マネジメント/マネジメントの基礎知識

知らないと乗り遅れる!? 話題のフィンテックとは

最近、新聞やビジネス雑誌でよく耳にするフィンテックという言葉。なんとなく金融、あるいはIT関連用語かと知りつつも、どうも掴みどころがない、そんな認識の方も多いのではないでしょうか。重要なビジネス用語でもあるフィンテックについて、その意味と基本概要を解説します。

大関 暁夫

執筆者:大関 暁夫

組織マネジメントガイド

フィンテック(Fintech)とは

フィンテック(Fintech)は、英語の金融(Finance)と技術(Technology)を掛け合わせた造語。現在では特に金融・財務などの分野でITテクノロジーを活用して生まれる新たな技法やサービスのことを総称するものとして広く使われています。

近年、急激に注目を集めはじめた用語ではありますが、実は古くは会計ソフトや家計簿ソフトなどの登場とともに90年代から使われていました。

フィンテックで、世の中はますます便利になる!?

フィンテックで、世の中はますます便利になる!?


最近になってフィンテックがよく話題に上るようになったのは、米国での動きが影響しているようです。同国にはIT技術を利用した金融サービスの開発はそれまでも一部で存在しましたが、PC技術の進展や高度なITモバイル機器であるスマホの普及で、新興IT企業が金融業務に進出。この分野で企業価値が10億ドルを突破するユニコーン・ベンチャーも登場するようになりました。こうしてフィンテックは投資対象として脚光を浴びる存在に。

では、米国ではどのような企業が注目されているのでしょうか。電子メール・アドレス宛に小口送金サービスを提供する老舗のフィンテック企業・ペイパル、資金の貸し手と借り手をインターネット上で出会わせるいわゆる「P2P貸出」のレンディングクラブオンデック・キャピタルなどが、その代表例として挙げられるでしょう。

このようなベンチャー資本によるフィンテック・サービスの展開は、既存の金融サービスに比べて容易かつ安価という点が特徴。金融機関からは自社の代替サービスとなりうるため、脅威の存在として受け止められています。こうなると金融機関側も黙って待っているわけにはいきません。ベンチャーに対抗して新サービスの構築を急いだり、フィンテック企業を買収したり、あるいは出資することで情報を得て協業を模索したり……。こうして金融業界を巻き込んだフィンテックの流れは、時代の大きなうねりとなって日本にもその振動が伝わってきたのです。


日本では法整備優先

とはいえ、日本ではフィンテックはまだまだ黎明期にあると言ってよさそうです。その大きな理由のひとつとして、日本の金融業が異常なほどの規制業種である、ということが挙げられます。

たとえば、ベンチャーが金融関連事業に進出しようとすれば、免許業務の高い壁がそれを拒ます。また、金融機関がベンチャーと資本提携して組もうとすれば、出資規制の壁が立ちはだかります。金融庁は2015年12月にフィンテック関連の規制緩和に向けた報告書をまとめたばかり。これを受け、伊勢志摩サミットを前にした2016年5月25日、ようやく銀行のフィンテック関連企業への出資規制を緩和する法案が国会で可決されました。その意味で、日本のフィンテック展開はまさにこれからと言ったところなのです。


日本のフィンテック事業、有望株は?

日本でも期待されるフィンテック

日本でも期待されるフィンテック

日本では、現在、特に以下2つのフィンテック事業が有望株として注目されています。ひとつが、資金決済などに使われるブロックチェーン技術の応用。それから、AI(人工知能)を使った新たな金融サービスの開発です。

ブロックチェーンは、そもそも仮想通貨ビットコインを支える技術として誕生しました。個々の取引情報をひとつのブロックに保管し、参加者みずからがそこに鍵をかける。その連鎖でできあがる、「チェーン状態の利用者参加型セキュリティシステム」がブロックチェーンです。この技術は、仮想通貨だけでなく、ネット上の有価証券取引や物品の購入取引にも応用活用が可能として、注目を集めています。今、日本における、フィンテック・ベンチャーが最も関心を寄せている技術と言っていいでしょう。

一方、AIは、これまで金融機関が手数料をとっておこなってきた投資信託などの運用ファンド組成を、金融機関に頼ることなく安価に実現してくれるものとして、注目を集めています。先行するアメリカでは、複数のベンチャー企業が金融機関代替サービスを開発し、金融機関も「手数料の引き下げ」や「AIの導入」という形で対抗するなど過熱した動きが見られます。日本の銀行でも、代表的なAIシステムであるIBMのワトソンを導入したり、新たなAIを求めてシリコンバレーとの連携を模索したり、動きが活発化しています。


「競業」より「協業」

では、これらの技術は日本でどのように展開していくのでしょうか。先にも述べたように、日本特有の金融行政の管理下で、アメリカのような「ベンチャー対金融機関」という競業の構図はイメージしにくいでしょう。その逆で、「協業」すなわち、オープン・イノベーションな関係で既存の金融機関とベンチャー企業が協力しながら展開していくのではと言われています。その際、軸となるのはおそらく金融機関のほうでしょう。今回、銀行による出資緩和が真っ先に法案整備されたのも、その流れに沿ったものと言えそうです。
キーワードは「協業」

キーワードは「協業」

現状では、一部で「名称先行で実体がない」などとも揶揄されるフィンテックですが、ゼロ金利政策の影響もあり競争激化の一途をたどる金融機関の実情を踏まえれば、利用者の利便性向上という観点から確実に進展が期待されます。また、これまで保守的な組織の代表格でもあった金融機関が、外部との連携により積極的な利便性向上に取り組むという点からも、日本の金融サービスにとって大きなターニングポイントになりえそうです。
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