睡眠薬よりも効果的な不眠の治療法
病院で受ける治療と同じことが、自宅でできます
不眠に悩む本人の自主性が大切ですが、認知行動療法は不眠に対して大きな効果があります。特に寝つきの悪さについては、睡眠薬を飲むよりも良くなることが分かっています。他にも、夜中に目覚める時間が減り、睡眠時間全体が長くなります。
不眠症に対する認知行動療法は、睡眠の役割や不眠のメカニズム、眠りやすい寝室環境や好ましい生活習慣、眠れないときの心がまえや対処法などを学び、少しずつ実行することで不眠を克服しようとするものです。
このように効果が大きい認知行動療法ですが、認知行動療法をきちんとやるためには、医師や臨床心理士などと毎週1回、1時間ほど会い、毎日の宿題をこなさなければなりません。不眠に悩みながらも通院の時間が取れないため、この治療を受けられない人がたくさんいます。
不眠に対する認知行動療法に詳しい渡辺範雄医師が、『自分でできる「不眠」克服ワークブック 短期睡眠行動療法自習帳』という本を出しています。ここでは、この本の内容に従って、不眠症に対する認知行動療法のやり方についてご紹介します。
第1週:睡眠日記で自分の睡眠パターンを知る
分かっているようで分かっていないのが、自分のことです
毎日、やらなければいけない宿題もあります。それほど難しいことではありませんが、宿題をやらないと効果が出ないのでがんばりましょう。
はじめの週の1日目には、「睡眠日記」について学びます。睡眠日記には、次のことを毎日、書いていきます。
- 寝床に入った時刻
- 寝床から出た時刻
- 寝つくのにかかった時間
- 夜中に目覚めた回数
- 寝ついてから寝床を出るまでに目覚めていた時間
- 夜に飲んだアルコールの量
- 今朝の気分
- 昨夜の睡眠の質
- 昼寝した時間
毎朝、目が覚めたらすぐに、前の夜のことを振り返って記録しましょう。時間がたつと、忘れてしまったり面倒になったりして、続けられなくなるからです。あまり詳しく書く必要もありません。寝つくのにかかった時間などは本人にはわからないので、およその時間を書きましょう
時刻を記録する必要がありますが、寝床に入ったら時計は見ないようにしてください。実は「夜中の○時に目が覚めた」とか「△□分間も眠れなかった」などという思いが、不眠をひどくしているからです。自分の感覚で記録しても、正確な時刻とさほど違いませんから、安心してください。
第1週:本当に眠っている時間を計算する
睡眠日記を書くだけでは、効果が半減です
総臥床時間は、【寝床から出た時刻】から【寝床に入った時刻】を引いて、分単位で表します。総睡眠時間は総臥床時間から、【寝つくのにかかった時間】と【寝ついてから寝床を出るまでに目覚めていた時間】を引きます。
睡眠効率(%)は、総睡眠時間を総臥床時間で割って、100をかけた数字です。この睡眠効率は、寝床で横になっていた時間のうち、どのくらいの割合で実際に眠れていたかを表します。
第1週:寝室の環境や生活習慣を見直す
悩みごとは、寝床に持ち込まないでおきましょう
- 睡眠時間は人それぞれ。翌日の昼間に眠気で困らなければ、それで十分
- 定期的に運動しよう
- 寝室を快適にして、光や音が入らないようにしよう
- 寝ているあいだ、寝室を快適な温度に保とう
- 規則正しい食生活をして、空腹で眠らない・眠る前には水分をとりすぎない
- カフェインの入ったものは、午後3時を過ぎたらとらない
- 寝る前の2時間や夜中は、アルコールをとらない
- 寝る前の2時間や夜中は、喫煙をさける
- 昼間の悩みを、寝床にもっていかない
- 眠ろうとして頑張らない・夜中に時計を見ない
10か条のチェックリストのうち、今はやっていないけれどできそうなことを、1~3個えらびましょう。それを実行することが、今週の宿題です。毎朝、睡眠日記を書くときに、その宿題ができたかどうか考えて、○・△・×で記録します。
第2週以降の睡眠行動療法はこちらのページでご紹介します。
【関連サイト】
『自分でできる「不眠」克服ワークブック 短期睡眠行動療法自習帳』 渡辺範雄・著
「睡眠日誌」で良質な短時間睡眠を実現! :オールアバウト・睡眠サイト
今すぐできる! 熱帯夜に負けない快眠法 :季節を問わずできる快眠のアイデア満載