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日本の紳士靴が更に前進する。ORIENTAL 素材編

ワールド フットウェア ギャラリーで2016年の春から取り扱いが始まるORIENTAL、今回は普段はあまり気にしないある部材に注目してみます。そして肝腎な履き心地についても詳しくレポート!

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

日頃あまり気にしない箇所にも注目!

ORIENTAL ソックシート&ライニング

一見ごく普通の牛革に見えるORIENTALのライニングと中敷き、実はこれ、奈良にある鹿革専門タンナー・藤岡勇吉本店製のディアスキンです。手袋でこの素材の心地良さをご存知の方も多いはず。近い地域に製造拠点を持つもの同士の、見事な融合です。

ワールドフットウェアギャラリー(以下WFGと記します)で2016年春から販売するORIENTAL、これまでの日本の紳士靴を更に一歩前に進めるかのような底付けの特徴と美しさについては、先日の記事でご紹介致しました。しかしここの靴の特徴は「そこ」だけではなくて、「その上」にも注目したいのです。アッパーや底材に比べ素材への注目が集まりにくい、ライニングと中敷きです。

大和郡山に本社と工場があるこのブランドが、それらに採用したのはディアスキン=鹿革です。奈良と鹿ってイメージ的にも結び付き易いのですが、革の分野ではもっと確固たる説得力があるんですよ。実は世界的にも稀で、ヨーロッパを中心に多くのラグジュアリーブランドから注文が殺到する鹿革専業タンナーが、奈良にはあるのです。その名は「藤岡勇吉本店」。原皮そのものは食用として多数飼育され安定調達が可能なニュージーランド産が主体ではあるものの、ORIENTALでは一種の地産地消的発想で、そこで製造された鹿革をライニングと中敷きに用いているのです。手袋に多用されることでもお解かりのとおり、ディアスキンはソフトで伸縮性・形状復元性に優れ、また引き裂き性や水にも強いのでそれらに向いた素材であるのは間違いありません。
ORIENTAL Buckskin Plain Toe

そしてWFGの隠れた名物・正真正銘のホワイトバックスを用いた内羽根式プレーントウも、もちろん登場します。やっぱりこれは内羽根式でなくては。暑い時期にこそ清楚に履いていただきたい! 色:白バックスキン。サイズ5~9 1/2 税込価格5万9400円 (ワールドフットウェアギャラリー 神宮前店 TEL:03-3423-2021)


更にはアッパーに、この藤本勇吉本店製のバックスキン(鹿の皮の銀面を起毛させて仕上げた革)を用いた白の内羽根式プレーントウも登場します。そうです、白のヌバック(牛の皮の銀面を起毛させて仕上げた革)製ではない、トラディショナルな靴好きが泣いて喜ぶ正真正銘のホワイトバックス! この革は様々な理由で近年殆ど流通しなくなっているにもかかわらず、紳士靴の様式美を熟知するWFGではほぼ毎年、春夏にはいずれかのブランドでアッパーにこれを使った靴を少量用意くれているのですが、そんな隠れた名物を今シーズンはこのORIENTALで展開する訳で、それだけでも気合の入り方が解ると言うものです。
ORIENTAL Adelaide Cap Toe

こちらの内羽根式キャップトウは、アデレイド的な意匠を採用したイタリアンテイストの濃い一足。リズムと色気に秀でたデザインは、欧州の優れた紳士靴を長年見てきたWFGの企画だからこそ可能な表現でしょう。色:バーガンディ(他に黒もあり)。サイズ5~9 1/2 税込価格5万9400円 (ワールドフットウェアギャラリー 神宮前店 TEL:03-3423-2021)

ソフトさと微妙な作り分けに唸らされる!

ORIENTAL トウシェイプ

今回登場したモデルの木型のうち、もっとも「攻めた」フィッティングになっているのが、アデレイド仕様のこの靴に使われているこちら。ただし、ディアスキンのライニングのお蔭で、見た目に対して着用感はソフトです。

と言うわけで、デビュー早々のORIENTAL、早速WFGで履かせていただきました。今回登場したものの木型はいきなり4種類とバラエティ豊か。実はそのうち3種類には内羽根式のキャップトウ(ストレートチップ)が用意されているので、そのディテールの微妙な違いも含めて以下、履き心地のインプレッションです。

鳩目周りの縫い目線を琴型にくり貫く「アデレイド」的なディテールを備えたモデルに用いた木型(以下※と記します)は、今回のシリーズでは最も「攻めた」フィット感を追求したもの。ガースは英国靴で言うEより少し細いくらいでしょうか。これはいつものレングスのものを選べば大丈夫だと思います。因みにフルブローグやホワイトバックスもこの木型です。

鳩目周りの縫い目線が土踏まず部には落ちず踵部に直進する「バルモラル」の意匠を採用したものの木型は、※に比べボールジョイントの幅に僅かに余裕を感じます。これは人によっては、いつもよりハーフサイズ落として履いた方が快適かもしれません。またラウンドトウで鳩目の左右の幅が狭くかつ爪先に向けて鳩目の幅がフレアーに広がらないモデルに用いた木型は、※よりボールジョイントの位置での高さに余裕があります。こちらは大抵の方がいつもよりハーフサイズ落として履いた方が心地良いでしょう。
ORIENTAL Cap Toe

朴訥なラウンドトウが往年のアメリカ靴を髣髴とさせる内羽根式キャップトウです。鳩目のピッチや靴紐の太さなど、解っていますなぁ。大復活確実なプリーツ(タック)付きのトラウザーズに合わせてみたい。色:黒。サイズ5~9 1/2 税込価格5万9400円 (ワールドフットウェアギャラリー 神宮前店 TEL:03-3423-2021)


更にはタッセルモカシンの木型は、踵部と二の甲のエリアをしっかりと押さえる感触です。そしてどの木型のモデルであっても共通なのは、足の「包まれ感」がピタッとしながらも極めてソフトであること。これはライニングにディアスキンを用いた効果がはっきりと表れていますよ! 地面の付かない土踏まず部の底付けが履き始めから足馴染みの良いマッケイ製法であるのも、その感触を手助けしているかもしれません。

と言うことで、この春WFGからデビューするORIENTALは、単に容姿の美しさだけでなく履き心地、と言うより着用感においても従来の日本の紳士靴とはまた異なる歩みを示してくれる存在になる予感が大。高品質でスマートな印象の靴を、無理に背伸びし過ぎない価格帯で最近は探し難くなったなぁとお嘆きの方には、間違いなく納得していただける作品ばかりですよ!



ORIENTAL 商品概要】
★モデル
a.内羽根式バルモラルキャップトウ
b.内羽根式キャップトウ 
c.内羽根式アデレイドキャップトウ
d.内羽根式フルブローグ 
e.タッセルモカシン
f.内羽根式プレーントウ
★アッパー素材
a・b・c・d:仏アノネイ製カーフ
e:英チャールズFステッド製スエード
f:日(株)藤岡勇吉本店製バックスキン
★色
a・d:ブラック・ブラウン b:ブラックのみ c:ブラック・バーガンディ
e:ダークブラウン f:ホワイト
★底付け:いずれもグッドイヤー・ウェルテッド(土踏まず部はマッケイ)
★サイズ:いずれも5~9 1/2
★価格(税込):いずれも5万9400円

【お問合せ先】
ワールド フットウェア ギャラリー 神宮前店
住所:〒151-0001 東京都渋谷区神宮前2-17-6 神宮前ビル1F
地図: Yahoo!地図情報
Tel:03-3423-2021(直通)
営業時間:11:00~20:00 年中無休
HP: World Footwear Gallery Official

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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