官僚制的組織管理とは
業界問題に発展したマンション基礎工事のデータ改ざん
この「業界風土的な問題」について考えるとき、あらためて見直さなければならないのが「組織の構造」です。今回で言うと、業界に古くから根付いた「発注業者」、「元請け業者」、「下請け業者」がその要素にあたるでしょう。なにか問題が起こったとき、マネジメント観点でいうと、これらがひとつの組織として動いた際の流れを分析することが重要です。
さて、建設業界のように高度に専門化された職務が多くある場合、組織は「権限」や「責任」をベースにしたピラミッドになりがちです。つまり官僚的な上下関係が生まれやすくなり、これを「官僚制的組織」と呼びます。
そもそも「官僚制的組織」とは何か。組織は大きくなるにつれて合理性を求めるようになり、次第に官僚的な性格を色濃くしてきます。そのはじまりにおいては、業務が効率化したり、安定化したりするメリット(「規則化、手続き化による業務遂行の安定化」「専門化、分業化による効率化」「階層構造の形成による責任の明確化」「文書化管理化による記録性、証拠性の確立」など)が多々ありますが、今回のようにデメリットも徐々に出てきます。過度に「官僚制的組織」が進行すると、弊害を生むことになりかねず注意が必要です。その弊害の中で最も大きなものが、「官僚制の逆機能」と言わる現象です。これは一言で言うなら、効率性、安定性を重視するあまりの組織の硬直化そのものなのですが、代表的な例として次に挙げる6つのような弊害が現れてきます。
1. 規則やルールに縛られ、行動の標準化が起こり個々の意思決定がパターン化する
2. 処罰を恐れ、規則通りの行動以外を避ける
3. 規則の順守が組織の目的と化し、本来の目的が見失われる
4. 行き過ぎた規則通りの行動が、顧客の存在を忘却させる
5. 効率化を目的とした過度な専門化、分業化により、個々の成長が阻害される
6. 規則を順守することが優先され、組織の革新が阻害される
これらの弊害は、時として「官僚制的組織」の管理の中で見過ごされ、社会的に大きな問題を生む元凶にもなりえるのです。