世界的に見て低い日本の禁煙意識

日本の禁煙意識は低い

日本の禁煙意識は低い

2016年にJTが行った日本の喫煙率調査は、男性30%、女性10%という結果でした。一見低そうな値ですが、特に女性は対前年比で6万人も増加しており、日本は海外と比べてもかなり禁煙に対する意識の低い国に入っています。

1988年以来すべての五輪では、タバコの広告がなく、受動喫煙もない環境で開催されていることをご存知ですか。2020年、夏季五輪が日本で開催されます。世界保健機関(WHO)と国際オリンピック委員会(IOC)は、タバコのない五輪を実現しようということで合意しています。それを日本で実現させるためには、まだまだ改善の余地があるのが現状です。

今回は、そんな世界的動きを踏まえつつ、改めて美容の邪魔をするタバコについて考える機会を持っていただきたく、皮膚科医としてお話ししたいと思います。


喫煙により肌がダメージを受けていることをご存じですか?

主流煙、副流煙、呼出煙

喫煙者は、主流煙、副流煙、呼出煙、3種類全てのタバコの煙の害を受けます。

もっと美肌になりたい!としっかり美容皮膚科に通院されている人の中にも、背景に喫煙習慣をお持ちの場合が多くいます。

ガイドは日々美容に携わり、医療技術のアップをはかり精一杯治療に取り組んでいますが、治療をお受けになる人が喫煙している場合にはその効果が現れにくいため、残念に思うことがあります。

タバコに含まれている約200種類の化学物質を毎日吸っている場合、平均寿命が10歳以上短くなるのですから、お肌の寿命も吸わない方よりかなり早まること、つまり早く老化が起こることはお分かりかと思います。

「禁煙」は多くの疾病予防効果ばかりでなく、私たちが携わる美容の観点からもとてもとても大切な美肌キープの要素であると考えています。 今回は、禁煙外来も行う美容皮膚科医(こんな皮膚科医は意外と少ないものです)の立場として喫煙による肌のダメージについてお話しします。


喫煙は美肌を遠ざけるばかり!

タバコは有害

タバコは綺麗を遠ざける

喫煙は自律神経の乱れやニコチンの影響によって血管の収縮を起こし、血流量が低下し、細胞の障害を受けることになります。

また、喫煙者の吐く息に多く含まれる一酸化炭素は、酸素の結合部位を占領してしまうため、末梢まで十分な酸素が届けられなくなり、慢性的な酸素欠乏の状態となってしまうのです。

美肌のために皆さんがよく摂取されるビタミンCも、喫煙によって生じた活性酸素の消去のために大量に消費されるため、健康な肌を維持する必要量を確保することが難しくなります。


双子の顔が喫煙習慣でこんなに変わる!

喫煙が顔貌に及ぼす影響については、喫煙・非喫煙の双子姉妹間での皮膚老化現象の違いがわかりやすいと思います。

スモーカズフェイス

双子の姉妹。生活習慣でこれだけ外見に変化が現れてくる。(出展:American Society of Plastic Surgeons, 2009)

双子の写真をご覧ください。右側の女性は、紫外線にあたる機会が多いことに加え、喫煙歴があります。同じ歳とは思えないほど、顔貌に違いが見られます。

喫煙歴のある人の特徴は「顔の深いシワと小ジワ(口角や目じりから放射状に広が るしわ、頬の深いシワ、頬や下あごの無数の浅い小ジワ)、頬の輪郭の出っ張りが目立つようにな り、徐々にやつれていく顔、萎縮して灰色にくすんだ肌、オレンジ色、紫色、赤色のまだら模様のような多血症顔貌のうち1項目を満たすもの」とされています。

その顔貌を「スモーカーズフェイス」さらに、深いシワを「スモーカーズリンクル」、口回りの目立つ縦ジワを「スモーカーズライン」、顔色が悪くシワの目立つ顔貌を「シガレット・スキン」と呼ぶこともあります。

一般的に、ヘビースモーカーでは5倍程度シワの発生頻度が高くなり、50歳で65歳程度の肌になると言われ、紫外線障害と同じ程度のシワを形成すると言われています。またお顔の印象にとって大切な首からデコルテラインのしわも増えるため、ガイドはそれを「スモーカーズネック」と呼んでいます。

※参考文献
薗 はじめ:スモーカーズフェイス.禁煙学 改訂2版,日本禁煙学会 編,p.63-65,南山堂,2010. Model D : Smoker’s face : an underrated clinical skin Br Med J (Clin Res Ed),291 (6511) : 1760-1762,1985.


