男の靴・スニーカー

イタリアの名門a.testoni 2016年春夏の新作靴

今回はイタリアの紳士靴の名門中の名門、a.testoniの最新作からいくつかご紹介します。ここの紳士靴は適度にモードでありながら落ち着いた印象を持たれがち。ただ近年ではそれに加え、戦前から続くメーカーだから有する「普遍的な質の高さ」を深く探求する傾向が顕著になっています。確かに明るいだけでなく、もの凄く真面目な靴なのです!

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

イタリア紳士靴の老舗中の老舗「ア・テストーニ」とは

ブラックラベルのタグ

a.testoniのフラッグシップレンジ「ブラックラベル」の靴のソックシートに付くブランドタグ。「BOLOGNA」のサインが、伝統を守り抜くメーカーの証の如く誇らしげです。

「第二次大戦前から長く存続するイタリアの紳士靴メーカー」と言うと、読者の皆さんは真っ先にどこを思い浮かべるでしょうか? 実はこれ、一見簡単そうで意外と回答を思い浮かべられない質問の典型です。あそこは1970年の代の創業だし、あそこは自社工場を持たない単なるブランドだし、いやあそこは婦人靴主体だし……。

そんな質問が来たら絶対に答えに出さなくてはいけないメーカーが、1929年にボローニャで創業したa.testoni(ア・テストーニ)。創業地でピンと来る方もいらっしゃるでしょうが、「足への密着感に優れ、しかも足音が立ち難い底付け」として知られるボロネーゼ製法を得意とする、世界的にもファンの多い紳士靴メーカーです。例えば20世紀後半の三大テノール歌手の一人、ボローニャに程近いモデナ生まれの「キング・オブ・ハイC(ツェー)」ことルチアーノ・パバロッティも、生前は地元メーカーたるここの靴の愛用者。あの巨体を支えていたってことか……。

我が国では医者や弁護士、それに大手企業の重役クラスを代表とするエグゼクティブ層向けとして語られる場合が多いa.testoni。でも近年、特にここ1・2年は固有の伝統や「らしさ」を活かしつつ、より幅広い層に深く訴える作品が以前に比べかなり目立つようになっています。何と言うのか、デザインにも技術的にも守るべきはしっかり守り抜くと共に、「迎合ではない攻め」の姿勢を強く感じるのです。そんな活気を感じるa.testoniのこの春夏の新作、ちょっと見てみましょうか!

【Contents】
革質に注目。代表モデル「ブラックラベル」の最新作
アッパーにも底面にも魅せられる、「ニューストゥディアムライン」
夏の休日が待ち遠しくなる、メッシュの「ニューストゥディアムライン」


革質に注目。代表モデル「ブラックラベル」の最新作

ブラックラベルundefinedフルブローグ

ブラックラベルの最新作の内羽根式フルブローグ。 このモデルはa.testoniの定番スタイルですが、木型のリファインで例えば英国靴派の人でも履きこなせる普遍性を有するようになりました。白麻の3ピースと合わせたい!
 

最初にご紹介するのは、a.testoniのフラッグシップたる「ブラックラベル」の内羽根式フルブローグの新色。

同メーカーの長年の「顔」的存在ですが、少し前に木型をややショートノーズなものに変更してから、正に顔立ちが俄然引き締まり普遍性が増しました。

内羽根式でありながら鳩目周りのブローギングがかかとまで伸びるバルモラルスタイルを採用し、革の切替し部の縫い目に採用されたカンガルー革製のシャドーステッチ状の縁取り「フィレットーネ」が、デザイン全体の品を高めています。
フィレットーネ

