ただのお茶の時間ではない、スウェーデンのフィーカ
コーヒーとお茶菓子を楽しむ休憩時間、フィーカはスウェーデンの大事な文化の一つ 写真:Helena Wahlman/imagebank.sweden.se
スウェーデンを訪れ、最初に覚える言葉は「ありがとう」を意味する「タック(Tack)」、英語の「ハロー」に当たる「ヘイ(Hej)」、そして「フィーカ(Fika)」であると言われています。フィーカは、仕事や家事、遊びなど今していることから休憩をとり、主にコーヒーなどのお茶を飲む、コーヒーブレイクを指しています。一人でも良いし、家族や友達、同僚、知り合いと一緒に過ごすのも良いです。こうしたお茶の時間を人々は、朝、午前、午後、夜と日に何度もとります。スウェーデンでは、コーヒーなどを飲むことが1日の大切な時間であり、一つの重要な文化となっているのです。単に1杯のお茶を飲むというだけではなく、その時間を味わうことに意味があり、 休憩をとり、他の人との会話を楽しむという、重要な社会の潤滑油となっています。
コーヒーを文字って生まれたフィーカという言葉
多くのアイデアが生まれると言われる、会社などの職場でのフィーカ 写真:Lena Granefelt/imagebank.sweden.se
今ではすっかり人々の生活に根付いており、世界でも通用するスウェーデン語と言われるフィーカですが、実はコーヒーの簡単な言い方であった「kaffi」という言葉の「ka」と「ffi」の部分を逆にして「フィーカ(Fika)」という単語が生まれたと言われています。文字遊びの中から生まれたような言葉に相応しく、フィーカは、正式に日時を決めて会う約束をするといった堅苦しいものではなく、その時都合のつく人と、ちょっとお茶を飲むという気軽さがあります。
新しく知り合った人から、古い付き合いの人まで、どんな人とも、一杯のお茶を通して時間を共有できるというのがフィーカの良さ。このフィーカは、家庭のみならず、職場でもよく行われており、10時と15時のフィーカや「金曜日のフィーカ」などがあり、こうしたフィーカの中で、最も良いアイデアが生まれるとも言われています。
フィーカの起源?!「カフェレープ(kafferep)」
7種類のお菓子でもてなすのが一般的だった、カフェレープ 写真:Tina Stafr?n/imagebank.sweden.se
スウェーデンのフィーカ文化を語る上で、忘れてならないのが「カフェレープ」。カフェレープは、1930年代に女性たちがお菓子を持ち寄って、子どもや旦那抜きでお茶を飲んだことが始まりと言われる習慣です。イギリスの午後のお茶の時間によく似ており、テーブルクロスやコーヒーカップ選びも重要でした。また、最も重んじられるしきたりは、7つのお茶菓子を用意することでした。お茶菓子が6つだと安っぽく見られ、8種類だと贅沢だと言われたそうです。この「7種類のお菓子(Sju sorterare kakor)」という言葉は現在でもお茶菓子の例として使われ、1945年に出版された「7種類のお菓子」というレシピ本は大ブームになりました。女性たちが家事の合間に美味しいお菓子とコーヒーやお茶で世間話に花を咲かせた様子が目に浮かびます。
カフェレープとフィーカの違いは、お菓子の食べる順番にあります。7種類のお菓子が出されるカフェレープでは、なんでも好きなものをとって良い普通のお茶の時間と異なり、どのお茶菓子から食べるかという順番があります。最初に食べるのは、シナモンロールなどの菓子パン、次にスウェーデンで砂糖菓子と呼ばれるスポンジケーキを2種類食べます。そして、クッキーを2種類、マジパンやアーモンドなどと焼かれたタルトを食べます。これら全てを食べ終えても余裕があれば、生クリームなどの入ったケーキを食べるというのが正式な順番です。働く女性の増加とともに、カフェレープは下火となり、現在では文化遺産や歴史として見られることが多くなりました。しかしながら、美味しいお菓子とコーヒーで友人や家族とひと時を過ごすという文化はフィーカとして今も受け継がれています。
次のページでは、フィーカの仕方を紹介します。