創作はどのような形で進めていきましたか?
加藤>このおふたりが一緒に舞台にいるということだけでもうひとつの事柄であり、むしろそういう事実の方が私は興味があったので、こちらからあえて振りはつけませんでした。もちろん後から整理はしましたし、出てきたもののなかから選び取ったり、プラスしたりということはあるけれど、まずは若いひとたちも含めてみんなそれぞれ出してもらう形です。どんなタスクか、どういう場面かというのはとことん話し合いますが、そこから先は出てきたものを再構築していく。この作品に限らず、最近は割とこういう創作法が多いですね。普段のレッスンでも即興しながら何かを生み出すことで身体の発見をする、という作業を必ず入れているので、この形をとるのは自然であって、意志的なことでもあります。おふたりには身体の在り方だけ共通項を持ってもらい、あとは“生まれてくるダンスにまかせて”と伝えました。今回またどんなものが発生して、どう調整するかというのが勝負になってくると思います。おふたりともライブ感が本当にすごいんですよね。ひとりひとりが寄ってきて、それがふたりになったときが実に面白くて、今回もすごく楽しみにしているんです。
武内>不思議なことに“好きにやって”と言われると、なかなかできないものなんですよね。
石井>“アンシェヌマンをこうやって” と言われたら自分なりにリズムを変えてできるけど、好きなように”というのが一番難しいですよね。作品は6場面で構成されていて、そこに沿って自分なりに音と関わりながら振りをつくっていきました。初演のときは加藤訓子さんの生演奏で踊ったので、“私が足を出してから音を出してね”とか、ライブでなければできないことをお願いしたり。武内さんとお仕事をするのは初めてでしたけど、とても面白かったです。大きな公衆電話の金魚鉢があって、“そこに張り付いてみて”って言ったら、ぴたっと虫みたいに張りついて離れない(笑)。ライブ感があって、そういう意味ではとても緊張したし、リラックスしているところもあったし、楽しい舞台でしたね。
おふたり以外も今回のキャストは初演とほぼ同じで、結構大人数です。周りに“多過ぎでは?”と言われたけれど、私はもっと出したかった。舞台上でみんなに生の声を発してもらって、洪水のように溢れさせたかった。おふたりのしんとしたものを出すには、ある意味カオスにしたいと思っていて。それはただ踊りのエネルギーというか、いわゆるダンシィにみんなが揃っているという部分ではなく、その手法を超えたものができたらと……。初演とは会場も違うし手法は変えますが、今回は立端のあるブラックボックスになるので、そこに何かが反響し、客席含め包み込むような感覚が出せたらと思います。
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