自分の感情がわからない「失感情症(アレキシサイミア)とは
ストレスフルな状況なのに、自分のストレスがわからない……
「アレキシサイミア」とは米国の精神科医、シフネオスが提唱した概念であり、自分の感情を意識できず、感情を言葉や態度によって表現しにくい状態を意味します。「失感情言語化症」「失感情表現症」などと呼ばれることもあります。
失感情症の状態にある人々は、過剰なストレス状況下でもつらい感情を意識しにくいため、状況を改善させたり、周りに助けを求めたりせず、極限まで頑張り続けてしまうことがあります。
その結果、身体に過剰な負荷がかかってしまい、胃潰瘍や潰瘍性大腸炎、狭心症、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などの「心身症」(心理的因子が影響して発症する身体疾患)を発症することがあります。
ストレスが自覚できず、心のつらさが「体の病気」に……
心身症を発症すると胃の痛みを感じて「胃腸科」へ、咳が治まらないので「呼吸器科」へというように、まず内科を受診することが多いものです。しかし、原因となるストレスを軽減しない限り症状は改善せず、対症療法で一時的によくなっても再び悪化してしまうことが少なくありません。こうしたなか、医師から心療内科を受診することを勧められる方もいます。それでは、失感情症にどのようにアプローチしていくべきかを考えてみましょう。
失感情症の克服法・治療法・アプローチ法
まずは心身の緊張を楽にすることが大切
医師やカウンセラーに何がつらいのかを聞かれても、自分がどう感じているのかが分からないので答えようがない。事実については述べるが、「そのときにどう感じたの?」と質問されても答えられない。治療者との間に信頼関係を築けない。こうした状況が生じやすいためです。
そのため、身体にアプローチしてストレスを緩和する方法がしばしば採用されます。たとえば、自己催眠法である自律訓練法や呼吸法などのリラクセーション法で心身の緊張を解消する。こういった方法を続けることでストレスを和らげ、症状を楽にしていくことがあります。
失感情症は、人によって原因が異なります。何らかのトラウマが影響している場合には、長い時間をかけて心の傷を癒していくアプローチが有用になることもあります。
いずれにしても、身体の検査で異常が見つからず、対症療法などで治療をしても症状が長く改善しない場合には、失感情症(アレキシサイミア)の可能性があるかもしれませんので、心療内科医や心理カウンセラーに相談されるのも一つの手です。