『花より男子The Musical』観劇レポート
原作のテンポを生かしつつ、演劇ならではの見ごたえをプラスする鈴木演出の妙

『花より男子The Musical』(C)神尾葉子・リーフプロダクション/集英社 > (C)『花より男子 The Musical』製作委員会2015

『花より男子The Musical』(C)神尾葉子・リーフプロダクション/集英社  (C)『花より男子 The Musical』製作委員会2015

学園ドラマにふさわしいキンコンカンコン…のチャイムとともに、中央扉から主人公つくしが登場。セレブ高校での日々を語るポップなナンバーに続いて、学園を支配する4人組「F4」も現れ、つくしが我が物顔の彼らに盾突く騒動へと、テンポよく展開してゆきます。つくしに殴られたF4のリーダー、道明寺司は気の強い姉を彷彿とさせる彼女に惹かれますが、実は恋愛経験ゼロ。「俺になびけ!」と最悪の口説き文句で、つくしを呆れさせてしまう…。
『花より男子The Musical』(C)神尾葉子・リーフプロダクション/集英社 > (C)『花より男子 The Musical』製作委員会2015

『花より男子The Musical』(C)神尾葉子・リーフプロダクション/集英社  (C)『花より男子 The Musical』製作委員会2015

「マンガ」を読み進めるリズムを思わせる、軽快な序盤。キャラクター描写も敢えて誇張気味(特に、何かというと歌いだすつくしの父と玉の輿を夢見る母)で、随所に原作への敬意が感じられますが、掘り下げた人間描写に定評のある鈴木裕美さん演出は、キャラクターたちが思いを戦わせ、化学変化を起こしてゆく諸シーンで演劇的な見ごたえをプラス。とりわけ後半、一つの試練を乗り越えたつくしと道明寺が互いに、急速に恋に落ちてゆくシーンは、徐々に加速してゆく本間昭光さんの音楽に彩られ、劇場全体にときめきと甘酸っぱさが充満。この臨場感、この「ドキドキ」はライブである舞台ならでは、と言えるでしょう。
『花より男子The Musical』(C)神尾葉子・リーフプロダクション/集英社 > (C)『花より男子 The Musical』製作委員会2015

『花より男子The Musical』(C)神尾葉子・リーフプロダクション/集英社 > (C)『花より男子 The Musical』製作委員会2015

2次元の役どころをそれぞれ自然に自分のものとしているキャストの貢献度も大きく、つくし役の加藤梨里香さんは演技と「地」の境界線が無い?と思われるほど、まっすぐで快活、そして等身大のつくしを好演。歌声もまっすぐな現役高校生の彼女、ミュージカル界の「ダイヤの原石」として、今後も着実に成長してゆくことを祈らずにはいられません。対する道明寺司役・松下優也さんは本作では最もバランス感覚を求められる難しい役どころを、直球でありながらほどよくユーモアセンスをまぶした演技で見事に体現。台詞では男性的な声で凄んでいるのに、歌声になると俄かに柔らかなファルセットボイスに転じ、「二枚目だけど気が荒く、それでいて純情」という自己矛盾を持て余している道明寺を魅力的に見せています。
『花より男子The Musical』(C)神尾葉子・リーフプロダクション/集英社 > (C)『花より男子 The Musical』製作委員会2015

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つくしにとって最初に気になる存在の花沢類役・白洲迅さんはメランコリックな空気をまとい続け、終盤に一瞬だけ弾ける姿が効果的。同じくF4メンバーの西門総二郎役・真剣佑さんは初舞台とのことですが溌剌として切れのある動き、無邪気な風情が何ともチャーミングで、今後が楽しみ。もう一人のF4、美作あきら役・上山竜治さんはちょっと大人びた「マダム・キラー」の役どころを余裕たっぷりに演じ、つくしと司の恋のキューピッド役を西門と買って出る姿に「いい奴」ぶりがにじみ出ています。また抜群のダンス&歌唱力を「控えめ」に披露しつつ、今回の舞台では最も常人離れした「つくしのパパ」を楽し気に演じる吉野圭吾さんもいい味。高校生たちが恋を歌うナンバーで彼と妻役・生田智子さんもウキウキと踊り、「恋」の喜びの普遍性を示しているのが、本作の隠し味となっています。
『花より男子The Musical』(C)神尾葉子・リーフプロダクション/集英社 > (C)『花より男子 The Musical』製作委員会2015

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筆者の鑑賞時、近くの座席では原作マンガのファンと思しき高校生たちが「で、この舞台って(マンガの)結末までやるのかな?」と幕間時に興味津々で話していましたが、果たして30数巻にわたる原作を今回の舞台はどう、まとめているか。おそらく誰もが納得するだろう、爽やかで、茶目っ気溢れる幕切れが待っています。




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