NTT東日本の旧社宅を一棟丸ごと借り上げしてリノベーション
三菱地所レジデンスのリノベ賃貸「ザ・パークレックス 東陽町」完成
三菱地所レジデンスは、2014年5月より、築年数の経過した中小ビルを再生して賃貸する「Reビル事業(既存ストックリノベーション賃貸事業)」に取り組み、耐震補強工事やリノベーション工事によるバリューアップで既存ストックを再生し賃貸物件として供給してきました。事業スキームは、築年数の経過した建物を一括賃貸し、三菱地所レジデンスの負担でリノベーション工事実施後に転貸。期間満了後、オーナーに返還するもので、オーナーにとっては事業費の負担なしに三菱地所レジデンスからの賃料収入が保証されるともに将来バリューアップ後の建物を入手することができます。環境負荷の低減や既存建物の耐震化、不動産の有効活用などの社会的意義もあり、2015年度グッドデザイン賞ベスト100も受賞しています。
「ザ・パークレックス 東陽町」は、同事業として初の共同住宅のリノベーション。NTT東日本の旧社宅を一括借り上げしリノベーションを実施。子育て世代をターゲットに、共用部と専用部をバリューアップ。「子どもと共に成長する住まい」をテーマに、様々な提案がなされています。
場所は、東西線「東陽町」駅から10分超歩く閑静な住宅街。周りに学校や公園もあり子育て環境の充実した立地です。昭和56年築、5階建て全10邸の専有面積は、90平米台とゆったり。全戸南向き角住戸で、通風採光の良いユニット構成です。まず建物に入って驚くのは、上下を結ぶ共用階段の壁画です。当時の社宅にありがちな、エレベーターの無いマンション。検討した結果、上階でも楽しんで上り下りできるようにプロジェクトのスタッフで描いたとのこと。こうした斬新なデザインもリノベ賃貸ならではの個性でしょう。
住戸フロアに入ると、玄関前のオープンスペースに色分けがしてあります。こちらは、入居者が自転車や植栽などを飾れるプラスαの空間になっています。
棚板の設置などカスタマイズできる壁面(一部)
チョークで伝言板にもなる黒板塗装の引き戸も
住戸の特徴は、通常の賃貸にはない自由度の高い利用ができる工夫がなされている点です。例えば、リビングダイニングの一面の壁は、ラーチ合板貼とし、入居者は自由に棚板の設置が可能です。さらに和室との間仕切り引戸は、黒板塗装が施され、連絡事項などを書いたり消したりできます。南向きの和室には、サンルームがつながり明るくて心地が良い感じがします。
天井や壁の塗装や床の貼替えなどで、単に新しくするだけでなく、もともとの個性を活かしつつライフスタイルを提案するといった点で、従来の賃貸にはない魅力を感じます。
もともとの建物の個性を活かした提案は、共用部でもなされています。1階の広々したピロティは、遊ぶラウンジとして活用。卓球台の設置やハンモックを据えることで、子供たちの遊び心を刺激し恰好のコミュニケーションスペースになりそうです。さらに作業台も置く工作室は、アトリエスペースとして、DIYを自由にできる場所になります。
さらに、各家族には無償で一坪農園を提供。野菜を親子で育てることも可能です。こうしたワクワク感のある提案は、なかなか出会えない魅力だと思います。一通り見学を終えて感じたのは、素材を活かすことによる住まいの可能性の広がり。三菱地所レジデンスでは、今後も既存ストックの有効活用に積極的に取り組む方針のようですが、ライフスタイルの多様化が進む中、ユーザーの選択肢を増やすことに繋がりそうです。既存ストックの空室増加が大きな課題になっている今、リノベーションを活用した再生の動きに注目していきたいと思います。