親の生前整理やエンディングは悩ましい問題
親が高齢ともなると、親の生前整理やエンディングを考え始める方も多いでしょう。「死んだときの話をするなんて、縁起でもない」と不快がられるかもしれませんが、何らかの形で意思表示をしておいてもらわないと、困るのは子どもの側です。親の老いと死に向き合ったとき、あわてないですむように、これだけはしておきたいことを整理しました。
親のエンディングの前に入院の準備を!
高齢になると入・退院を繰り返してから死に至ることが多いと思われます。筆者の両親も還暦を過ぎたあたりから交互に入・退院を繰り返し、随分と心配させられたものです。ただ、両親とも存命のうちは、どちらかが入院すると、もう一方が入・退院の手続きや病院の支払いなどの雑務をこなしていて、子どもたちは見舞いに行けばいいだけでした。しかし、父が亡くなってからは、母が入院するたびに雑務は筆者がこなしていました。
その経験から、親のエンディングの前に、まずはいつ入院してもいいように準備をしておくことをオススメします。準備とは、入院に必要なものを近くに収納しておいてもらうか、収納場所を聞いておくことです。母が緊急入院して必要なものを取りに実家に行ったとき、収納場所がバラバラで探すのに時間がかかって苦労したからです。
実際には病院ごとに違うと思いますが、必要なものを以下にリストアップしました。入院先がかかりつけの病院でない場合は入院歴や既往症、飲んでいる薬を聞かれます。飲んでいる薬はお薬手帳を見てもらうとして、入院歴と既往症は聞いて一覧表にし、お薬手帳にはさんでおくといいでしょう。
□健康保険証・介護保険証
□お薬手帳
□飲んでいる薬
□現金(入院中の買い物用)
□パジャマ
□下着類
□羽織るもの
□スリッパ
□タオル(大小)
□洗面道具
□コップ
□基礎化粧品
□読書用の本 など
いざ親が亡くなったら、どう対処すべき?
さて、本題の親のエンディングについてです。親も高齢になると「死んだらこうしてほしい」といったリクエスト的なことを子どもたちに言い残していることがあります。いざ親が亡くなったら、まずは兄弟姉妹が集まったときに、親から何か聞いていないかのすり合せをしてください。
もし、遺言書やエンディングノートらしきものを書き残してあることがわかったら、保管場所を兄弟姉妹で共有し、死亡あるいはそれに近い状態になったら取り出し、親の意思を尊重した形で実行しましょう。
存命のうちに遺言書やエンディングノートを用意してもらう
遺言書とエンディングノートは書いていない親が多いでしょうから、存命のうちに書いてもらうよう促しましょう。ただ遺言書は、どのような内容にすれば子どもたちが遺産相続で争族にならないか、親としては測りかねて書けないことも。無理強いはしないようにしましょう。エンディングノートは書いてもらうに越したことはありませんが、高齢になると、老眼や白内障で字が読めない、手が震えて字が書けないこともあります。筆者の母がまさにそうでした。そんな、自力で書けない場合は、兄弟姉妹の中からキーマンを決め、親から聞き取りをして代筆をしましょう。
最低限、親が存命のうちに確認しておくべきことは?
エンディングノート自体を拒否されたら、必要最低限のことを聞き取ってメモしておくだけでもかまいません。要は、親に何かあったときに子どもたちがまごつかなければいいのですから。必要最低限のこととは、下記のようなことです。●重い要介護、認知症で1人または夫婦で暮らすのは難しくなったらどうしたいか
施設に行く、介護保険を利用しながらギリギリまで在宅で過ごしたい、子どもの誰と同居して面倒をみてほしいなど。
●死んだら、葬儀・告別式はどの程度の規模で行ってほしいのか、お墓はどうしたいか、法要はどうしてほしいかなど
●お金に関しての保管場所など
使う頻度に応じて、保管場所を決めておき、それに従って出し入れしてもらうようにしておきましょう。
・すぐ使う、よく使う:おサイフ、日常使いの現金、日常使いの金融機関の通帳と印鑑、キャッシュカード、健康保険証、介護保険証
・たまに使う:その他の金融機関の通帳など
・ほとんど使わないけど大切なもの:年金手帳、保険証券類、不動産の権利証、実印など
●借金があるかどうか
これはとても大事です。金額によっては、相続放棄が必要なこともあるので。
お金に関する保管場所は兄弟姉妹のうち、2人くらいで共有しておくといいですね。そして、高額・不要なものを買わされていないか、兄弟姉妹の誰かが使い込んでいないかなど、不審な使い方をしていないか時折チェックするようにしましょう。
身の周りの生前整理も促してみる
親のエンディングの一環として、家の中、親の身の周りの不用品の処分、いわゆる生前整理もしてもらいましょう。今の高齢者はものがない時代を生きてきたので、なかなかものを捨てられず、家の中は雑然としているはず。そのままにしておくと亡くなった後、子どもたちが遺品整理で苦労することになります。生前整理は、高齢な親にとって体力的・気力的に厳しいので、子どもたちが手を貸すといいでしょう。その際、思い出話とグチには根気よく付き合う覚悟で臨んでください。親子だけで整理するのは難しい場合は、専門業者に依頼してもかまいません。
もし、思い切った生前整理ができない場合は、親の生活動線上から危険な障害物を取り除くことだけでも、早急にしてください。高齢者には、ちょっとした障害物が大けがの元になり、それが原因で要介護になるかもしれないからです。生活動線とは、玄関アプローチ、玄関、キッチン、居間、寝室、トイレ、お風呂場と洗面所、洗濯物干し場など、親が生活する上で必ず利用する場所とその経路です。
親が自力で生活できなくなったり、亡くなったりの事態は、唐突にやってきます。そのとき、あわてないですむよう、エンディングの準備と生前整理は早めにやっておきたいものです。
※All About生命保険ガイド・小川千尋さんの記事を編集部が最新情報に加筆
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