パワーハラスメントとは……範囲が広く、自覚しにくいものも多い「パワハラ」
私生活のことについて意見されると、何となく負担……それもパワハラかも?
そもそも「パワハラ」に相当する行為には、以下の6つのタイプがあります。
(1)身体的な攻撃(暴行・傷害)
(2)精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
(3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
(4)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
(5)過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
(6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
これらの中で、6の「個の侵害」(プライバシーの侵害)は特に理解しにくく、無自覚のうちに加害者や被害者になっている例が多いように感じます。
「個の侵害」にあたる行為とは? 3つのパワハラ事例を紹介
「個の侵害」とは、他人のプライバシーに過剰に干渉することです。たとえば、上司からプライベートのことについて口出しをされたり、プライベートでの付き合いを強要されたりする場合、「個の侵害」にあたる可能性があります。たとえば、次のようなことに心当たりはありませんか?■個の侵害にあたるパワハラ例1:有給休暇の使い方に口を挟み、理由次第で申請を却下する
有給休暇を申請したら、「休暇取得の理由は?」としつこく聞かれた。「友人と旅行に行きます」と答えたら、「なぜ平日に旅行に行くの?」「その友人とはどんな人?」などとしつこく聞かれ、業務に支障のある時期でもないのに「そんな理由では認められない」と断られた。
■個の侵害にあたるパワハラ例2:プライベートの交際・交友関係を詮索する
忘年会の席で交際相手について聞かれ、さらには「何年付き合ってるの?」「どこでデートとしているの?」などとしつこく聞かれた。
■個の侵害にあたるパワハラ例3:個人のSNSなどを閲覧し、接触してくる
個人のSNSやツイッターを上司がよくチェックしており、そこで書いたことについてたびたび指摘された。また、職場のスタッフ同士がSNSで「友達申請」をしあうことを奨励されている。
職場の人に上のようなことをされて不愉快に感じるようなら、「個の侵害」というパワハラにあたるかもしれません。次は、上記の3例のパワハラ発生の防ぎ方と発生した時の対処法についてお伝えします。
例1:休暇の過ごし方を聞かれても、答える義務はない
有給休暇の取得を申請したら、理由をしつこく聞かれたが、答えたくなければ答える必要はない
使用者側も、有給休暇の取得理由によって申請を却下することはできません(ただし、繁忙期や複数の人が同日に休暇を取得した場合など、事業の正常な運営が妨げられる場合には、使用者は他の時季に有給休暇を与えることができます)。
したがって、有給休暇の申請でしつこく理由を聞かれたら、「所用がありまして」と曖昧に伝えてもかまわないでしょう。それでもくわしい理由の説明を求められた場合、上司が法律を理解していない可能性があるので、「労働基準法第39条」の内容を伝えて話し合ってみてはいかがでしょうか?
例2:プライベートの交友関係についても、答える義務はない
「例2」では、後輩が先輩から個人的な交友関係について質問され、困っています。職場では本人が希望しないかぎり、プライベートの交友関係について話す必要はありません。もちろん、信頼関係を築くには、個人的な話題を通じて雑談を交わすことも大切でしょう。しかし、それは本人が「自分のことをその人に伝えたい」と思っていることが前提であり、強要されて答えるべきものではありません。
また、そもそも興味本位で個人の交友関係を詮索されることは、とても不愉快なことでしょう。詮索され、しつこく意見されたら、「プライベートのことなので」と「個の侵害」にあたると感じられることを示してみてはいかがでしょうか?
例3:SNSやブログを通じた「ソーシャルハラスメント」
インターネット上で、職場の人とつながることを負担に思う人は多い
それらは、そもそもプライベート時に公開している情報であり、その情報を職場の人に閲覧され、インターネット上での交友を求められてしまうと気が休まらないと感じる人もいるでしょう。
もちろん、本人が職場の人とSNS上でつながることを心から歓迎しているのであれば話は別です。しかし、口では歓迎の意を示していても、本音では「断りにくいから仕方なくそう言っていしまった」「OKしたものの、やっぱりつながるのは負担」と思っているかもしれません。
したがって、職場の人のSNSに安易にアクセスし、つながりを持とうとすると「個の侵害」と受け止められる可能性があることを、あらかじめ認識しておいた方がよいでしょう。
「個の侵害」タイプのパワハラを理解し合うことが対策の第一歩
「個の侵害」のパワハラは、一見分かりにくい嫌がらせ行為です。多くの場合、行為者は自分の行為を迷惑だと思われていることにまったく気づいていません。したがって、職場の中で何が「個の侵害」にあたるのかを話し合い、共通の理解を持っておくことはとても大切です。負担に思っていることを伝えにくいなら、まずは職場のハラスメント相談担当者や人事担当者に相談してみるとよいでしょう。職場に相談できる人がいないなら、公共あるいは民間のパワハラ相談窓口で相談してみるのも一案です。