輸入車/注目の輸入車試乗レポート

自動車評論家が選んだ2015年の輸入車BEST10

比較的、新型車の登場が少なかった2015年。全般的に見渡すと高級&高額車が目立った印象でした。ガイドも選考委員をつとめる、日本カー・オブ・ザ・イヤーの輸入車部門の結果を振り返りつつ、2016年前半の注目車種も紹介します。

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド

2016年のクルマ選びに! 注目の輸入車を徹底解説

BMW2シリーズアクティブツアラー

ブランド初のFFモデルとなる、背の高いプレミアムコンパクトモデルがBMW 2シリーズ アクティブツアラー。新開発サスペンションや低重心化など、走りにも注力されている。価格は342万~504万円

BMW2シリーズグランツアラー

アクティブツアラーを一回り大きくしたFFの3列7人乗りのMPV、BMW 2シリーズグランツアラー。130mmスライドする2列目シート、フロア下に収納される3列目など使い勝手も高めている。価格は368万~462万円


2015-2016日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)の輸入車部門は、ジャガーXEシリーズを大接戦のすえにくだし、BMW2シリーズアクティブツアラー&グランツアラーが授賞した。

正統派のDセグサルーンを目指したXEと、BMW初のFFモデルでユーザー層の幅を拡げた2シリーズ。当初からインポート賞で本命視されていた2台に、テスラS85Dやフィアット500Xの2台がどう絡んでくるのか。いずれのモデルにも“飛び抜けた個性やコンセプト”が見当たらなかっただけに、予断を許さない展開であったが、ふたを開けてみれば、BMWの新チャレンジに多くの選考委員が軍配をあげたというわけだった。

ジャガーXE

ジャガーが久々にDセグメントに送り出した、プレミアムなコンパクトサルーン。FRを採用、ディーゼルターボ搭載グレードもラインナップする。価格は477万~769万円


ボクは、XEに6点、2シリーズに4点、500Xに2点を投じている。後二者同士はともかく、XEと他2台とはまったくカテゴリーが異なるから、単純な比較とはならない。

ブランド再生を目指してきたジャガーの、ひとつの到達点に至ったXEの方が完成度は高いと思った。2シリーズの挑戦は認めたいし、高い速度域ではさすがにBMWらしさを発揮するものの、肝心の街中での走りがFRシリーズほどこなれていない。進化を期待したいと思う。テスラS85Dの加速は強力で、それは確かに人を魅了する“新しさ”だけれども、クルマとしての完成度やCPは評価できず、配点するにはいたらなかった。

ちなみに、“もうひとつのカーオブザイヤー”であるRJCカー・オブ・ザ・イヤーにおいても、BMWジャパンはミニクラブマンで輸入車賞をゲットしている。言ってみれば兄弟車(そういえば、フィアット500Xとジープレネゲードも同じような関係)による快挙である。

テスラ モデルS 85D

シリコンバレー発のEVブランドが送り出す、大型ハッチバックサルーンのモデルS。2015年に4WDモデルが登場。バッテリーを床下に、前軸と後軸の間にモーターを配置する。価格は988.6万~1369万円

フィアット500X

500シリーズ初のコンパクトなクロスオーバーSUV、フィアット500X。スキッドプレートなどでSUVテイストを演出する。1.4Lターボを搭載、価格は286.2万~334.8万円


COTYで語ればそんな1年の締めくくりになるわけだが、2015年の輸入車界には、かつてない激震が走った。いわゆる、「VWディーゼルゲート」事件だ。ここではあえてその詳細に触れないけれども、一連の事件を通じてブランドが著しく傷き、その回復にはかなりの時間を要するであろうことは想像に難くない。

VWブランドのクルマ造りこそ“世界一”である、とこの十年来、高く評価してきたし、人とクルマ、つまりは、運転する者と応える物とを繋ぐ動的なクオリティにおいて、ゴルフやポロは今でも世界一レベルにあると思っている。

そんなVWが、まさかこれほどつまらぬ不正を犯してしまうとは……。憤りを覚えるというよりもむしろ、ただただ悲しい。この事件を機に、有能な才能が多数、VWを去ってしまったこともまた、残念でならない。

最新の情報ではトップやマネージメントの関与を否定している。とはいえ、マネージされていた人たち(=中間管理職以下であるとVWは発表した)による不正は、そのままトップマネージメントの責任だ。強力なトップダウン環境がそうさせたとも言える。まだまだ多くの試練が待ち受けているだろうが、今にも増していいクルマが生まれてくることだけを期待したい。

ランボルギーニアヴェンタドールLP750-4SV

6.5LのV12エンジンを積む、フラッグシップのアヴェンタドールのハイパフォーマンスモデルがランボルギーニ アヴェンタドールLP750-4SV。世界600台限定となる


VW事件があったから、というわけではないけれども、2015年の輸入車を振り返ると、全般的に高級&高額車が目立った年だった。なかでも、印象に残っているベスト10を挙げておこう。

■10位 フィアット500X
■9位 BMW2シリーズグランツアラー
■8位 M・ベンツS300h
■7位 ジープレネゲード
■6位 ジャガーXEシリーズ
■5位 レンジローバースポーツSVR
■4位 シボレーコルベットZ06
■3位 BMW7シリーズ
■2位 フェラーリ488シリーズ
■1位 
ランボルギーニアヴェンタドールLP750-4SV

フェラーリ488スパイダー

V8ミッドシップのフェラーリ488GTB&スパイダー。2世代ごとにフルモデルチェンジする慣例に従い、458の大幅な進化モデルとなる。価格はGTBが3070万円、スパイダーが3450万円

BMW7シリーズ

フラッグシップサルーンのBMW 7シリーズ。ボディ構造にCFRPを取り入れたカーボ・コアを導入。ステレオカメラを用いたサスペンション調整機能をはじめ、最新技術を数多く装備する。価格は1217万~1701万円


2016年、当代ベンツの究極がEクラスに

ベントレーベンテイガ

ラグジュアリーブランド、ベントレー初のSUVモデルがベンテイガ。6LのW12ターボを搭載、ボディサイズは全長5141mm×全幅1998mm×全高1742mm。0-100km/h加速は4.1秒とされる


2016年もしばらくは、超高級車の話題がクルマ好きを驚かせることだろう。3月のジュネーブショーには、新型ブガッティ(ヴェイロン後継)や、ランボルギーニの限定車、パガーニやケーニグセグのニューモデルも現れる。

ベントレーのSUV、ベンテイガもいよいよ上陸だ。高級ブランドのSUVがこれから続々現れるが、中国市場の行く末が不透明な今、マセラティやアルファロメオなど、新型SUVの販売をアテにしていたブランドは、戦略の見直しを迫られるかもしれない。

リアリティあるモデルでは、メルセデス・ベンツの新型Eクラスに注目が集まるだろう。Cクラス、Sクラスときて、当代ベンツの究極がEクラスになる。大方の予想どおり、乗用車の新たなスタンダードへ到達しているのか、どうか。

個人的には、BMW M2が楽しみだ。貴重なコンパクト後輪駆動をMがどのように仕上げてくるのか。古典的な運転の楽しみをストレートに表現するモデルであることを期待したい。
BMW M2

コンパクトクーペの2シリーズのハイパフォーマンスモデルとなるBMW M2。370psの直6ターボを搭載、6MTと7DCTが用意される


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