ガチャで儲けようとして、ゲームをつまらなくしている
何かゲーム業界は大事なものを見失ってはいないでしょうか(イラスト 橋本モチチ)
また、ガチャによる収益構造は、ゲームそのものにも大きな影響を与えています。ガチャがあることでゲームがどうなるんだという話は、社会が注目している問題からすると実に些末なことに思われるかもしれませんが、だからこそ、ここでちょっと触れておきたいと思います。
実は、ゲームユーザーの中には、いっそガチャなんて規制されてしまえばいいと思っている人が、少なからずいると思います。彼らは必ずしも、ユーザーが使う金額が大きくなりすぎることを心配しているのではないでしょう。ガチャがゲームをつまらなくしていることを憂いているのです。
モバイル端末向けゲームの広告に「今ならSSRもらえる!」みたいな宣伝文句、とても多いですよね。SSRはガチャで当たる希少な景品ということですが、すごく違和感があります。これはゲームの宣伝ではないですよね。ガチャの宣伝です。今なら大当たりがでますよ、大当たりの景品もらえますよ、そういう宣伝です。
これでは、ゲームが好きな人ではなくて、単にお得な景品につられた人を誘うような形になってしまいます。しかし、メーカーはそれでいいのです。70万円使っても当たらなかったとか、救済措置で9万円課金したら好きなアイテムを1つプレゼントというような世界では、SSRの価値は非常に高いですし、その価値が分かる人はいいお客様ということになります。
そうすると、メーカーはいかに景品の価値を高め、それがもらえそうでもらえない状況を作り、さらにはガチャによって異常なまでの課金を煽る、というようなことに集中していきます。これはもう、ゲームの運営というよりは、ガチャの運営ですし、その為のキャラクター、その為の物語、その為のイベント、ということになっていきます。その時、ゲームは脇役になります。ゲームを面白くするためにガチャがあるのではなく、ガチャを面白くする調味料としてゲームがあるのです。
ガチャそのものが全て悪いというわけではありません、多くの場合は程度問題です。全てのゲームがガチャによって脇役に、調味料のような存在に追いやられてしまっているというわけでもありません。それでも、どうやったらガチャで儲かるかという方向に突き進んでいくことで、何か多くのゲームが得体のしれない集金マシーンに作り替えられているような気さえします。
この話は、今回のことがどれだけ大きな社会問題になっても、議論されることはないでしょう。ガチャを使った仕組みが、ユーザーの射幸心をあおって異常な金額を課金させるよう誘導している、という話に比べれば、ゲームが面白いかどうかなんてことはどうでもいいと言っていいぐらい社会の関心の外にあります。実際のところ、ゲームが面白くないからいけないわけでもなければ、ゲームが面白ければよいというわけでもありません。切り離して考えるえべきことです。しかし、ゲームに関わる人達にとっては、ゲームを遊ぶ人にとっても、作る人にとっても、やっぱりとても大事なことなはずです。
このまま放置していれば、業界の外部から規制の網がかかる可能性もあるでしょう。その時は、ゲームが面白くなるかなんてことを考える人はいません。規制された後、ゲーム業界がどうなるかを真剣に心配する人もいません。そうなる前に、業界内部による自主規制が望まれます。
コンプガチャ規制から4年、ゲーム業界はユーザーのことを考えていたでしょうか、ゲームがどうしたら面白くなるか考えていたでしょうか、何が問題の本質なのか考えていたでしょうか、ゲームの開発費や運営費をを回収する方法としてガチャが必要だとして、やり方によっては大変に危ういこの手法と、うまくつきあっていたのでしょうか。
期待しているユーザーがいます。いっそ、膿を出してしまえば、ゲーム業界が変わっていけるのではないかということを期待しているユーザーが。その期待に、応えるべきではないでしょうか。
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