輸入車/注目の輸入車試乗レポート

新型ラッシュ! 大型SUVの最新事情は?

ボルボがXC90を、アウディがQ7という大型SUVのニューモデルを発売したことで、フルサイズSUV市場が再び盛り上がる状況が整いつつある。最新の大型SUVの魅力についてこの2台を中心に迫っていきたい。

塚田 勝弘

執筆者:塚田 勝弘

車ガイド

フルサイズSUVが花盛り

ボルボXC90

新型ボルボXC90のボディサイズは、全長4950×全幅1960×全高1775mm。価格は774万~1009万円


日本ではフルサイズといえる大型SUVの新型モデルが相次いで登場している。ボルボXC90、アウディQ7ともに一時販売されていなかったが、前者は2016年1月から、後者は3月16日から販売を開始した。ともに新型にスイッチしての日本再登場となる。いずれも輸入車が中心で、国産勢ではトヨタ・ランドクルーザーやレクサスLXなどがあるが、新鮮味という意味ではやや薄い。

ボルボXC90は、2.0Lガソリンターボエンジンを軸として、グレードによりスーパーチャージャー付きダブル過給器、ダブル過給器付エンジンにリヤモーターを組み合わせたプラグインハイブリッドを用意。全車に8AT、AWDが組み合わされている。

新型ボルボXC90の魅力とは?

ボルボXC90

XC90のスマートなインテリア


新型XC90の美点は数多いが、スクエアでありながらセンスを感じさせるエクステリアは、ボリューム感のある面の構成もあって存在感抜群だ。ただし、押し出しの強さは抑制されている印象で、あくまでスマートな雰囲気が漂う。

インテリアも新しいボルボ車像を具現化したもので、9インチのタッチスクリーン式センターディスプレイを中心に、ハードスイッチの数を減らした非常にスマートな空間に仕上がっている。ダイヤル式のエンジンスターターや走行モードを変更するセレクターなど、細部にまで凝ったデザインが採用されているのも見どころ。

居住性に関しては、プラグインハイブリッドモデルの「T8 Twin Engine AWD Inscription」も含めて3列シート、7人乗りを実現しているのが特徴だろう。3列目は、身長171cmの場合の筆者だと余裕十分ではないが、短時間用、非常用としてなら実用になる。開口部の広さには制約があり、大型ミニバンのような乗降性とはいえないが、「いざ」という時には重宝しそうだ。

見た目を裏切らないボルボXC90の上質な走り

ボルボXC90

スクエアなボディ形状のおかげで、その大きさにも関わらず見切りがしやすく、思いのほか取り回ししやすい


走りもなかなか上質な印象。ローンチ時の試乗車や広報車がオプションのエアサスペンション装着車のみという状況なので、金属バネの乗り味がどうか気になるところだが、エアサスペンション装着車でも乗り心地が柔らかいということはなく、意外と引き締まっている。個体差があるのか車両(グレード)によって受ける印象は若干違うのだが、基本的には乗り心地はまずまずで、静粛性の高さはほとんど不満なしというのが共通する印象。

エンジンに関しては、ローンチ時に残念ながらディーゼルはないが、254ps/350Nmの「T5」、320ps/400Nmの「T6」、プラグインハイブリッドで320ps+87psの「T8」からチョイスできる。

「T5」でも街中はもちろん、高速道路でも流れに乗るのは容易なはずで、もし余力が欲しければ「T6」を選べばいい。ただし、「T6」もシティユース中心だと「T5」と乗り比べなければ圧倒的な差は感じられない。また、PHVの「T8」は、スムーズな加速フィールに加えて、システムトータルで407ps/640Nmというスペックが物語るとおり、アクセルを踏み込むと十分といえるほど力強く加速を披露してくれる。

ボルボXC90のプラグインハイブリッドは1000万円超

ボルボXC90

こちらはXC90の2列目。やや座面の前後長が短めに感じるが、サイズ、空間の広さに不満はない


ただし、プラグインハイブリッド(PHV)の「T8」は1009万円。1000万円の大台を突破していて、フル充電時はモーターだけで最大35.4kmの走行が可能とするが、そのあたりに価値を見いだせるか、または高級SUVのPHVに興味があるという、懐に余裕のある方なら購入満足度は高いかもしれない。PHV仕様も3列シートを配置できているほか、居住性や積載性もそれほど犠牲になっていないが、バッテリーなどの重量物を積むだけにハンドリングや乗り心地に軽快感は薄く、ガソリン仕様よりも重厚感があるのは間違いない。

もちろん、ボルボ自慢の安全装備の充実ぶりも魅力で、世界初の「ランオフロード・プロテクション(道路逸脱事故時保護システム)」や「インターセクション・サポート(右折時対向車検知機能)」を含む最新装備が満載されている。なお、前者は車両が路肩を外れるなどの重大な事故時にシートベルトを巻き上げ、メタル製クッションが乗員にかかる衝撃を吸収し、深刻な事態を防ぐというもの。

