「てんかん」の有病率は人口の約1%

寝ている女性と男の子

てんかんと鑑別が必要な睡眠障害は多いようです。不安であれば、まずは医療機関に相談してみましょう

世界保健機関(WHO)が編集した「てんかん辞典」によると、てんかんは「さまざまな原因でもたらされる慢性脳疾患で、脳ニューロンの過剰な発射に由来する反復性の発作を主徴とし、それに多種多様な臨床症状および検査所見を伴う」と定義されています。

てんかんの有病率は人口の1%くらいと推測されており、日本全国では約100万人のてんかん患者の方がいます。有名人では、ローマ帝国のジュリアス・シーザーやフランスのナポレオン・ボナパルトも病んでいたといわれています。

睡眠てんかんとは

良眠

睡眠てんかんの発作が抑えられれば、睡眠の質も改善されます

「睡眠てんかん」は、「睡眠関連てんかん」とも呼ばれています。発作の70%以上が睡眠中に起こる例は「睡眠関連てんかん」とされ、すべての発作が睡眠中に起こる「純粋睡眠てんかん」も知られています(2005 睡眠障害国際分類第2版)。てんかん発作が睡眠中にのみ起こる純粋睡眠てんかんが、睡眠てんかん全体の約半分を占めています。

てんかんの中には、目覚めたときに発作を起こすものもありますが、一般的にこれは睡眠てんかんに含まれません。

てんかんの罹病期が長くなると、発作が起こる時間帯が変わってきます。覚醒中にのみてんかん発作があった場合は、次第に睡眠中にもてんかん発作を起こしやすくなってきます。また、睡眠てんかんだけだった場合は、治療がうまくいかないと、一日中てんかん発作を起こしやすい状態になってきます。

睡眠てんかんの疫学…割合は1~3割と減少傾向へ

1974年に2,825人のてんかん患者さんを対象に行った調査では、睡眠てんかんの方が44%、覚醒中のみに発作が起きる方が33%で、どちらの時間帯にも発作が起きる患者さんは23%だったそうです。またこの調査では、睡眠てんかん発作の起きやすい時間帯が、睡眠直後と起床1~2時間前であることも明らかになりました。

一方で、最近の調査によると、てんかん発作全体におけるにおける睡眠てんかんの割合は、1~3割と少なくなっているようです。これは、薬物療法の進歩により、てんかん発作が抑制されてきたためと考えられています。

睡眠状態によって異なるてんかん発作の種類

脳波

てんかんに特徴的な脳波が見つからなくても、睡眠てんかんは否定できません

睡眠てんかんは、発作の種類によって起きやすい睡眠の状態が違います。

■全般性強直間代発作と複雑部分発作
全身が硬直してその後にガクガクとけいれんする「全般性強直間代発作」は、主にノンレム睡眠中や中途覚醒時に起きます。体の一部分だけがけいれんを起こす「複雑部分発作」は、浅いノンレム睡眠中に多く見られますが、レム睡眠の開始前後や終了前後にもしばしば見られます。

■症候性てんかんと特発性てんかん
低酸素脳症や脳炎、脳卒中、脳外傷などによる脳の障害が原因で起こるてんかんを「症候性てんかん」といい、いろいろ検査しても原因がはっきりしないてんかんを「特発性てんかん」と呼びます。覚醒時のみのてんかんでは特発性が多く、時間に関係なく起きる「汎発性てんかん」は症候性が多いです。睡眠てんかんでは特発性と症候性が混在しています。

睡眠てんかん発作の症状

睡眠てんかんは、手足の大きな動きだけではありません。睡眠障害国際分類では、睡眠からの突然の覚醒や顔面のけいれん、舌なめずり、口や顔面の運動、舌を咬むこと、まさぐり動作、尿失禁、発作のあとの錯乱と深い眠りなども、睡眠てんかんの症状として挙げられています。

睡眠てんかんの発作中には、壁に強く頭をぶつけたり、足で壁を激しく蹴ったり、部屋の中を歩き回ったりすることがあります。そのため、睡眠時遊行症やレム睡眠行動障害、夜驚症、睡眠時無呼吸症候群などと誤診されることがあります。正確に診断するためには、睡眠障害専門の医療機関で終夜睡眠ポリグラフ検査をして、てんかん発作時の異常脳波を確認することが大切です。

睡眠てんかんの予防・治療法・薬

抗てんかん薬

薬に飲み方や止め方について、医師とよく相談しましょう

てんかん発作を起こさないようにするためには、生活習慣の改善と薬物治療が基本。それでも治らないときには手術を検討することがあります。

生活リズムが乱れると、いくら薬を飲んでいてもてんかん発作が起きやすくなります。できるだけ起床時刻や就寝時刻を一定にするなど規則正しい生活を送り、グッスリ眠って睡眠不足や疲労蓄積に注意しましょう。睡眠てんかんの発作が起きた時の安全を考えて、寝室には危険なものを置かず、ベッドからの転落にも気をつけてください。

抗てんかん薬は、脳の神経細胞の電気的な興奮をコントロールして、てんかん発作をおさえてくれます。適切な治療を行うと、7~8割の患者さんで発作をコントロールすることができ、普通に社会生活を営めます。しかし残念なことに、2割の人では薬を飲んでも発作をコントロールできないのが実情です。

薬物治療にあたっては主治医の指示をしっかり守り、毎日規則正しく服用してください。発作が少なくなっても自己判断で服薬をやめずに、必ず主治医に相談しましょう。一般的に抗てんかん薬は、最後の発作から2~4年、脳波検査で異常がなくなってからも2年以上は、服用し続けることが望ましいとされています。ほとんどの抗てんかん薬には、眠気やふらつきの副作用があります。特に薬を飲み始めたころに強く出やすいので、自動車の運転や高いところでの作業など危険なことは止めておきましょう。

てんかんについて、さらに詳しく知りたい方は、日本てんかん協会や、日本てんかん学会のサイトも併せてご覧ください。また、難治性てんかんについては、難治性てんかんに対する手術治療に詳述されています。
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