上限。制度上の最大控除額が500万円だろうが600万円だろうが、120万円以上は戻りません。

そこで住宅ローン控除の対象に個人住民税を加えることも検討されているわけですが、財政難に苦しむ自治体の反発は必至。総務省もこれには難色を示しているようです。

  平成11年から平成18年末までの入居者に対しては、税源移譲で減ってしまった住宅ローン控除額相当分を住民税から控除できる措置がとられています。また、平成19年と平成20年の入居者に対しては控除期間を15年とする選択肢が与えられ、税源移譲による住宅ローン控除への影響が少なくなるようになっています。

そのため、もし来年以降の住宅ローン控除制度が「最大控除額600万円、控除期間10年、控除率1%、対象は所得税のみ」となれば、必ずしも今年の制度(最大控除額160万円)よりも有利とはいえないのが現実。最大控除額が拡充されるというニュースを聞き、「それなら来年まで待ったほうがトクだ」と判断するのは少し早計かもしれませんね。

次のページでは、来年以降のほうが有利なケース、今年のほうが有利なケースを探っていきましょう。