メンタルヘルス

GW必見!物足りない休日を脱する精神医学的な考え方

休日の過ごし方は生活のクオリティに関わる大きな要素です。でもせっかくの休日を過ごしていても、なぜか物足りなさを感じている人は意外に少なくないようです。より充実した楽しい休日を過ごすために役立つ、心理社会療法的な考え方をご紹介します。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

休日をより良く過ごすためには社会精神療法もご参考に!

休日の過ごし方は生活のクオリティを左右する大きな要素です。物足りなさを感じている人は心理社会的療法的なアプローチもぜひ試してみてください

せっかくの休日なのに、また何となく終わってしまった……。貴重な休日になぜか物足りなさを感じてしまう人は、意外に少なくないようです。その解決策として、心の病気の治療にも用いる「心理社会的療法的なアプローチ」を知っておくと良いと思います。

そもそも心理社会的療法(psychosocial treatment)とは何か、そして休日をより良く過ごすためにすべきことは何か、さっそく以下でご紹介しましょう。

心の病気を治療する「心理社会的療法」とは?

うつ病や統合失調症などをはじめ、心の病気には実に多くの種類があります。しかしいずれ、その原因が脳内の医学的な問題にあることは共通しています。

心の病気の治療法は薬物療法と心理社会的療法の2つが大きな柱になっています。薬物療法の主な目的は、治療薬で脳内の医学的な問題に対処すること。問題になっている精神症状を可能な限り軽減させていきます。

一方で、心理社会的療法は「認知行動療法」や「グループ療法」など、いくつかタイプがあります。主な目的のひとつは、患者さんがその病気になったあと直面した対人関係など社会生活上の問題に対して、その問題をふくらませる心理的要因や行動内容などに対処していくことです。

例えば、統合失調症を治療するということは、単に抗精神病薬で問題になっている精神病様症状を治療するだけではありません。ひとたび症状が落ち着いたあとは、その状態をいかに維持していくかと同時に、病気の発症前の生活にいかに患者さんが戻っていくか、言い換えれば以前のような対人関係や一日の過ごし方をいかに取り戻していくかということも大きな要素です。心理社会的療法はその過程で重要な役割を果たしています。

休日の満足度を向上させるためには「チェンジ」が必要!

休日が物足りない場合、したいことができなかったといった事も少なくないと思います。そうした場合、何かを「チェンジ」する必要があるかもしれません。

何かを「チェンジ」することは、心理社会的療法でも重要な要素です。もし患者さんの精神症状の増悪に結び付く行動内容があれば、それを「チェンジ」していくことも治療の目的です。

しかし、自分の行動パターンはなかなか変わらないものです。部屋を片付けるのが苦手な人が「次の休日は掃除大会にしよう!」と意気込んでも、いざ休日がくると何となく開いたノートパソコンでネットサーフィンに夢中になり、結局片付けは何も進まなかった……というのはよくある話です。

一般にわたしたちは自覚している以上に、普段通りの行動を毎日繰り返してしまいます。普段と全く同じ行動ならば、なかばうわの空でもできると思います。実際に、脳にかかる負荷は新しく何かをする時よりも、ずっと軽くなっているのんです。上の例でも、大掃除の決意を固めていても、何となくいつも通りにノートパソコンを開き、そのまま何も考えずにネットサーフィン……というのは、「脳」にとっては負荷がかからず、たいへん楽でよいことなのかもしれません。

こういった場合に必要になるのが、「ノートパソコンを手の届かないところへしまう」といった具体的な「チェンジ」です。いつもと同じようにソファに座ったとしても、いつもの場所にノートパソコンがなければ、何となくネットサーフィンを始めることはできません。ふだんと違う違和感に対処するために脳はしっかり作動するでしょう。それから掃除をすることを思い出したなら、そこから掃除を始めてみたいところです。

もし休日にやりたいことがあまりできない場合、このような「チェンジ」を用いて、なかば何も考えずに、ふだん通りに何かをし始めて過ごすことを防いでみてください。

休日を充実させるためには心理社会的スキルも意識してみて!

楽しい休日のイメージは人によって違うものですが、街を歩く若いカップルや、レストランのテーブルを家族でにこやかに囲む姿は楽しそうに映るものです。

ただ、そうした休日には、ある程度、心理社会的なスキルも必要になってきます。街をカップルで楽しく歩くためには、前もってその異性と親密になっている必要がありますし、レストランのテーブルを家族で囲むためには、普段から良好な家族関係が必要でしょう。

その基礎になる心理社会的なスキルは、周りの環境と長年の交わりによって、次第に身についていくもの。人の心理社会的発達は小児期より始まり、大人になったあともずっと続いていきますが、思春期そして成人前期の10代後半から20代はとりわけ重要な時期です。

もしこの時期に深刻な病気を発症すると、以後社会生活を送る上で必要なスキルが充分身につかない可能性もあります。実際、心の病気のなかでも統合失調症などはこの時期に初発が多く、そのため心理社会的なスキルが不足しやすくなります。学校生活や職場で自分の力を充分出せない、休日を楽しく過ごせない……といった問題につながる可能性もあります。そのため心理社会的療法は患者さんに心理社会的スキルが不足していれば、それを伸ばしていくことにも重点がおかれます。

生活のクオリティを向上させるために、心理社会的スキルを伸ばしていくという心理社会的療法のアプローチは、心の病気に無縁の人も十分参考になると思います。

実際に心理社会的療法を患者さんに行う際、良い治療効果を得るためには、いくつかの前提があります。それは個人の病状によりますが、一般的には患者さんが社会生活で直面している問題をある程度自分でも分かっていること、問題を解決していくためには治療が必要なこともある程度理解していること、そして治療を行なう専門家と患者さんの間の良好な治療関係といった要素です。

もしせっかくの休日に充実感がもてない場合、その要因だけでなく、その現状の問題点もはっきり認識できていない場合もあるかもしれません。心理社会的スキルといったことは、ふだんあまり意識しないことでしょうが、心理社会的スキルの観点から自分の問題を改めて考えてみると、解決のヒントが意外にはっきり見えてくるかもしれません。

以上、今回は心理社会的療法をテーマにしてみましたが、ぜひこのアプローチ法を「せっかくの休日をもっと充実させる!」という生活のクオリティ向上に取り入れてみてください。
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