ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

Star Talk Vol.34 木村花代、自然体の美声(4ページ目)

76年にブロードウェイで初演、日本でも86年から毎年上演されている大人気演目『アニー』。例年カラフルなキャスティングも話題の本作で、昨年初めて大富豪ウォーバックスの秘書グレースを担当、美しいソプラノで観客を魅了したのが木村花代さんです。劇団四季で数々の大役を演じ、退団後も様々な演目に取り組む彼女にとって、グレースはどんな役どころでしょうか?*観劇レポートを掲載しました*

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

「愛される、素敵な女優」を目指したい

『Marry Me A Little』写真提供:TipTap

『Marry Me A Little』写真提供:TipTap


――14年間在籍した劇団を辞められたのは、女優として役柄の幅を広げたい、といったことがあったのでしょうか?

「はい。劇団では若い役…少女から人妻くらいの役をいただくことが多く、もう少し役の幅を広げてゆけたら、という思いがありました。若い役ももちろん好きですが、年齢的にも30代に入って「心機一転」頑張ろうと思いまして。

幸い、退団後は『ミス・サイゴン』のエレンや今回『アニー』で演じているグレースのように、自分に近い年齢の役をいただけるようになりました。グレースの年齢ですか?30歳前後かと思いますが、欧米の方って年上に見えるじゃないですか。童顔の私にはちょうどいい年代の役柄かなと思います」

――大劇場ばかりでなく、いわゆる「小劇場系」の公演にも積極的に挑戦していらっしゃいますね。

「大劇場も好きなのですが、小劇場ならではの空気感が好きで、役者として経験しておきたいのです。デフォルメしてない自分を見ていただくことも、お客様との一体感もすごく刺激になります」

――最近はそんな小劇場公演『Marry Me A Little』に出演。大劇場で活躍されていた木村さんがオーディションを受けにいらっしゃったことで、プロデューサーさんが「本当に俳優として意欲的な方」と感銘を受けていらっしゃいました。

「いい作品であれば公演の規模にかかわらず、オーディションを受けるのは当たり前だと思っています。自分の興味のあるものはどんどん勉強していかないと。ソンドハイムはすごく挑戦したくて、チャレンジしがいのある曲であることは間違いなかったので、募集要綱を見てすぐマネージャーに「これを受けたい」と連絡しました。実際に取り組んでみるとやはり難曲揃いで、稽古中はひいひい言っていましたが(笑)。演出家の異なる2バージョンの一挙上演で、藤倉梓さん演出のAチームは特定のストーリーには縛られていないのに対して、上田一豪さん演出の私たちBチームは男女の傷ついた恋を描いていて、そこに曲をあてはめていくのがなかなか難しかったです」

――どういう表現者でありたいと考えていらっしゃいますか?

「いろいろなことを考えますが、究極的には、お客様と感動を共有できる女優になりたいですね。人間性を含めてもっと深みを増し、「木村花代を観に行きたい」と思っていただきたいし、自然体で近しい存在として、愛される、素敵な女優になりたいと思います」

――私の中で、劇団四季時代、木村さんにはどんな役もこなしてしまう「優等生」のイメージがありました。

「そうだと思います。実際、芝居のことしか考えていなくて、お友達ともほとんど交流がなく、どこか近寄りがたい存在だったと思います。でも、外の世界ではそれでは仕事にならなくて、交流を深めて仲良くなった上でお芝居がある。勉強になります。

これまでのキャリアについて、皆さん「すごい」と言って下さいますが、自分では全然そんなことなく、中身は普通の人間。近寄りがたい、ではなく親近感を抱いていただける存在でありたいと思っています」

――今後、どんなカラーが出ていらっしゃるでしょう。

「どうでしょうね。そういう意味でも小劇場は自由度が高く、自分を出せるところだと思います。いろんなカラーがあっていいと思うんですよね。先ほど申し上げたように私はつかこうへいさんの戯曲も好きですし、加藤健一さんの一人芝居にも感銘を受けましたし、好きなものはいろいろあります。まだまだ未知の世界もありますし、いっぱいやってみたいですね。自分が成長することで出会えることもあると思うので、あれやりたいこれやりたいと思う前にまず自分磨きをしっかりして、そこで自分に見合う役に出会っていけたらと思います。地道に、頑張っていきたいです」

*****
「劣等生」というポジションから、こつこつと努力を重ね、気が付けば「彼女が主演なら安心して観ていられる」と思わせるほど、揺るぎないものを身につけた木村さん。数々の大作に主演していた劇団を辞し、大作ミュージカルはもとより実験的な小規模公演にも挑戦、役者としての幅を広げつつあるその姿からは、並々ならぬ意欲と探求心が感じられます。そんな彼女が、子供たちとの共演によって新境地を拓いたという『アニー』グレース役。初年度の経験をふまえ、今年はさらに魅力的で、アニーならずとも「一緒にいたいな」と思ってしまう「素敵なお姉さん」像を見せてくれるのではないでしょうか。王道ミュージカルにふさわしい、その美しい歌声も必聴です。
『アニー』

『アニー』


*公演情報*丸美屋食品ミュージカル『アニー』16年4月23日~5月9日=新国立劇場中劇場、8月6~7日=フェニックス・プラザ大ホール、8月10~16日=シアター・ドラマシティ、8月20~21日=福岡市民会館、8月26~28日=愛知県芸術劇場大ホール
*次頁で『アニー』観劇レポートを掲載しました!
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