後者は、右折時に大型車などの死角になり、前進してくる後続車(対向車)に気がつかずに右折をしようとすると、衝突を回避または被害を軽減するオートブレーキ機能こと。ほかにも、夜間でも検知可能な歩行者・サイクリスト検知機能付フルオートブレーキ、ステアリングアシスト(50km/h以下)による追従時車線維持機能などの最新装備が用意されている。

新型になってアウディQ7が再登場

新型アウディQ7

全長5070×全幅1970×全高1705~1735mmというアウディQ7。先代から少し小さくなったが、サイズ感はほぼ同じだ


2代目となる新型にスイッチして再登場したアウディQ7。アウディ得意の軽量化による走りの良さや、ボディサイズを若干小さくしても室内長を広くするなど、パッケージングの面でも進化しているほか、オプションで3列目シートを用意し、7人乗りも選べる点などが美点だろう。

ボルボXC90と異なり、押し出し感の強いアウディQ7にも多くの先進装備が用意されているが、中でも注目なのがアダプティブエアサスペンションとともにオプション設定されている「オールホイールステアリング」。

状況に応じて後輪を最大5度まで前輪と逆方向に切れるというもので、四輪操舵の4WSになっている。とくに効果的なのは、後輪が逆位相となる低速時で、全長5m超というQ7の巨体でも5.3m(ノーマルは5.7m)という最小回転半径を実現している。実際に回れるかなというスペースでも転回が可能だったから、日常のシーンでも助かるはずで、新型Q7を購入するならぜひ選択したいオプションだ。

新型Q7はガソリンエンジンのみ

新型アウディQ7

アウディQ7の価格は804万~929万円


新型アウディQ7に用意されるエンジンは、日本導入時は2.0Lの直列4気筒ガソリンターボと、3.0LのV6ガソリンスーパーチャージャーのみで、トランスミッションは8速ティプトロニックのみ、駆動方式はAWDの「クワトロ」のみとなっている。

ディーゼルやプラグインハイブリッドの設定はない。VWグループは例の不正問題があったため、ディーゼルの日本導入は未定という状況だが、プラグインハイブリッドはもちろん、大型SUVに合うディーゼルの導入も待たれるところ。

今回試乗したのは、3.0LのV6ガソリンスーパーチャージャー。インポーターとしては2.0Lターボがもっと売れると予想していたようだが、3.0Lスーパーチャージャーの人気も高く、とくに先代Q7から乗り換える層を中心に支持されているという。

333ps/440Nmというアウトプットを誇る「3.0 TFSI クワトロ」の動力性能は、期待以上の迫力で、どの速度域から踏んでも即座に再加速し、ストレスフリーで長距離を高速巡航するなら打って付けといえる。

8ATの変速はもちろんスムーズで、それほどアクセルを踏み込まなくても巨体をスルスルと加速させていく。ハンドリングも見た目よりも軽快感があり、アルミとスチールのハイブリッドボディによる軽量化は確かに感じさせる。乗り心地も良好で、アウディの最上級SUVにふさわしい仕上がりだ。

なお、最近のアウディは、基幹モデルの新型A4/A4アバントが乗り心地の面でやや熟成不足を感じさせるが、新型Q7は800万円超からという価格帯に見合った乗り味といえる。

アウディ自慢の最新安全装備を多数設定

新型アウディQ7

アウディらしい上質感と最新の操作系を完備


また、新型Q7もアウディ自慢の先進安全装備を多数用意している。オプションで「アウディ プレゼンス リヤ」、「アウディサイドアシスト」、「後席エアバッグ」を選べば「全部のせ」状態になる。なお、「アウディ プレゼンス リヤ」は、後方からの衝突の危険をドライバーに知らせ、シートベルトにテンションをかけ、さらに後続車に警告するハザードランプが自動点灯するもの。「アウディサイドアシスト」は、車線変更時に死角にいる後方車両の存在を知らせてくれる装備。

さらなる個性、差別化が求められる大型SUV

ほぼ時を同じくしてボルボXC90、アウディQ7というフルサイズSUVが日本に上陸したが、ほかにもマイナーチェンジを機に車名を変更したメルセデス・ベンツGLS、BMW X5、ポルシェ・カイエンなどの大型SUVがある。XC90はプラグインハイブリッドでも7人乗りが可能、アウディQ7はGLSに続く巨体でありながら小回りが利くオプションや進化したパッケージングによる居住性などが魅力になっている。

さらに、大型SUVにはプラグインハイブリッドやディーゼルなど、環境面だけでなく、パワーアップのソースともなる純ガソリン車以外の選択肢も必須になりつつあるというのが最新事情だろう。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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