年収1000万円以上をターゲットに増税!
年収1000万円といえば、会社員にとっては一つのステータスとして語られる場面も多いのではないでしょうか。そんな年収1000万円以上の会社員にとって、決してうれしくはない改正が平成28年から平成29年にかけて行われます。今後、年収1000万円以上をターゲットに給与所得控除が縮小されていくのです。図を見れば分かるように、給与所得控除の上限は年々下がるとともに、頭打ちになる給料の金額も下がっていきます。
給与所得控除の上限が下がると、どうなるの?
給与所得控除といえば、会社員にとっての必要経費のようなもの。自営業者は実際に払った経費の額で所得を計算しています。一方会社員は、大体の必要経費は会社負担になりますし、自己負担だとしても、その額を一人一人考慮するのは非常に困難ですので、上記のような算式で給与所得控除の金額を計算して給与額面から控除した金額を、給与所得の金額にしているのです。(一応、会社員が支払った実額を経費扱いできる特定支出という制度もありますが、非常に使い勝手が悪く、ここではこの制度は考慮していません。)それでは、給与所得控除の上限が下がるとどうなるのでしょうか。高所得者にとって給与額面から引くことができる金額が減少するので、その分毎月天引きされる所得税の金額が上がります。
具体的には、平成28年分については給料やボーナスの額面合計が1,200万円超の会社員、平成29年分については給与やボーナスの額面合計が1,000万円超の方は給与所得控除が頭打ちになりますので、手取り額が減少してしまうのです。さらには、所得税の計算と連動した住民税も増額してしまいます。
給与所得控除は、年末調整のときに会社が計算してくれますので、あまり意識することは少ないかもしれませんが、消費税以外にも密かに増税は行われているのです。
あまり気にせず稼げるだけ稼ぐのが得策
では、給与所得控除が減るから額面を抑えられるかといえば、会社が給料を決めている以上難しいでしょう。また、給与所得控除が頭打ちになってしまったからといって、額面を下げれば手取りが増えるなんてことにはなりません。給与所得の計算上、額面が多いほど手取りが増えることは当然です。所得の捕捉率については、クロヨンという言葉があります。会社員、自営業者、農林水産業者の所得を税務署が把握できる割合が9:6:4であるという意味です。(最近では、税務署の捕捉率のアップや、政治家が課税対象とされる収入割合の低さからトーゴーサンピン(会社員:自営業者:農林水産業者:政治家=10:5:3:1)なんて言われたりもしますが)
このように、増税するなら会社員から行うのが、対象人数の面からも実効性の面からも非常に効果があり、さらに生活に余裕がある高給取りの層が狙えば、不平不満も出にくいといった狙いが見て取れます。さらに、給与所得は節税が難しいという面もあります。事業を行ったことにして赤字と相殺なんてことをやって、摘発されるような事例もありました。
やはり、会社員としては変更を受け入れるしかありませんし、このような静かな増税は気にしすぎるより、稼げるだけ稼いでやろうという気持ちでいたほうがいいのではないでしょうか。
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