カンガルー革による縫い目の「フィレットーネ」の一例をアップで。とにかく丁寧な縫製!リネン生地風の型押しが施されたスエードの質感にもご注目あれ。


フラッグシップレンジですので底付けはもちろん、a.testoniの得意科目であるボロネーゼ製法。アッパーのデザインとのバランスを取るべくコバには出し縫いが、そしてその上の際には「スパイラル」と呼ばれる渦巻き状の装飾が施され、このモデルが持つ躍動感を一層強調するかのようです。ライニングは柔らかく密着力に優れたキッドスキンなので、特に前半分は靴と言うより靴下のように足をフワッと包み込む一方、大き目のシャンクや長めの月型芯を採用するなど、後半分は思いの外堅牢な構造となっているのも意外と知られていない特徴でしょう。
スパイラル

コバに施される装飾「スパイラル」。これが見えると、「ア・テストーニだ!」とすぐに判別できる、同社のアイコン的な意匠でもあります。


アッパーの色は今季のテーマカラーであるヌード、つまり肌の色を纏ったカーフとリネン風カーフスエードの同色異素材コンビで、特に後者、つまり「麻の生地」に似せたスエードの質感に注目です。

布地と見間違うばかりの型押しが施されたスエードを用いるのは、昨今のイタリア靴での一大トレンド。a.testoniでも今季はリネン風だけでなくジーンズ風やキャンバス風など様々なものを積極的に採用し、スエードの新たな魅力を引き出しています。それにしてもアッパーが薄色のコンビシューズ、しかも繊細な質感のものをここまで汚さず、しかも細かく丁寧に縫い上げてしまう職人の丁寧な仕事ぶり! 他のブランドではなかなかお目に掛かれませんよ。

【製品情報】
a.testoni ブラックラベル M11559

アッパー:カーフ*リネン風カーフスエードのコンビ
色:ヌード
サイズ:5 1/2~9(ハーフサイズピッチ)
税込み価格:13万5000円



アッパーにも底面にも魅せられる、「ニューストゥディアムライン」

ニューストゥディアムラインundefinedコンビシューズ

デニムカラーがなんとも爽快なニューストゥディアムラインの一足。キャップトウ? いやブラインドフルブローグ? こういうユーモアこそイタリアの紳士靴らしいところです。スエード部はアンラインドなのでフィット感抜群。

ブラックラベルの靴に比べカジュアル感やトレンド性を意識した「ニューストゥディアムライン」は、a.testoniの中でも今最も勢いを感じるレンジ。そこからはまず、やはり上のような同色異素材のコンビシューズをご紹介しましょう。全体的なフォルムはノーズが短めのラウンドトウで、一見するとキャップトウなのですが、よーく見るとブラインドフルブローグ的なステッチも存在するユーモア溢れるデザインが目を惹きます。

ですがこの靴で最も注目すべきは底面! アウトソールのメイン素材である透明樹脂製「クリスタルソール」は、耐水性・耐摩耗性に加えグリップ性にも優れており、しかも一つ上のレザーソール層にオプティカル柄をプリントしシースルーで覗かせているのが何とも近未来的なのです。ソールが減っても柄は見える! 底付けはイタリア靴の王道たるマッケイ製法で、つま先部だけはリペアのし易さを考慮し釘で補強されたレザーとするなど、老舗の紳士靴メーカーたる細かな配慮も勿論忘れてはいません。
クリスタルソールundefined全体感

透明な樹脂を用いたクリスタルソールは、遠目では表面にオプティカル柄が直接プリントされているように見えるのですが……


細かい型押しにアンティークフィニッシングを施したカーフと、とにかくソフトなアンラインド仕様のスエードとを用いた硬軟のコントラストは単に美しいのみならず、これで構造上の安定性も確保している訳で、このような堅実な設計は流石です。因みにa.testoniの紳士靴はほぼ全てのモデルで、内側の最後端のライニングはスエード張り。これは足のかかとをしっかりホールドさせるための工夫で、華やかな見た目に比べ設計は意外なまでに精緻であることの典型でしょう。
クリスタルソールundefinedアップで

