世界遺産「ローマ歴史地区、教皇領とサン・パオロ・フォーリ・レ・ムーラ大聖堂」
アヴェンティーノの丘、マルタ騎士団の館の門扉の鍵穴から見たサン・ピエトロ大聖堂。ローマはテベレ川と七つの丘(アヴェンティーノ、ヴィミナーレ、エスクイリーノ、カンピドリオ、クイリナーレ、チェリオ、パラティーノ)に囲まれた土地を中心に発展した。いずれの丘も世界遺産登録範囲内にある
コロッセオ、フォロ・ロマーノ、パンテオン、カラカラ浴場等々、ローマには約2000年前の偉大な遺跡群が多数残されている。今回は、ローマ歴史地区の7大名所やローマ帝国の歴史をはじめ、世界遺産「ローマ歴史地区、教皇領とサン・パオロ・フォーリ・レ・ムーラ大聖堂」の概要を紹介する。
ローマ一押し! カンピドリオの丘~フォロ・ロマーノ~コロッセオ
フォロ・ロマーノの幻想的な景色。左の8本の柱はサトゥルヌス神殿のポルティコ(列柱廊)、中央奥はアントニヌス・ピウスとファウスティナ神殿、手前右の列柱跡はバシリカ・ユリア、右奥の三本柱がカストルとポルックス神殿
ミケランジェロがデザインしたカンピドリオの広場。幾何学模様のモザイクとバロック様式の建造物群が荘厳さを醸し出している
■フォロ・ロマーノ(Googleマップ)
カンピドリオの丘にはカピトリーノ美術館やカンピドリオ広場があるのだが、建物のファサード(正面)や広場のモザイクはミケランジェロの設計。この空間がなんとも心地よい。私はフィレンツェのアカデミア美術館で彼のファンになってしまったのだが、この広場も大のお気に入り。広場の脇に立つサンタ・マリア・イン・アラコエリ教会のミニマルなファサードも本当に魅力的。これらは14~16世紀の建設で、ロマネスク~バロック期の美学を存分に堪能できる。
コロッセオ。4層構造で80のアーチによって支えられており、アーチ同士は横につながり、楕円を描くことでバランスを保っている。重機のない時代に造られたとは到底思えない
さらに南東にあるのが言わずと知れたコロッセオ。全長188m、高さ50mという予想以上の巨大さに度肝を抜かれるが、この遺跡、なんと西暦80年前後の完成だ。この頃、日本は弥生時代。登呂遺跡が同時期の集落跡なのだが、比較するとコロッセオがいかにケタ外れの建物かよくわかる。
ローマ建築の奇跡! パンテオン
ミケランジェロが「天使の設計」と称し、ベルニーニが「完璧」と評したというパンテオン。ポルティコには一枚岩の花崗岩から切り出した高さ12.5mの巨大な柱が16本、連なっている
パンテオン内部。上がオクルス
まず、ファサードと円堂のシンプルで重厚な造りがたまらない。派手な装飾はないのだが、他にはない安定性と機能美を持っている。そして直径・高さともに43.2mを誇る巨大なドーム。天井のオクルス(目)と呼ばれる直径9mの開口部から陽光を取り入れており、ドーム内部は予想外に明るく保たれている。
ドームにはもちろん鉄筋や釘は使用されていない。石を積み上げてドームを築くのはたいへんな技術を必要とするうえ、本来重量を支え合うはずの天頂部に空間を空けると難易度が飛躍的に向上する。2世紀初めにこんなものが造られていたとは信じがたい。
パンテオンを参考に築かれた、内径45mに及ぶサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂のクーポラ。あまりの規模から「無謀」「不可能」といわれたという
14~15世紀、イタリア・ルネサンスの建築家たちはこのパンテオンを奇跡の建築物と評して盛んに研究した。そのひとりがブルネレスキで、彼はその成果として1434年、フィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂の巨大なクーポラ(ドーム)を完成させる。パンテオンと同等のドームを建設するのに、実に1300年を要したのである。