ミュージカル/注目のミュージカルレビュー・開幕レポート

『ノートルダムの鐘』完全レポート 軌跡&最新情報(4ページ目)

*名古屋公演レポートを追記しました*2016年12月に開幕した劇団四季のヒューマン・ミュージカルの傑作『ノートルダムの鐘』。本記事ではオーディションから開幕までのレポートに加え、最新情報も随時追記。観劇前の予習に、観劇後の作品理解にと、じっくりお楽しみください!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

『ノートルダムの鐘』製作発表記者会見レポート

劇団四季『ノートルダムの鐘』キャスト候補の皆さん。(C)Marino Matsushima

劇団四季『ノートルダムの鐘』キャスト候補の皆さん。(C)Marino Matsushima


6月8日、年末に開幕する劇団四季の新作ミュージカル『ノートルダムの鐘』の製作発表が行われました。去る4月に手に汗握る高レベルのオーディションが行われ、その結果発表も兼ねた会見とあって、会場は大盛況。熱気漂う中、まずは劇団四季の吉田智誉樹社長、ディズニーシアトリカル・プロダクションズのフェリペ・ガンバ氏から挨拶。(今回は訳詞が『アラジン』と同じ高橋知伽江さんが担当することも発表。)

ガンバ氏はユゴーの原作本挿絵を掲げつつ「原作はヨーロッパの芸術の波が合理主義からロマン主義へと移行した時代に描かれた。その複雑で、矛盾を抱える人物描写こそが人々の心を掴んできたことを考えると、ファミリー向けに作られた(ハッピーエンディングの)アニメ版はユゴーのダークな原作からは離れてしまったかなという話になったのです」と、舞台版のアプローチがアニメ版とは大きく変わった背景を、そして今回、見せ方としては中世の宗教劇のようなイメージで、コーラスを活用、観客のイマジネーションにも訴えかけた演劇的手法で表現するに至ったと語りました。
原作『ノートルダム・ド・パリ』の挿絵を映し出しながら原作の魅力、舞台化までの道のりを語るディズニー・シアトリカルのガンバ氏。(C)Marino Matsushima

原作『ノートルダム・ド・パリ』の挿絵を映し出しながら原作の魅力、舞台化までの道のりを語るディズニー・シアトリカルのガンバ氏。(C)Marino Matsushima


質疑応答では、アニメ版をご存知の観客に対して「本作を観ることで新たな層(理解)が生まれるのでは」とガンバさん。今後の上演展開については「東京公演は竹芝の再開発という事情もあり、来年6月までを予定。その後地方にゆくか、首都圏の別な劇場で上演するかは未定(券売状況を見て考慮)」、今後の(劇団四季の)方向性について、「『アラジン』等はファミリーに楽しんでいただける演目だが、本作はドラマ部分を重視した演目で、シンフォニックな音楽も美しい。大人の観客層にも訴求できると思う。米国で観た際にはカジモドがはじめ美青年としてあらわれ、肉襦袢(にくじゅばん)などを使いながらハンチバックの姿になってゆく演出が非常に演劇的だと感じた」と吉田社長からの回答がありました。
米国での上演舞台。The Pape Mill Playhouse Company Photo by Jerry Dalia (C)Disney

米国での上演舞台。The Pape Mill Playhouse Company Photo by Jerry Dalia (C)Disney


続いてプロモーションビデオの放映に続き、本作の楽曲披露。3人の候補たちによって披露されました。

「Out There」カジモド役候補 海宝直人さん
海宝直人さん。コンサート等では気持ちよく歌いあげられることの多いナンバーですが、今回は笑顔は殆ど無し。カジモドの自由への憧れの強さを切々と歌い、既に“役”に入っていらっしゃいます。(C)Marino Matsushima

海宝直人さん。コンサート等では気持ちよく歌いあげられることの多いナンバーですが、今回の披露で海宝さんは笑顔は無し。カジモドの自由への憧れを力強く、切々と歌い、既に“役”に入っていらっしゃいます。(C)Marino Matsushima

「God Help The Outcasts」エスメラルダ役候補 岡村美南さん
岡村美南さん。長身が生きる素敵なドレス姿でしっとりと歌唱。本番では一転、ワイルドでセクシーな衣裳をどう着こなすか、も注目されます。(C)Marino Matsushima

岡村美南さん。長身が生きる素敵なドレス姿でしっとりと歌唱。本番では一転、ワイルドでセクシーな衣裳をどう着こなすか、も注目されます。(C)Marino Matsushima