オプティカル柄は一つ上の層にプリントされていることが、この写真でお分かりでしょう。型押しレザーの繊細な仕上がりにも唸らされます。

【製品情報】
a.testoni ニューストゥディアム M47141

アッパー:カーフ(エンボス加工)*カーフスエードのコンビ
色:ジーンズ
サイズ:5 1/2~9 1/2(ハーフサイズピッチ)
税込み価格:8万9640円



夏の休日が待ち遠しくなる、メッシュの「ニューストゥディアムライン」

ニューストゥディアムラインundefinedローファー

ニューストゥディアムラインのオールメッシュ仕様。僅かに赤みを帯びたこげ茶色は、合わせる服をあまり選ばないはず。バッファローレザーのフワッとした質感を、一度は素足で味わってみて! 

「ニューストゥディアムライン」からはもう一足、夏の休日にぴったりのローファーをご紹介しましょうか。アッパーはご覧のとおり見事なまでのオールメッシュ仕様、でももっとよーくチェックしていただきたい。単なる四角形同士の編み込みではなく、四角形と八角形の2通りでの細かなメッシュ構造なのです。しかも柔らかさと独特のシボが特徴のバッファロー、つまり水牛の革を用いるのを通じ靴の立体感がいっそう強調されているのです。

底付けそのものはセメント式ですが、側面は真夏のカジュアルシューズの代名詞・エスパドリーユの意匠を巧みに移植したものになっています。そして底面はスニーカー的なラバーソールなので、例えば旅先でのスコールや、日本の都心部で深刻化しつつあるゲリラ豪雨に突如見舞われてしまっても快適に歩けること確実ですよ。それにしてもこの種のアレンジをやらせるとやっぱり、ノリの良いイタリアンスピリットが綺麗に出ますなぁ……他の国の靴メーカーではなかなか思い浮かばないアイデアです。
エスパドリーユ風のコバ

まるでエスパドリーユみたいなコバ! 更には八角形と四角形との複雑なメッシュ構成が、リゾートの気分にさせてくれます。


せっかくのリゾート仕様ですので、着用時の爽快感を徹底すべくライニングにはパンチングレザーを用いているのも、手抜かりのない設計の証拠。この靴に限らずa.testoni では、アッパーがメッシュ仕様だとライニングはパンチングレザーかアンラインドにするのがお約束だそうで、この辺りにも世界中の顧客からのフィードバックが活かされているのでしょう。作り手の思いを体感するには、場が許されるのであればできれば素足で履いて欲しいのですが、それは流石に…… とお考えの方でも、なるべく薄くて吸排湿性の高い靴下と合わせてご着用いただきたい一足です。

【製品情報】
a.testoni ニューストゥディアム M47107

アッパー:バッファローメッシュ
色:モロ(赤み掛かったダークブラウン)
サイズ:5~9(ハーフサイズピッチ)
税込み価格:14万9040円

ローファーundefinedソール

大きなロゴサインが施されたアウトソールは、スニーカーと同様のラバーソール仕様なので、水気の多い場所でも平気で歩けます!


いかがでしたでしょうか。「よい靴は人を健康にする」をモットーに掲げ、今日でもラグジュアリーブランド系のグループには属さずテストーニ家のファミリービジネスとして継続しているメーカーだけあって、一足一足のデザインは時流を的確に捕らえているのと共に、緻密な設計と安定した品質もa.testoniの大きな強み。

何度も書きますがアッパーの縫製とか滅茶苦茶丁寧で、それもオーナーが毎朝必ず顔を出して従業員に声を掛けるのが日課の作業現場だからこその、高いモチベーションの結晶なのでしょう。額面は確かにそれなりにします。ですがa.testoniの紳士靴は、それを遥かに超える質感や品格を伴っていますよ!


【問い合わせ先】
■ a.testoni 銀座本店

住所:〒104-0061 東京都中央区銀座8-9-12 銀座リヨンビル1F&2F
Tel:03-3575-8025(直通)
営業時間:11:00~20:00 年中無休
HP: a.testoni
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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