淡麗辛口、新潟酒の代表。癖のない飲み飽きしない日本酒のはしり。それまでの甘くべったりした日本酒のイメージを変えた酒。元祖、幻の酒ーー。
こう思う人は、きっと50代、いや60代以上の日本酒ファンではないだろうか。
若い世代の日本酒ファンは、なんとなく、通好みの酒、父が、祖父が好んだ酒、おじさんの酒、昔ながらの酒といった印象だと聞く。また日本酒ファンにもかかわらず飲んだことがないという人も存在する昨今。これが越乃寒梅をとりまく、まぎれもない最近の環境だ。
しかし、酒はいい。かわらずいい。甘酸っぱいカクテル慣れした子供舌には理解できない大人の味わいなのだと、ひねくれ老婆心丸出しで言ってはみるものの、近年のスター日本酒の陰に隠れた寒梅のラベルをちょっと寂しく見つめていた。
そんな中、うれしいニュースが! 越乃寒梅が45年ぶりに新商品を発売するという。待ってました! 新商品は「越乃寒梅 純米吟醸酒 灑」。さんずいに麗しいと書いて「さい」と読ませる。
ボトルスタイリングは鮮やかな瑠璃色のボトル。ティファニーを思わせる涼やかなライトブルーのラベル。緻密なパターンは寒梅の故郷亀田郷を象徴するとか。このスタイリングはこれからの季節にぴったりだし、女性にも受け入れられやすい印象で、そのままテーブルに乗せてもよさそうだ。
中身は、酒造好適米「五百万石」と「山田錦」を使った純米吟醸酒。精米歩合55%、アルコール度数15%、日本酒度は+2。価格は720mlが1,500円、1800mlが3,000円(消費税別)。発売は2016年6月17日(金)、全国の越乃寒梅特約店約400店にて購入が可能だ。
石本龍則社長は「越乃寒梅の本流から枝分かれする感じで、若い人に向けて、軽く優しい飲み口でありながら米の旨さをしっかり感じてもらえる酒。とくに料理が欲しくなる酒でありたい」と語る。
越乃寒梅は創業明治四十年で来年110周年を迎える。創業以来、良質の米と清らかな軟水、さらに吟醸製法に一貫してこだわった生真面目な造りに邁進し、ゆっくり飲んでも変化の少ない、飲み飽きしない美しい酔い心地の酒を世におくりだしてきた。(詳しくは、石本酒造・蔵リポート記事もご覧ください)
このたびの新商品に関して、竹内伸一取締役杜氏はこう説明する。
「越乃寒梅らしい味わい、つまり、カプロン酸エチル(※ガイド注:リンゴ様の香気成分)の多い、甘く酸っぱいトレンドの酒とは違う、ライトでシャープ、なめらかで酸の少ない上品でふくらみのある酒質を目指した酒で、今どきの派手な味わいではありません」
なるほど味わってみると、とにかく非常に軽快。すっきりと癖がなく、ただ「淡麗辛口」のドライなイメージではなく、優しい甘味と軽やかな旨味が感じられるタイプ。白ワインと同じように小ぶりのワイングラスや薄手の磁器の酒器などで5℃~10℃くらいに冷やして飲みたい味わいだ。
料理はあっさりとした白身魚や貝類、新鮮な野菜料理や繊細な出汁や旨味のきいたものがいいだろう。素材の味わいを壊さず軽快に楽しませてくれそうだ。
越乃寒梅、既存商品も高品質化へ
石本社長の言葉通り、ターゲットは30代~40代と明確。とくに、日本酒本来の米からくる軽快な旨味に癖のないすっきりとしながらも柔らかい舌触りは、今から日本酒を経験したい、日本酒初心者の方へまずはお勧めしたいと感じる。さらに、この新商品発売を機に、既存商品のスペック変更も9月以降に行われる予定。今までの「特別本醸造 別撰」は本醸造が分かりにくいとの声にこたえ「吟醸酒 別撰」に。「純米大吟醸酒 金無垢」は38%から35%精米へ、「純米吟醸酒 無垢」は「純米大吟醸酒 無垢」となり50%から48%精米へ、「普通酒 白ラベル」は59%から58%精米へ。また全量酒造好適米使用にもなった。いずれも値段は据え置き。
越乃寒梅は“縁結び”の酒
また、うれしい情報も出てきた。新商品発表会に登場した俳優の中尾彬さん、池波志乃さん夫妻によれば「縁結びの酒」とのこと。約40年前、雑誌「酒」で紹介されていた越乃寒梅を一緒に飲み始めたことが実は結婚するきっかけとなったというお二人。越乃寒梅がなければ結婚もなかったし、以来、晩酌には欠かせない酒となったとか。「酒は薬にも毒にもなるもの。二人で飲みながらしゃべりながら2時間くらいを過ごすのが楽しみ」とは中尾さん。
「若い女性にお勧めしたいのは日本酒が肌にいいこと。それに寒梅は翌日に残らない酒でもあります」と志乃さん。お二人の寒梅好きは相当なもののようだ。
あなたも45年ぶりのこの機会に、越乃寒梅の御利益、信じて飲んでみる?
<蔵リポート記事>
幻の酒「越乃寒梅」石本酒造、蔵と造りをリポートする(レポート1)
幻の酒「越乃寒梅」石本酒造、その味わいをリポート(レポート2)