アドバイス1 定期的にライフプランをチェックしよう
親御さんの負債を返済しているということですから、住宅ローンの返済と重なれば確かに大変ではありますが、おそらくご主人の年収は700万円超。そこに、奥様のパート収入が加算されるわけですから、そんなにきびしい家計状況にはならないはずです。住宅ローンも返済でき、教育資金も十分用意できるでしょう。ご主人の昇給を年0.5%として試算してみると、親御さんへの返済が終了する2年後以降、年間収支が200万円弱のプラスでずっと推移していきます。お子さんの進路ですが、高校まで公立とすれば、一番上のお子さんの大学進学あたりから、貯蓄ペースは落ちますが、学資保険もありますし、ご主人が定年するまで年間収支がマイナスになることはないでしょう。
ただし、定年を60歳とすれば、その時点でまだ2人のお子さんが大学生ですから、再就職されても収入によっては赤字になる年も出てきます。それでも、退職金が例えば2000万円受け取れるとすれば、その時点で資産は5000万円に達します(投資商品は運用利回り0%とする)。公的年金や、定年後もおそらく働かれることを考慮すれば、老後資金もさほど心配する必要はありません。
とは言え、ご主人も言われるとおり、予定どおりに物事が進むとは限りません。先の試算も、クルマの買い替えや家族での旅行といった、不定期な支出は盛り込んでいません。また、お子様の教育費も、進路によって大きく変わります。したがって、年に一度でいいですから、自分たちの貯蓄状況や家計収支をチェックし、必要に応じてライフプランを見直していくことが大切となります。
アドバイス2 収入の損得よりも本人の意向を優先させたい
奥様の働き方については、現在のパート収入と社会保険料や税金の損得勘定で言えば、おそらくトントンだと思います。ただし、ご主人の勤務先で扶養手当が付くのであれば、現状の方が損となる可能性が高いと思います。ただし、本当に考慮すべきは、収入の損得ではなく「妻の働き方」です。どういう状況で働きたいのかという、奥様の意向をまずは優先させるべきでしょう。
もしかしたら、お子さんとの時間をより多く取りたいという理由で正社員からパートに変わったのかもしれません。そういう意向を職場が聞き入れてくれたのなら、今後また正社員に復帰できる可能性もあるのでは。
実際、小さいお子さん3人を育てながら正社員で勤務し続けるのは、相当に大変なはずです。もし、奥様の意向をご存じないのなら、まずはそこを確認した上で判断することが重要だと思います。
また、奥様の働き方に関連して「10年間で嫁さんが教育資金600万円を貯蓄する」とありますが、パート収入からこの貯蓄目標は、そう簡単ではありません。ご主人が10年後に1000万円を貯めて繰上返済をすることについては、おそらく可能ですし、ローン減税や現在の金利を考慮すれば、効率的な返済方法と言えます。ですが、奥様の貯蓄目標については調整が必要でしょう。
アドバイス3 妻の死亡保障は原則不要、医療保障は最小限に
家計について、大きく無駄があると思える費目はありません。しいて言えば、通信費がやや割高でしょうか。契約プランが古いままという可能性があります。見直せば何割か安くなるはずです。保険に関して、まず奥様ですが、死亡保障を確保する必要性は低いと考えていいでしょう。基本的に働き手はご主人ですし、仮に奥様に万が一のことがあった場合、末子が満18歳に到達する年度の末日(3月31日)まで、夫も遺族年金を受給できるようになりました。遺族基礎年金の年金額は、78万100円+子の加算(第1子・第2子22万4500円、第3子7万4800円:平成27年度)。
医療保障は、高額療養費などの公的な制度がありますし、また、まとまった貯蓄もこれからできますので、単体の医療保険や共済で、最小限(入院5000円程度)確保すればいいと思います。
また、ご主人加入の保険ですが、終身保険に付加している医療特約が気になります。65歳以降も継続を希望する場合、それまで支払っていた特約保険料よりも保険料がアップするというタイプであれば、今から特約部分だけ解約してもいいでしょう。医療保障も必要と考えるなら、単体の医療保険で新たに終身保障を確保しておくと合理的だと思います。
教えてくれたのは……
平野 泰嗣(ひらの やすし)さん
取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ
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