アドバイス1 教育資金は現状で問題なくクリア
相談者のバイオレットさんの場合、定年間近にいくつかの不安要素が集中してしまったわけですが、ひとつひとつ整理して考えてみましょう。まず、教育資金については、バイオレットさんが言われたように、住宅ローンを繰上返済したことによって手持ち資金が減ったことが、不安要因となってしまいました。繰上返済は、住宅コスト削減の有効な手段ではありますが、時期と金額が大事なポイント。一気に行うとその後のキャッシュフローがきびしくなり、ライフプランに影響してしまう場合があるからです。
とは言え、老後資金となる年金財形を除いた現在の貯蓄額は725万円。一方、2人のお子さんに今後かかる教育費のうち、授業料は280万円(第一子/約54万円×2年間、第二子/1年目後期34万円+2~3年目全期136万円)ほど。今のところ、授業料の支払いはボーナスに依存していますが、仮にボーナスがなくても、貯蓄だけでカバーできますので、ほぼ心配は無用と言えるでしょう。
アドバイス2 老後資金は今後3年間の貯蓄が大事
次に老後資金を考えてみます。まず、バイオレットさんがリタイヤされる3年後までは、現在とほぼ同じ貯蓄ペースが続くとします。すると、3年間で計1000万円が貯蓄に上乗せされます。これは相当な貯蓄ペースですが、実はこれが老後の大きな支えになりますので、頑張って達成してほしいと思います。
では、リタイヤ後はどうでしょうか。ご主人が、どの程度家計負担をするかは不確定ですが、現在と同じ月13万3000円とすると、夫のお小遣いと保険料を本人負担としても、月5万円ほど不足します。年間では60万円となりますから、ご主人が定年を迎えるまでの5年間で300万円。小さい額ではありませんが、それまでの貯蓄から十分カバーできます。
次に、ご主人が定年を迎えてから65歳になるまでの、いわゆる無年金期間を試算してみます。想定される生活費は、現在の普段の生活費から考えて月額18万円ほど。5年間で1080万円。このうちご主人の個人年金保険が年額60万円支給されますので、それを生活費に充てることができたとして、残り780万円を貯蓄でまかなうということになります。それでも、それまでに大きな支出なければ、ご主人60歳の時点で2000万円前後の貯蓄と退職金(夫/1800万円、妻/1500万円)が残ることになりますから、これも心配は要りません。
ご主人が65歳を過ぎれば、公的年金が受け取れます。そのうち、どの程度を生活費に充てるのかがわかりませんが、ご夫婦で合算して生活資金とするならば、月額30万円。先に記した定年後の生活費ならば、この金額は十分です。それどころか、公的年金から毎月、貯蓄することも可能。さらに、年金財形の積立分も十分まとまった額がありますから、住宅のリフォームやクルマの買い替えについても、その費用は十分にあると言えます。
アドバイス3 ご主人と資金の出し方を話し合いたい
結論としては、教育資金も老後資金も、そう心配は要りません。早期リタイヤは十分可能だと思います。注意点を上げるとすれば、2点。まず、ご主人とどのような形で、老後の生活費を出し合うのかを事前に話し合っておきたい。いろいろ難しい部分もあるでしょうが、ここが不透明ではより現実に即したマネープランが立てられません。焦る必要はありませんが、意識はしておいてください。
もう1点は、バイオレットさん自身の健康です。これまでも肉体的疲労やストレスがかなりあったはず。今後は無理をせず、健康管理には十分努めてください。余暇を楽しんだり、気分転換をしたり、そしてそのための時間を作ることに資金を使う。それもまた有意義なお金の使い方のはずです。
最後に保険について。気にされているとおり、やはり「掛け過ぎ」です。
バイオレットさんが加入されているものについては、現時点で団体生命の年金タイプと共済は不要だと考えます。それでも、もう1本の団体生命保険で1000万円の死亡保障が残ります。お子さんの教育費をカバーすることを目的とするのならば十分でしょう。
ご主人の保険については見直ししにくいとのことですが、定期保険はかなり割高です。59歳まで加入すると、今後支払う保険料は200万円を超えます。これをどう考えるかです。見直すなら、死亡保障は半分程度に減額、医療特約は解約していいと思います。
相談者「バイオレット」さんから寄せられた感想
アドバイスについてありがとうございました。ライフプランを見直してきましたが、素人一人の考えでは不安がありましたが、専門家の方にご意見をいただき、ただただ感謝の気持ちでいっぱいです。早期リタイアも可能と知り、漠然とした不安を払しょくすることができました。家族みんなでこれからも健康 に留意し、リタイアするまでは貯蓄に励み、保険についても、主人と話し合いをもって見直しを考えていきたいと思います。ありがとうございました。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武
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