「Made of Stone」カジモド役候補 飯田達郎さん
飯田達郎さん。オーディションでも役への入り込み方は抜群でした。カジモドの屈折と苦悩を描いたこの曲を飯田さんの熱唱で聴けたことで、本作のアニメ版とのカラーの違いを体感した記者も多かったのではないでしょうか。(C)Marino Matsuhima

飯田達郎さん。カジモドの屈折と苦悩を描いたこの曲を飯田さんの熱唱で聴けたことで、本作のアニメ版とのカラーの違いを体感した記者も多かったのではないでしょうか。(C)Marino Matsushima

そして待望のキャスト候補発表です! 登壇者は以下の方々。

カジモド・・・海宝直人さん、飯田達郎さん、田中彰孝さん
フロロー・・・芝清道さん、野中万寿夫さん
エスメラルダ・・・岡村美南さん、宮田愛さん
フィーバス・・・佐久間仁さん、清水大星さん
クロパン・・・阿部よしつぐさん、吉賀陶馬ワイスさん

(上記の方々について、オーディションでの様子を交えつつ解説しましょう。海宝直人さんは『美女と野獣』のチップで子役デビュー、『ライオンキング』ヤングシンバも演じ、成長されてからも『アラジン』タイトルロール、そして『ライオンキング』シンバとディズニー・ミュージカルで大活躍。甘さとシリアスを兼ね備えた持ち味と確かな歌声を武器に、今回の大役に体当たりしてくれそう。飯田達郎さんは劇団屈指のボーカリストの一人として、『キャッツ』ラム・タム・タガー、『オペラ座の怪人』ラウル等で活躍。オーディションでは苦しい体勢も厭わず身体表現も工夫しながら歌い、台詞審査ではオーディションであることを忘れさせる、感動的な演技を披露。この気迫が本番でどう結実するか、楽しみでなりません。田中彰孝さんは当たり役『ライオンキング』シンバのイメージが強いかもしれませんが、『マンマ・ミーア!』スカイ、『コーラスライン』ポールと順調にレパートリーを広げ、今回も力強く物語の芯を演じてくれそうです。

エスメラルダ役の岡村美南さんはオーディション時、『ウェストサイド物語』公演真っ只中。演じていたアニタ役のラテンの空気感を活かしながら、“誰もがひとめで引き寄せられずにいられない”エスメラルダの魅力を見事に漂わせていました。アニタに続く当たり役となる予感・大。宮田愛さんは『美女と野獣』ベル、『クレイジー・フォー・ユー』ポリー等で活躍。台詞審査での一言、一言の説得力が素晴らしく、言語が異なるにも関わらず米国の審査員たちも感じ入っている様子でした。クライマックスでのフィーバスとの対話シーンにご注目を。

その他の方々のオーディションは未見ですので、簡潔に。フロロー役は芝清道さん(『JCS』ユダ、『オペラ座の怪人』怪人)、野中万寿夫さん(『美女と野獣』ガストン、『ライオンキング』スカー)。演技において様々な工夫を重ね、諸役を練り上げて来られたベテランのお二人がキャスティングされたことで、この役が単なる悪役ではない、非常に複雑なキャラクターであることが予感されます。エスメラルダの恋の相手フィーバス役は佐久間仁さん(『JCS』シモンが鮮烈でした)、清水大星さん(『リトルマーメイド』エリック)。男らしさ溢れる二人のフレッシュな存在感に期待しましょう。ジプシーのリーダー役クロパン役には阿部よしつぐさん(入団前には『マザー・テレサ 愛のうた』で好演。入団後は『JCS』等に出演)、吉賀陶馬ワイスさん(『ウェストサイド物語』グラッドハンド役での好演が記憶に新しいところ)。音域が幅広いだけでなく“曲者”キャラクターのこの役をどう演じるか、注目されます。)
 
芝清道さん。(C)Marino Matsushima

芝清道さん。(C)Marino Matsushima

その後、キャスト候補を代表して、芝さんから挨拶。「私自身、本作の音楽を初めて聴いたとき、心が震え、鳥肌が立ちました。原作を読んだとき、胸がいっぱいになりました。このような素晴らしい大作にかかわることができ、光栄です。初日というスタートラインに向かってスタッフ、キャスト一丸となり、全身全霊で稽古に臨み、この作品の感動を多くの皆様にお届けできるよう、全力を尽くしていきたいと思います。12月の開幕をぜひ楽しみにお待ちください」

そして写真撮影の後、お開きとなりました。ますます期待が高まる公演、今後も機会をとらえて様子をレポートしてゆきます!

*次ページで4月18日に行われた本作オーディションの模様をお伝えします!
 
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