健康的な赤い口唇が、喫煙で黒くなる!

「ブラックリップ」をご存じでしょうか。唇の色が不自然に黒ずんでいる、そんな人を見たことはありませんか。まれにアトピー性皮膚炎で下唇が黒くなることもありますが、一般的に、喫煙していると黒ずんでくることがあります。特に下唇が黒く変色します。こういった色が変化した唇は「ブラック・リップ」と言われています。

喫煙による口唇の変化

ブラックリップ(画像提供:作田学)

これはニコチンによるメラノサイトの刺激、末梢の循環不良による血管収縮などが原因と考えられています。禁煙すると2~3か月で内側から赤みが出てきますが、ある程度変色の進んだものは黒いまま戻りません。

また、重度の「受動喫煙」(タバコの先から出る煙である「副流煙」や、喫煙者が吐き出す煙である「呼出煙」にさらされたり、吸い込むこと)を受けていた場合も程度はあれど同じように下唇が黒く変色することがあるので、喫煙者のいる環境で生活をする場合も注意が必要です。


喫煙時のお口の中は、「水を入れた灰皿」状態!

灰皿に溜まった水

喫煙者の口の中は、水を張った灰皿と同じ状態です。あなたはこの水を飲めますか?

水を張った灰皿にタバコをつけておくとどうなりますか。水が茶色くなるのはご存じですね。では、このタバコで茶色く染まった水を飲むことはできるでしょうか。普通の人は到底できないですよね。

お口の中には唾液がありますが、タバコを吸った後その唾液はどこにいくか考えてみてください。すべての唾液を吐き出すことは不可能です。唾液は自然と体内に取り込まれていきます。ということで、タバコによって引き起こされるのは喉頭がん、肺がんだけではありません。食道がんや胃がんをはじめ、肝臓がん、腎臓がんなどほぼ全身のがんの要因にもなるのです。

喫煙者に多大な害をもたらすタバコですが、喫煙者と一緒にいる非喫煙者への影響はどうなのでしょうか。「副流煙」と「呼出煙」について解説します。

空気清浄器で受動喫煙から逃れられる?

タバコの煙には有害物質がたくさん

タバコの煙には空気清浄器で取り除けない有害物質がたくさん。

「うちには空気清浄器があるから大丈夫!」なんて思っている方も多いかもしれませんが、タバコの煙の有害成分は、ほとんどが気体(ガス)とPM2.5などの極小微粒子で、空気清浄器で除去できるのは、微細な粒子(固体)ですので、タバコの煙に含まれる有害物質を完全に除去することは不可能なのです。

機種によっては有害物質が空気清浄器を素通りしてることもあります。ブラックリップの項でも触れましたが、副流煙は主流煙に比べて含まれる化学物質の濃度が高いことが明らかであり、受動喫煙の問題は軽視できるものではありません。特に発がん性リスクのあるベンゾピレンは、紫外線のうちUVA(紫外線A波)を照射することで、強い刺激物質に変化して肌に炎症を引き起こすことが知られています。最近「サードハンドスモーキング」と呼ばれる、壁やカーテン、ソファについた残留物質による健康被害も問題視されています。


禁煙は医療機関で!

禁煙治療

禁煙は自分だけのためではありません。医療機関に相談しましょう。

はじめは内科系外来で行っていることが多かった「禁煙外来」ですが、最近は他の科でも治療が受けられるようになってきました。私のクリニックでも呼気の一酸化炭素を計測し、カウンセリングをお受けいただいた上で、禁煙治療薬の処方を行っております。

何しろ日本では基準を満たせば禁煙の治療が保険適応になりますので、喫煙者が禁煙するにあたり恵まれた環境と言えます。

まずは喫煙が健康はもちろん、美容にも悪影響を及ぼすことをしっかり認識していただき、お気軽に相談していただければと思います。禁煙学会認定医の正しい知識、方法であなたにお答えいたします。「禁煙は愛から」のテーマですすめるその「禁煙外来」については、また次回お話しさせていただきます。これからもガイドは「禁煙推進活動」を通して、あなたの美肌を応援していきます。


※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※個人の体質、また、誤った方法による実践に起因して肌荒れや不調を引き起こす場合があります。実践の際には、必ず自身の体質及び健康状態を十分に考慮し、正しい方法で行ってください。また、全ての方への有効性を保証するものではありません。