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震災から命と我が家の資産を守る(3ページ目)

「平成28年(2016年)熊本地震」(2016年4月14日21時26分以降に発生した熊本県を中心とする一連の地震活動)が発生してから2週間が経過しました。亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆さま、そのご家族の方々に対しまして、心よりお見舞い申し上げます。地震発生時から現在の状況を踏まえて、今、私たちができる地震への備えについて、改めて考えてみたいと思います。

平野 泰嗣

執筆者:平野 泰嗣

ふたりで学ぶマネー術ガイド

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震災から命と我が家の資産を守る保険

万が一に災害に遭った場合、金銭的な面で役に立つのは保険。地震と保険の関係を知っておこう。

万が一に災害に遭った場合、金銭的な面で役に立つのは保険。地震と保険の関係を知っておこう。

地震に遭遇して、生命や建物や家財に損害が生じた場合に、金銭的な面で助けになるのが保険です。現在加入している保険が、地震によって損害が生じた場合に保険金がもらえるのかどうか、今一度チェックしてみると良いでしょう。

■地震による死亡やケガの場合は?
一般的な生命保険の死亡保険金には、大きく普通死亡保険金と災害死亡保険金に分類されます。それぞれ免責事由(保険金が支払われない事由)が異なっていて、前者は、保険加入後短期間の自殺、保険受取人による殺人などが挙げられ、地震による死亡の場合は、支払われるケースがほとんどです。一方、災害死亡保険金は、「地震・噴火・津波による場合」は、支払われないか、被害者数に応じて減額する場合があると記載されているケースが多いです。

また、ケガによる治療のため入院した場合、生命保険では災害入院給付金特約、損害保険では傷害保険の保険金が支払われるかどうかが気になります。生命保険の災害入院給付金は、支払われないか、減額する旨、約款に記載されていることが多いです。一方、損害保険における(普通)傷害保険は、日常生活において、急激かつ偶然な外来の事故に遭いケガ(骨折、やけどなど)をした場合に、補償の対象となるので、「地震・噴火・津波による場合」は、支払われません。ただし、「地震・噴火・津波危険特約」(各社によって名称は異なる)をつけた場合は、補償されます。

東日本大震災では、多くの被害者が出ました。大手生命保険会社では、災害死亡保険金、災害入院給付金について、約款では、支払わないか、減額する場合があると記載していましたが、「全額支払う」という対応を行いました。

■地震により建物が倒壊した場合の補償は?
地震によって建物が倒壊してしまった場合、倒壊した家を取壊し、再建築するにはかなりの費用がかかります。

●都道府県から受けられる「被災者生活再建支援制度」
被災者生活再建支援法に基づき、自然災害(地震を含む)によって、居住する住宅が全壊するなど、生活基盤に著しい被害を受けた世帯(被災世帯)に対し支援金を支給し、生活の再建を支援する制度です。
住宅の被害程度に応じて支給される基礎支援金と住宅の再建方法に応じて支給される加算支援金の2つの区分があります。

※「被災者生活再建支援制度の概要」より

※「被災者生活再建支援制度の概要」より


例えば、建物が全壊して、再建築をした場合、基礎支援金100万円+加算支援金200万円=300万円の支援金の給付が受けられます。
被災者生活再建支援制度(内閣府 防災情報のページ)

●自助努力で地震に備える地震保険
被災者生活再建支援制度による支援金を受けた場合でも、倒壊した建物を再建築するための費用としては不十分です。そこで、不足分を補うために、地震保険の加入の検討をする必要があります。

地震保険は、「地震保険に関する法律」によって定められている保険で、居住用の家屋や家財を対象として、地震・噴火・津波による損害を補償する保険です。一般の火災保険では、地震・噴火・津波やこれらによって間接的に損害を受けた場合には、補償されないので注意が必要です。

地震保険は、必ず火災保険とセットで加入する必要があり、火災保険の保険金額の30~50%で設定(建物5,000万円、家財1,000万円が限度)することになっています。

地震保険は、大規模な地震が生じた場合、民間の損害保険会社の負担が過重にならないように、政府と民間の生命保険会社が分担して補償する仕組みになっています。地震保険は、政府が再保険を引き受ける形になっているため、保険料も補償内容も損害保険会社全社、同一の条件となっています。地震保険の保険料は、保険対象である建物および家財を収容する建物の構造、所在地により算出されます。建物の耐震性による割引、長期契約(2~5年)による割引があります。具体的に保険料を計算したい方は、以下のHPをご参照ください。
地震保険制度の概要(財務省)

●まだまだ低い、地震保険の加入率
損害保険料率算出機構統計集(平成26年度)」によると、地震保険の付帯率(火災保険に地震保険が付帯している割合)の全国平均は、平成26年度(2014年)で59.3%。東日本大震災前の平成22年度(2010年)の付帯率48.1%から上昇したものの、世帯加入率を算出すると28.8%で3割を切った水準となっています。多くの世帯で、地震保険による地震への備えが不十分であると言えます。

●地震保険料の改定(2017年1月より)
損害保険料率算出機構が、金融庁に対して、地震保険の改定の届出を行ったことから、平成29年1月より、地震保険料が、改定される見込みです。改定率は、地域ごとに異なり、全国平均で5.1%の上昇となります。改定の内容や背景の詳細については、下記のコラムを参照ください。
【参考】2017年1月、地震保険が再値上げ。それでも入るべき?

今回の改定では、全国平均5.1%の上昇になっていますが、本来は、全国平均で19.0%引き上げる必要があり、3段階で引き上げることを予定しています。平成29年1月の改定は、この1回目ということになります。次回の引き上げのタイミングは明記されていませんが、保険料が実質的に不足する状況を長期間続けることはできませんで、比較的早い時期に再度改定が行われるのではないかと思います。

第1回目の改定が、平成29年1月と迫ってきたので、地震への備えとして、地震保険の加入を検討してみてはいかがでしょう。

防災意識は、いつも忘れずに!

「災害は忘れた頃にやってくる」と言われていますが、忘れていなくても、いつかは必ずやってくるものです。いざ、災害に遭遇した時に、常に防災意識を持っているのと、そうでない場合では、対処の反応や方法が変わってきます。大きな地震などの災害が起こるたびに、防災に関連した情報が流れます(このコラムもそうですね……)が、無事な時でも、家庭内で防災に関連した話題でコミュニケーションを取っていると、いざという時に役立ちます。「防災の日」(9月1日)と「防災週間」が国で制定されています。
「防災の日」及び「防災週間」について

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