狭隘な道路に面する小規模な木造店舗併用住宅の防災を強化
「荏原町駅前地区防災街区整備事業」で、18階建て免震タワーに
東急大井町線「荏原町」駅南口に隣接した約0.1ヘクタールのエリアは、築50年以上の古い建物が狭隘な道路を挟んで狭小敷地に高密度に密集する街区で、長く防災面の課題を抱えていました。密集市街地において防災機能の確保と土地の健全な利用を図る防災街区整備事業として共同化を実施。優れた防災性能を有する都市型住宅と商業施設を整備し、良質な歩道空間の確保などによって都市環境の向上が図られました。事業をサポートしたのがこうした建替えプロジェクトに多くの実績を持つ一般財団法人首都圏不燃建築公社と三菱地所レジデンス。免震構造採用の18階建て55戸(販売47戸)のマンション「ザ・パークハウス 品川荏原町」として今春竣工しました。荏原町駅前地区防災街区整備事業準備組合が設立したのが東日本大震災の一年後の2012年3月。もともと共同化の検討は1989年頃からあったとのことですが、東日本大震災で耐震化が喫緊の課題になったことや木密地域不燃化10年プロジェクトの不燃化特区のコア事業に位置づけられたこともあり、補助金による助成もあり、比較的短期間に事業が進行しました。
建物の3階部分に免震装置を設けた中間免震構造を採用。東日本大震災後のプランニングだったこともあり、耐震性の確保は住民の強い希望だったようです。街区外周部には、歩道状空地を設置し密集市街地の課題も解消。駅からの動線をスムーズにするため貫通通路を一階に設け利便性を高めるとともに商業店舗が入る1階・2階の回遊性を確保します。駅前立地でもあり、2階の店舗には駅方面からの階段をつくることでダイレクトにアクセスできます。
分譲住戸は、2014年11月に全戸即日登録申込完売。駅前立地でかつ生活利便性の高い立地環境や全戸角部屋で免震構造採用の開放的なつくりが評価されています。また、防災備蓄倉庫や防火水槽、帰宅困難者の受け入れ可能スペースも確保。街の防災機能の向上の役割も果たしています。
これだけ、ユーザーにも評価され街の防災強化にもつながる共同化事業。もっと広まっても良いと思いますが、なかなか進まないのが現状です。組合の理事の方にお話しを伺うと、「参加者のニーズは様々。資金面もネックだった」とのこと。また、工事期間中の仮店舗の確保も課題の一つ。特に、賑わいある商店街だと良い店舗を見つけるのは難しいという。こうした状況を反映してか、同様の課題を抱える地域からの見学依頼も多いといいます。
こうした街の整備の手法としては、市街地再開発事業が代表的なものに挙げられますが、首都圏エリアで活発に行われる第一種市街地再開発事業も地方都市ではあまり目立ちません。再開発には、経済性も必要なので一定の事業性が無いとなかなか取り組むのは難しいと言えるでしょう。
「中野」駅徒歩6分に制震構造採用の24階建てタワーが誕生
再開発によって、街の注目度が大きく向上
「ザ・パークハウス 中野タワー」(三菱地所レジデンス 一般財団法人首都圏不燃建築公社)は、JR中央線「中野」駅徒歩6分に誕生する地上24階建て全178戸(うち事業協力者住戸29戸)他に店舗4戸の大規模タワーマンションです。「中野」駅周辺は、旧警察大学校の約16haに及ぶ地区が再開発によって、オフィスビル「中野セントラルパーク」、「明治大学」や「早稲田大学 中野国際コミュニティプラザ」等が開設。防災公園「中野四季の森公園」も整備され、賑わいと潤いある街へと変貌しました。さらに、中野区役所・中野サンプラザの再整備事業をはじめ複数の再開発計画が進行中。街の進化に注目が集まっています。「ザ・パークハウス 中野タワー」は、中野ブロードウェイの隣接街区の建て替え事業。アーティスティックな特徴的なフォルムの建物に生まれ変わります。共用部は、1階にメンバーズラウンジ、21階にはパーティールーム兼ゲストルームのスカイスイートを設置。共用部のデザイン監修は、ロイヤルパークホテルズアンドリゾーツが担当。共用部デザインは、メック・デザイン・インターナショナルが行います。共に三菱地所グループで、ホテルと同様のクオリティの高い空間づくりを演出します。稀少立地ならではのこだわりを感じます。専有部の特徴は、新宿などの都心を一望する開放的な住空間。ワイドスパンプランなど居住性の高さが印象的です。設備配管スペースを共用廊下側に設け、主開口部の柱をアウトフレームにしたことも快適性に寄与しています。
再開発による注目度のアップで、価格も相応の設定ですが既に多くの反響を集めています。品川区同様に、中野区も密集住宅地の多いエリアだけに、街区整備にもつながるタワーマンションへの関心の高さが感じられます。売主は、三菱地所レジデンス株式会社、一般財団法人首都圏不燃建築公社の2社で「ザ・パークハウス 品川荏原町」と同じです(事業への補助金はない)。利用価値の高い立地であることが建て替え促進の要件であることを実感します。
共同化により街の防災力が強化されることは、地域にとってもプラスですが、供給物件がなかなか増えないことを踏まえるとそのハードルは決して低くないと言えるでしょう。そう考えると、中心市街地の建て替えプロジェクトは、希少性が高く防災面から見ても買い手のメリットは大きいと感じます。地域のニーズに沿った建替えプロジェクトで誕生するマンションに注目しては、いかがでしょうか。